「変わらないよ」遥真は答えた。「違法じゃないことが前提だけど」玲奈はもう彼の前で「か弱いふり」をするつもりはなかった。何があっても見抜かれると分かっているからだ。「私、桐谷グループの株が欲しいの。真帆より多く」遥真は視線を上げた。病室の空気が一気に張り詰める。その頃。柚香のほうでは。陽翔が眠ったあとも、彼女はイラストの作業を続けていた。銀行口座の残高が少しずつ増えていくのを見て、気持ちがだいぶ落ち着く。午前一時近く、柚香のスマホが鳴った。玲奈と真帆、そして怜人と一緒に作ったグループチャット「横入りNGグループ」からボイスメッセージが届いた。真帆「昨日、玲奈が入院したって聞いたけど、本当?」真帆「あ、違う。一昨日か。もう日付変わってるし」怜人「それは知ってる。本当だよ」そのメッセージのあと、怜人は十数秒のボイスメッセージを送ってきた。玲奈がどうやって事故に遭ったのか、そして遥真が陽翔と柚香を見捨てなかったことまで、細かく話した。真帆「ざまあみろ」真帆「あと数日くらい、さすがにもう騒ぎ起こさないでしょ」真帆「今月12日で手続きは完了だよね。13日に離婚届受理証明書もらえるでしょ?」このボイスメッセージは、柚香宛てだ。柚香がスマホを開いたときに目に入ったのが、このメッセージだった。カレンダーを確認してから、短く打ち込む。【たぶんそう】離婚を申請してから、もう二十日あまり。彼のいない生活に慣れられるか不安だったけれど、今は多少の違和感こそあれ、大半はもう受け入れられていた。自分と陽翔の面倒は見られる。母の医療費も払える。もう、彼に頼らなくてもいい。「あ、そうだ。言い忘れてた。昨日バーに行ったら、あんたのお父さん見かけたの。水曜に会いに来いって。大事な話があるって言ってた。しかもお母さんのことに関係あるって」真帆からボイスメッセージが届いた。柚香は少し黙り込む。「たぶんロクでもないこと企んでると思って、すぐには言わなかったんだけど」真帆は続けた。柚香はやはり文字で返信する。【放っておいていい】父が母について何か知っている可能性はある。しかし一度騙された以上、二度と同じ手には乗らない。会いに来いと言うのも、酒の席に付き合わせるためか、それとももっと嫌なことをさせるつもりか分からない。
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