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第20話(22)

Auteur: 北川とも
last update Date de publication: 2026-03-18 14:00:52

 和彦に姿を見られたくないというより、和彦の中でまだ覚悟が決まっていないことを見抜いているのだろう。相手の老獪さと狡猾さを思えば、そうであっても不思議ではない。

 結局相手は、一言も発することなく部屋を出て行った。ドアが閉まる音を聞いて数分ほど待ってから、和彦はやっと目隠しを取る。慎重に体を起こし、乱れたベッドの様子を目の当たりにして密かに恥じ入りながら、バスローブを拾い上げて着込む。

 目隠しをしていた間に世界が一変するわけもなく、なのに和彦自身は、自分を取り巻く世界がなんらかの変化を起こしたように感じていた。〈長嶺の守り神〉と体を繋ぐということは、こういう感覚の積み重ねなのかもしれない。

 明日も仕事なので、ここで寝入ってしまうわけにもいかず、バスルームに向かう。激しさとは無縁だが、時間をかけての交わりは、驚くほど和彦の体力を消耗する。しかし、歩けないほどではない。とにかく一刻も早く、休みたかった。

 じっくりと体を温めたいのを我慢して、バスルームで簡単に体を洗うと、手早くスーツを身につける。髪は手櫛で整えただけで、鏡を覗く余裕すらなか
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    **** ベンチに横になった和彦は、ゆっくりと息を吐き出しながらバーベルを挙げる。上半身の筋肉が引き締まり、重さが刺激となって行き渡る。次に、今度は息を吸い込みながら、バーベルを下ろしていく。 そんなに重いバーベルを使っているわけではないが、一連の動作を時間をかけて数回繰り返していくと、全身から汗が噴き出してきて、Tシャツをぐっしょりと濡らす。 集中力のすべてを、筋肉の動きへと向けていた和彦だが、ふとした拍子に、足元付近に誰かが立っていることに気づく。トレーナーが様子を見てくれているのだろうかと思ったが、そうであれば、遠慮なく声をかけてくるはずだと思い直す。 一度気になってしまうと無視するのは難しく、大きく息を吐き出してから和彦は、ラックにバーベルをかける。すぐには上体が起こせず、呼吸を整えていると、親しげに声をかけられた。「手を貸しましょうか、先生」 その一声で、誰かわかった。和彦は口元を緩めると、遠慮なく片手を伸ばす。すかさず手を掴まれ、体を引っ張り起こされた。差し出されたタオルを受け取り、ひとまず滴る汗を拭いてから和彦は口を開く。「タイミングがいいな。今日は、連絡をしなかったのに」「先生と俺の仲ですからね。なんでもお見通しです」 中嶋にニヤリと笑いかけられ、和彦は微妙な表情で返す。ただの友人同士であれば冗談として成り立つのだが、残念ながら和彦と中嶋の仲は、そうではない。「先生、ここは笑ってくれないと。冗談ですよ」「わかってはいるが、反応に困る冗談を言わないでくれ……」 話しながら、休憩用のスペースへと移動する。イスに腰掛けた和彦は、汗で濡れた髪先を拭いながら、隣に座った中嶋の様子をうかがう。ジムを訪れ、すぐに和彦のもとにやってきたのだろう。まったく汗をかいていない。 予定が狂ったと、思わず心の中でぼやく。 こうして中嶋に声をかけられると、じゃあこれでと、トレーニングに戻るわけにもいかない。和彦はため息交じりに問いかけた。「――何か目的があって、ジムにやってきたのか?」 和彦の声から、警戒

