雅臣の困り顔を見て、澪たちは察した。彼自身も上層部も、ただ思いつきで言っているだけで、具体的なことなど何も考えていないのだと。「では折衷案として、篠原グループを拠点にするというのはどうだ」洵の低い声は、提案というより決定事項のように響いた。他に良い案もない雅臣は洵の意見をあっさりと採用した。それからの一ヶ月、澪は毎日篠原グループへ通うことになった。社員たちは千雪の姿を見ても驚かなかった。彼女は普段からよく出入りしていたからだ。千雪が妻であれ愛人であれ、皆は暗黙の了解として、彼女と洵をカップル扱いしていた。だから最初に澪が現れた時、皆は唖然とした。澪は度々、社員たちが陰でひそひそと、自分と千雪のどちらが「本物の愛人」なのかと噂しているのを耳にした。議論の末、彼らは一つの結論に達していた。誰が妻であろうと、最終的に洵は千雪を選ぶだろう。たとえ澪が妻だとしても、夫に捨てられ、愛人に寝取られる運命にあるのだと。それを聞くたび、澪は苦笑した。実際、彼女と洵はもうすぐ離婚するし、千雪は念願の名分を手に入れる。その通りになるだろう。最初、澪は千雪との共同作業が難航すると思っていた。だが意外にも千雪は協力的で、二人がそれぞれのデザインを提出した後、上層部が澪のデザインを選び、千雪にサポートを回るよう指示しても、妨害することなく建設的な意見を出してくれた。もちろん、澪は千雪を完全に信用したわけではないが、邪魔が入らない分、作業はスムーズに進んだ。最終的なデザインが決定し、制作期間は残り一ヶ月を切った。澪がデザインしたのは、大きな玉の印章だ。実用品としても置物としても使える。最近、国境地帯で透明度が高く鮮やかな緑が漂う最高級の玉の新しい鉱脈が発見されていた。澪がこの新種の玉を素材に提案すると、千雪も賛同し、自ら輸送ルートの手配を買って出た。プロジェクトは順調に進んでいた。運送会社のトラックが原石の集荷に出発する予定日までは。「……何ですって?」篠原グループの会議室で、スマホを握りしめた澪の顔色が変わった。隣には千雪と、プロジェクトメンバー数人がいる。電話を切ると、澪の視線は真っ先に千雪に向けられた。だが千雪は、大きくて無垢な目をパチパチさせながら、不思議そうな顔で澪を見返した。「
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