All Chapters of 地味なコア一個しか宿らないと思ったらチートみたいでした: Chapter 171 - Chapter 180

187 Chapters

第169話・交代

 そう言う、ことだったのか。 コアとは何か、美丘羽根と言う人は分かりかけていた。 だけど、答えに辿り着く前に緋色のコアに肉体を奪われ、コアの中に封じられ、手足の代わりとなるコンピュータと接続されて、コアの研究を続けさせられた。『そう。恐らくはコア自身も、これから自分が何をすればいいか分からなかったでしょう。ただ、自分が人間と入れ替われる、そして人間の姿と異能を持った新人類として生まれ変われると知り、仲間を増やすべく私が設計したコアコンピュータの一部として接続した。私の頭脳が使えると思ったのね。コアと人間の総交代を早めるために』 飲み込む唾すら出なかった。 口の中がカラカラに乾いている。 新人類との交代とか、難しいことは正直分からない。 だけど、コアが人間と入れ替わろうとしていることは分かった。 本当は、人類の誰も気づかないくらいにゆっくり入れ替わっていくはずだったコアは、「緋色」と言うコアによって加速した。 美丘羽根と言う天才を餌に。 そして。「さっき、あちこち、滅茶苦茶って、言いましたよね」 僕は震える声で言った。「上で……何か起きているんですか」『私と緋色は寄生関係で繋がっている。主従が入れ替わったとしてもね。だから分かる。緋色は今、学園中の人間をコア結晶に変えた』 ひゅっ。 変な息が漏れた。「学園中の……人間を……? なんで……」『貴方が残してきた友達が、緋色が黙ってろと言った事……学園長がコア監視員を創り出す創造主で、それに敵対する創造主がコア監視員の目を反らすコア生物を創って派遣したことを、学園中にバラしたのよ』「その程度……その程度のことで……?」 この地下研究施設の存在に比べれば、些細なことで、しかも真実
last updateLast Updated : 2025-11-30
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第170話・救世主

「おやー?」 唐突な声に、僕は我に返った。「お呼ばれしましたー、私ー」「お呼ばれって……学園長……緋色の……」「ダメですよー。丸岡さんー。今の緋色はそのコアコンピュータの頭脳。三つ目の肉体に宿った創造主……いえ救世主を、そんな風に呼んじゃいけませんー」「本人にまだ言うなとは言われてないからね。で? どうせあの人に呼ばれたんだろう? 何の用かも教えられないのかい?」「コア監視員全員に指令ですー」 ココはにっこり笑った。「いよいよ救世主が真の姿を取る時が来たようですー」『正気なのね、緋色』「緋色はあなたのお名前ですよー?」 ココはそう言うと、パッと姿を消した。「ココは……一体どうして」『言ってたでしょう。救世主が真の姿になると』「……学園長……!」『彼女は一つの身体に一つの意識しかないから誰も愚かな行動しか取れないと言っていた』 何を……? だけど、羽根さんは言葉を続けた。『それは私の学説。コアに意識や学習能力があるなら、人間の第二第三の頭脳として、相談役として、より正答を見つけ出せると思った。緋色はそこからある一つの考えを生み出した。一つの意識しかないから間違った答えを導き出すなら、自分を主とした総合意識体となれば間違いは限りなくゼロに近付くと』「えー……と、つまり……?」『コア監視員の意識を自分の内に取り込み、精神集合体の女王になろうとしている』 コアを有する学園の人間のコアを、そして精神を監視してきたコア生物。『私が生み出したコア生物は、最悪に歪んだ形で完成した。コア監視
last updateLast Updated : 2025-11-30
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第171話・旧人類の終わり?

「くっ……くくっく……」「仁さん?」『丸岡君』「はは……あははは……はははっ……」 笑い。 僕は意図せず笑っていた。「人類の絶滅って割には、静かだね……くくっ」「仁さん? 仁さん! しっかり!」「大丈夫だよナナ、僕は正気だ。現状もしっかり把握している。その上で笑っている」 口元を緩ませて、僕はナナに頷きかけた。「だってさ、笑うしかないだろ。人類滅亡の危機に、鍵を持たされたのは、ただの高校一年生。コアの色は特殊かも知れないけど、能力も特殊かも知れないけど、コアで攻撃されなきゃ何にもできないチートで外れなんだよ? それが、地球を救う鍵だなんて、さ」「仁さん……」「だけど、人類が滅亡するのは許せない。例えいつかは消え去る運命だとしても、一矢報いたい」『丸岡君』「手があるんですね? 美丘羽根さん。あなたがこの研究所で、緋色の目から隠しながら完成させた、ナナの中に」『そう、そして貴方の中に』 次の瞬間、一度にあちこちの機械が音を立て始めた。『さすがの緋色も、あれだけの数のコア監視員を支配下に置くには油断はできない。だから私との繋がりを一度オフにした。今なら、貴方をこの研究所から出せる』「羽根さん!」『行って、丸岡君。コア生物、いいえ、ナナと一緒に。鍵はそのコアの中』 鍵の使い方も分からない。そもそもどんなものなのかさえ。どうあの学園長に効くのかすら。 だけど。「じゃあ」 僕は、羽根さんを見上げた。「行ってきます、羽根さん」『もし兄に会ったなら、羽根がとてもとても後悔していたと、そう伝えて』 僕は振り返らず部屋を出て行く。 曲がり角の先に、分岐路の先に、風船のような元人間のコア生物が立ち、行くべき道を指し示して頭を下げる。 どうなるかは分からない。 でも、動かないよりはずっといい。 その為の思考だとコ
last updateLast Updated : 2025-11-30
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第172話・最終戦争の始まり

