院長がさくらの情報を透也に送った時、透也はちょうど飛行機に搭乗し、携帯の電源を切ったところだった。透也が再び携帯を開いてこのメッセージを見た時には、既に二十時間近くが経っていた。【橘社長、水瀬さくら様がこちらにいらっしゃいます。彼女は今回の研討会のスタッフをしております】送信時刻は彼が搭乗した瞬間だった。透也はこのメッセージを見た時の自分の気持ちをどう形容すればいいのか、わからなかった。自分の目が信じられなかった。「次のM国行きの航空券はいつだ。乗り継ぎでもいい。最速で!最速でM国に戻りたい」アシスタントは透也のこの命令を聞いた時、自分の耳が信じられなかった。「橘社長……今、何とおっしゃいました?まだM国に行かれるんですか?もし……お加減が悪いようでしたら、すぐに医師の診察を手配いたしますが」透也は受信したメッセージをアシスタントに転送し、自分には何も問題ないと伝えた。もう少し、あと少しで、彼とさくらはまたすれ違うところだった。透也の心臓は激しく打った。周囲のアナウンスの声も聞き取れず、一瞬めまいと耳鳴りさえした。アシスタントが彼を支え、ようやく徐々に意識がはっきりした。再びM国に向かう便は十時間後だった。彼は簡単に空港周辺のホテルで身支度を整えた後に飛行機に乗った。彼を再度待っているのは十数時間の旅程だ。だが今の透也の気持ちは前回の全く違っていた。彼はただ早くさくらに会いたいと願うばかりだったが、会えたら自分はどう彼女に話せばいいのか、どうすれば彼女を説得して東都に戻らせられるのか、あるいは自分が彼女と一緒にM国に残るべきなのか、考え始めていた。ここまで考えて、透也の不安は大分和らいだ。全ては会えるのを待つだけだ。……透也が辿り着いてホテルに到着した時は夕方だったが、今日は雪が降っておらず、天気が良かった。彼は具体的な会議の日程を見た。明日が正式な会議の初日だ。考えに考えた末、彼はホテルのフロントで尋ねた。「すみません、今回の研討会のスタッフに、東国国籍の女性はいますか。彼女は……私の妻です。どの部屋に泊まっているか知りたいんです」ホテルのフロントは透也の言葉を聞いて、一瞬驚いた表情を見せ、少し疑わしげに目の前のこの奇妙な東国人男性を見た。「あなたが……彼女はあなたの奥様だと。
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