療養生活三日目──今日は、午前のうちに精神科医が来るとのことできるイルゼは夜明け前に目を覚ました。 この生活になって、不思議と目覚めが良い。養鶏業を営む上で夜明けとともに起きるが、イルゼは朝が弱かった。 否、午前中が気怠くて仕方なかった。具体的に言うと、月の障りの期間を除いた殆どが寝起きが悪い。とはいえ、眠いだけで他に何か支障があるわけではなかった。 『突然食欲が増したり、眠くもないのに欠伸が出たり他にも色々とね……命を宿す機能がある時点で女の子の身体ってとても神秘的なものよ』 そんなことを初潮が来た頃に義母から聞いていたので、これを特別不安に思うことは無かった。しかし、ああも眠かったのに、たった三日で爽快だ。 もしかしたら養鶏業を営む上で精神的な負荷を抱えていたのではと思えてしまう。確かに屠殺は自分の担当で、いつも心が痛んでいたが……。 伸びをしたイルゼは、天窓に歩み寄り静かにカーテンを開く。もうすぐ空が白み始めるのだろう。夜の色──深いライラックの名残を残した紫色の世界には薄ぼけて丘陵一面に縦縞模様を作る葡萄棚が見えた。 そうして幾許か、次第に空が白み始めて、遠くに穏やかに流れるハンデル川が鮮明に見え始める。 ボロ屋敷ではこんな光景は望めない。同じ領地だというのに、この城から望む夜明けは本当に美しい。これが、とてつもなく贅沢に思えてしまい。イルゼは感嘆とした息を一つつく。 しかし、見とれている場合でない。早急に着換えなくては……。 イルゼはクローゼットの前に歩み寄り夜着を脱ぎ始めた。 イルゼが早起きすることが分かった初日から、メラニーは日の出とともに朝食を持ってくるのだ。別に食事なんて遅くたって構わないが……と、言えば「その方が早く次の仕事に取りかかれるし、何よりイルゼともっと話がしてみたいから!」と爛々と目を輝かせるものだからイルゼは困惑した。 こんな自分と話がしたいなど、物好き
Last Updated : 2025-12-03 Read more