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     和彦を促すように、背後から大きく内奥を突き上げられ、奥深くを丹念に掻き回される。喉を鳴らした和彦は、おずおずと片手を自分の下肢へと伸ばす。両足の間で震える和彦の欲望は、もう愛撫を必要としないほど、熱く硬くなり、反り返って濡れそぼっている。 本当は三田村に触れてもらいたいと思いながら、ゆっくりと上下に扱く。同時に、内奥で蠢く三田村の欲望をきつく締め付けていた。 三田村が深く息を吐き出し、和彦の腰から背へとてのひらを這わせてくる。「別荘で過ごして以来、よく夢を見るんだ。中嶋を犯している先生を、こうして後ろから犯している光景を。夢なのに、ひどく興奮して、感じるんだ」 三田村の欲望が、内奥から引き抜かれていく。発情しきった襞と粘膜を強く擦り上げられ、和彦は感極まった声を上げて反応してしまう。自ら愛撫する必要もなく絶頂を迎え、シーツに向けて精を飛び散らせていた。その瞬間を待っていたように、再び三田村の欲望が内奥深くに押し入り、重々しく突き上げられる。「んあぁっ――」 衝撃に、ふっと意識が遠のきかけるが、三田村に腰を揺すられて我に返る。和彦は無意識のうちに、腰に回された三田村の腕に、爪を食い込ませていた。痛みすら心地いいのか、内奥でますます三田村の欲望が膨らむ。「あっ、う……。い、い――。三田村、気持ちいぃっ……」「〈男〉なのに、〈オンナ〉でもある先生の姿が、目に焼きついている。どうしようもなく淫らでふしだらで、魅力的だった。自惚れるなと言われるかもしれないが、俺は、先生の奔放さと、相性がいい。……いや、どんな先生でも、たまらなく愛しい」 惑乱した意識のせいで、三田村の言葉が耳に入りはするものの、頭が意味を理解しようとしない。だが、必死に言葉を紡いでくれているのだということは、わかる。なんといっても、体を繋ぎ合っているのだ。「もう、先生のいない世界は、考えられない。だから、俺の前からいなくならないでくれ。例え俺を遠ざける瞬間が訪れたとしても。この世界の怖い男たちに囚われたままでいてくれ。そうすれば、俺はいつでも、先生の存在を感じていられる。それだけでも、十分幸せだ」

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  • 血と束縛と   第28話(10)

    「どういうわけだか、佐伯家はぼくを必要としているらしい。それで、ある知人を使って連絡を取ってきた。知らない顔をしたいところだが、知人に迷惑をかけられないし、そろそろこちらの意思を伝えておこうと思って、会うことにした。……兄と」「『騒ぎ』とは、そういうことでしたか」「家の問題については、ぼく自身が対応するしかないしな。下手に動くと、ぼくの周囲の人間たちに迷惑をかけるどころか、致命傷を与えかねない」「大事なんですね。――先生の周囲の〈男たち〉が」 恥ずかしいことを言うなと怒鳴ろうとした和彦だが、すぐに思い直し、結局口を突いて出たのは、ため息交じりの言葉だった。「……思惑があるにせよ、大事にしてもらっているからな」「それがヤクザの手口なのに、先生は甘い」「自分でもそう思う」 そんな会話を交わしながら、次々に段ボールを開けて商品を確認していたが、ふと秦が、あることを思い出したように腕時計に視線を落とす。つられて和彦も自分の腕時計で時間を確認していた。「そろそろ昼だな。確か隣のビルに、イタリアンの店が入っていただろう。混む前に食べに行くか?」 和彦の提案に、秦は大仰に残念そうな顔をする。「魅力的なお誘いですが、先生とはこれでお別れです」「なんだ。これから用があるのか?」「わたしではなく、先生が。もう一階に、迎えの方が到着しているはずですよ」「そんなこと、今初めて聞いたんだが。迎えも何も、護衛の人間にはビルの外で待ってもらっていて――」 和彦が戸惑っている間に、ソファに置いたジャケットを秦が取り上げる。促されるまま袖を通すと、肩を抱かれて店の外へと送り出される。「それじゃあ、お気をつけて」 にこやかな表情で手を振る秦の勢いに圧されるように、和彦は首を傾げつつもエレベーターに乗り込み、一階へと降りる。 不可解な秦の態度の理由は、扉が開いた瞬間に氷解した。「三田村っ」 驚いた和彦が声を上げると、エレベーターの前に立っていた三田村がわずかに唇を緩める。しかし次の瞬間には表情を引き締め、鋭

  • 血と束縛と   第16話(41)

     デスクを並べてシーツを敷いただけの簡易ベッドの上に、腹から血を流した男が横たえられていた。顔は青ざめ、呼吸は速いものの、意識は取り戻している。 和彦は指示を出しながら手術着を着込み、洗面器に手を突っ込んで消毒する。その間に、頼んでおいた医療用品などが運び込まれてきた。 生理食塩水で血を洗い落とし、傷口をよく検分する。「ひどいな……」 顔をしかめた和彦は、思わず洩らす。「――大怪我なんですか?」 部屋に残っている組員に声をかけられ、顔を上げる。思わず洩らした一言で不安を煽ってしまったらしい

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  • 血と束縛と   第16話(27)

    **** 雪を見に行かないかと賢吾から言われたとき、和彦がまっさきに思ったのは、これは機嫌取りなのだろうか、ということだった。 朝食のパンを食べ終えたところだった和彦は、指先を軽く払ってから、カップを両手で包み込む。ホットミルクを一口飲んで、向かいのイスに座る賢吾をジロリと見ると、口元を緩めていた。「――……雪?」「これから新年の挨拶も兼ねて、人に会いに行くんだ。ちょっと距離があるんだが、今はたっぷり雪が積もって、静かでいいところだ。一泊旅行の行き先として、最適

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