 元人間のコア生物たちに見送られて、僕はエレベーターに乗り込む。 ハルマゲドン、或いはラグナロク。人類はコアに滅ぼされようとしている。 最後の鍵は弱くて情けないこの僕。 羽根さんの言うことが確かなら、ナナ……羽根さんがこの事態の為に創り出したコア色のないコア生物と、僕の中に、鍵があるという。 人類を救うか、見捨てるの選択権は僕にあるという。 そう言えば。 コアに意思があるなら、当然僕のこの透明コアにも意思があるはずだ。 僕のコアはどう思っているのか。「ナナ」「はい?」「君は僕のコアに同化しているんだよね。その時、コア本来の意識は何を思っていたの?」「その……」 ナナは一瞬ためらう素振りを見せたけど、事がここまで進んでは黙っていても仕方がないと思ったのだろう。口を開いた。「仁さんのコアには、緋色のようなはっきりした自己主張はありませんでした」「自己主張が、ない?」「はい。大抵のコアが、この人間と入れ替わりたいという願いを持っています。だけど、仁さんのコアは、そんなことを考えていませんでした。敢えて言うなら……」 ナナは少し考えて、答える。「染まるか、染めるか」「染まるか、染める?」 染まる、は何となく分かる。他の人のコアに染まって同じ技を繰り出すのだから、何か他の色に染まりたいと思っているんだろう。 だけど、染める、って。 透明だから染めようがないのに、僕のコアは何かを染めたいと思っているんだろうか?「このコアは、単に激レアな色ってだけじゃないのかい?」「はい、創造主の研究では、旧人類と新人類の交代が本格化する時期に、透明なコアとその持ち主が現れる、と予測されていました。ただ……私には創造主のお考えなんて分からないので、どういう意味かは分かりませんけど……」「多分、その意味と使い方が、羽根さんがコアに刻み込んだ記憶の奥底にあるはずだ」 僕はナナに聞いた。「それを、呼び出せない?」「ごめんなさい……わたしは一介のコア生物に過ぎないんです……。仁さんは脳みそを持っていて体中に指示を出しているけど、意識してやってはいないでしょう? 私も……コアの一部だけど、一心同体と言うわけじゃないから、コアの奥深くに創造主が仕込んだ鍵を見つけようと思ったら、それこそ自分の意識が溶
last updateLast Updated : 2025-12-02
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第173話・兄

 そして、風が吹き込むと思ったら、奥のガラス張りの部屋の、強化ガラスであろう透明な板が粉々に砕かれていた。 まず、誰が割った? ガラスの欠片は部屋の内側に向かって砕けている。外部からの影響だ。だけど、この部屋のこの高さじゃ、乗り物かミサイルでもないとこのガラスは砕けない。「お兄様、ですね」「お兄様?」「創造主のお兄様です」 そう言えば、記憶の中にその顔があった。 美丘海馬。羽根さんの兄。 送り込まれた記憶の、その部分をはっきりさせる。 肉体を、細胞レベルで扱えるようになったコア主。「でも、七十年前だろう? どうやって……」「創造主が言っていました」 ナナは砕けたガラスの間から外に出たり入ったりしながら言った。「肉体を細胞レベルで操れるということは、肉体の老いを操れることにもなるって」「つまり……老衰はないってこと?」「……はい」 七十年以上生きて、老いていない。 もしこの結果が知られたら、どれだけの騒動が巻き起こるか。「海馬様は、ずっと創造主と連絡を取ろうとしていました。救世主の正体を見抜いて、本当の妹である創造主に、何とかして会えないものかと。細胞を操り外見を変えて、七十年この学校にいたと言います。創造主御自身も、何とか連絡を取れないかと試行錯誤してたみたいです。でも、救世主に阻まれて、結局お二人は会えないまま、事態はここまで進んでしまいました……」「外見が変わっただけじゃ、学園長の目には誤魔化せなかったってことか」「はい……救世主は海馬様のコア周波数を記憶してましたので、細胞を組み替えようと細胞の一つ一つにまで浸透したコアの周波数を変えられなかった海馬様は、救世主を出し抜けませんでした……」「その海馬さんも、コア結晶に?」「……いいえ、今の海馬様は、肉体がほぼコア化した特殊な存在。コア結晶が人間の意思で動いている状態です。だからこそ、ここからあのお二人を助けられた……」 渡良瀬さん。彼方くん。「海馬さんが二人を助けてここから飛び降りた?」「コアの気配は、そうなっています。人間の気配自体が仁さんと壮さんと瑞希さんと、海馬様しかいないから、その軌跡ははっきりと分かります」「じゃ
last updateLast Updated : 2025-12-02
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第174話・救世主の使命

