遥真は玲奈のそばの椅子に腰を下ろすと、答える代わりに問い返した。「どうして自分の体をそんなふうに軽く扱うんだ」「別に軽く扱ってるつもりないよ」彼女は納得いかないという顔で言った。事故の前、周りに監視カメラがないのは確認していた。「ただ、会いたくて……車が来てるのに気づかなかっただけで事故になったの。信じないなら紗優に聞いてもいいよ」遥真は冷たい視線で彼女を見つめる。玲奈は内心落ち着かないのに、顔だけは平静を装う。「本当だよ」「俺は嘘が嫌いだ」遥真の声は冷えきっていて、こんなに厳しい態度で彼女に向き合うのは初めてだった。「騙されるのもな」「嘘なんてついてない」玲奈は俯きながら、遥真が揺さぶりをかけているだけだと確信していた。「あの時に電話したら、わざとだって思われるかもしれないのは分かってる。でも本当に、あなたを騙したりしてない」その瞬間、遥真の纏う空気が一気に沈み込んだ。こんな彼を見るのは、玲奈にとって初めてだった。彼女は当時の細部をもう一度思い返し、監視カメラがないことを確かめたうえで、なおも言い募る。「……信じてくれないの?」遥真は感情のない視線を恭介に向けた。恭介はすぐに、例の映像が入ったスマホを取り出し、再生して差し出す。「これ、何?」玲奈は不安げに尋ねる。遥真は冷たい目でわずかに視線を上げ、感情のこもらない一言を落とした。「証拠だ」玲奈の手がぴたりと止まる。胸が激しくざわめき、息を詰めながらスマホへ視線を落とす。次々と映し出される映像が目に飛び込み、自分では完璧だと思っていた計画が一瞬で崩れていった。その動画は複数のドライブレコーダーの映像をつなぎ合わせたもので、あらゆる角度からはっきりと記録されていた。玲奈の手足は冷えきり、傷の痛みよりも恐怖と動揺が勝る。「遥真、私……」もはや何を言っても通じない。どんな言葉も言い訳にしかならない。「何を考えてたか、分かるよ」遥真の目は、まるで他人を見るようだった。「事故に遭うのと、子どもと遊ぶのと、大抵の人間は前者を選ぶ」「違う……」玲奈の頭はぐちゃぐちゃになった。遥真は唇をきゅっと結び、整った顔には冷たさしかない。周囲の空気は凍りついたようだ。そんな彼を見て、恭介の瞳の奥にかすかな不安が浮かぶ。彼がまた、柚香と出会う前の状態に戻ってしまう
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