「ごきげんよう、お兄様」 その声に、直治……海馬は二人を背にして千鶴と対峙した。 まるで絵に描いた神仏のように、金色の光をまとってやって来た千鶴に、海馬は軽く目を細めた。「生憎、君のような悪趣味な妹がいた覚えはないんですけど」「ええ、でも、貴方を実験体として使ってコアの可能性を切り開いた残酷で冷酷な妹はいらしたわよね?」「まあ、いましたね」 海馬は手を伸ばす。「それでも、この肉体がなければ、七十年君を見張ることができなかったのですから、結果オーライということで」「妹の実験で人外になって、よくもまあそんなことが言えたこと」「人外?」「それに、私を探るために生徒にコア監視員の情報を伝えたのも貴方。残酷な女の兄はやっぱり残酷ね。自分を慕う可愛い生徒を偵察に使うなんて。何人、私の所へ送って来たの?」「それこそ、お互い様、というものですよ」 海馬の声も一段と冷たくなる。「君がコア結晶化した中に、君を慕う可愛い生徒や君を尊敬する有能な研究者が大勢いたはず。それらを全員切り捨てられるほど、私は残酷にはなりきれなかった」「邪魔者は消す。それが美丘羽根のポリシーだったわよね、お兄様?」「その伝で言えば君も変わらないでしょう、学園長殿。何人、記憶消去・追放して……その後、姿も形も見えなくなった者がいたんです?」「くっそ、バケモノばばあが」 壮はコアを使おうとするが、海馬が止めた。「なんでだよ!」「今の彼女を見なさい」 黄金の光を放つ女を顎でしゃくって、海馬は言った。「コア監視員がいなくなったのは気付いていましたね?」「……そう言えば」「あの光はコア監視員の意識。彼女はそれを取り込んで、何かになろうとしている」「だから、その前に……!」「あのコア監視員の塊を削らないと、あの女に攻撃は当たらない」「相変わらず勘が鋭い事。それとも長生きして身につけた知恵?」 海馬の腕がぐぅんと伸びた。 拳は千鶴を狙っている。 だけど、まるでバリアのような金色の光に阻まれた。「残念ねえ、旧人類の攻撃など、私には効かなくてよ」「旧人類、ね。私たちが旧人類として、君は一体何者なんです?」「私は救世主。新たな世界を創るもの」「戯言をっ」 海馬の腕が幾つにも分かれて、その先から空気弾に似た何かを放った。 金色の光が
last updateLast Updated : 2025-12-02
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第175話・二人の救世主

「行けぇええええええ!」 壮は空気弾を連打する。海馬に教わったように、全身で集中して、千鶴を狙う。 その弾丸の間を、海馬は姿を変えながら走った。 まるでアメーバが動く時のように、形を変え、弾丸の通り道を作り、その合間に、千鶴に接近して、変形した拳を一度に十回、叩き込んだ。「やるわねえ。さすがはお兄様」「君は私の妹じゃない」 人外の形相と化し、海馬は攻撃を続けながら言った。「君は、人類の敵だ」「まだそんなことを言っているの? 私たち新人類に敵などない。あるとすれば、コアと旧人類の狭間にいる貴方だけ。だから、この場で貴方を殺す」「なるほど、私が鍵か」 金色の光を削りながら、海馬は叫ぶ。「ならば! 私が! 貴女を! 滅ぼす!」「自分が鍵だなんて、思いあがっているから、攻撃が仕掛けられるのね」 憐れむように千鶴は言った。「貴方は危険人物だけど、私たちコア全体に危険をもたらす者じゃない。危険をもたらすとしたら……」 壮の連射と海馬の連撃を金色の光で受け止めつつ、千鶴は軽く首を振った。「いいえ、だから私は彼をあそこに送り込んだのよ。そして、私の想像通りなら、彼はもう絶望して……」「誰が絶望しているって?」 一瞬海馬が攻撃を止め、壮がそちらを見た。 その一瞬、光を発して海馬を弾き飛ばし、千鶴は振り返る。「丸岡君……」     ◇     ◇     ◇     ◇「どうやってここまで来たの?」 心底不思議そうに声をかけてくる学園長に、僕は軽く笑った。「コア監視員と同化するために、地下研究所との繋がりを全部切ったでしょう? 残念ながら、あそこにいるみんな、貴方と縁を切りたがっていたから、僕を上へあげてくれた」「みんな……?」 海馬がぽつりと呟く。「ああ、なるほど。人間のままでいるのもコア生物になるのも嫌だという半端者が、貴方をここまで導いたのね」「半端者にしたのは学園長でしょう」「学園長ではないわ。私はコアにとっての」「コアにとっては救世主だろうけど、僕たちにとっては殺し屋だ」 僕は右手を引いて、笑った。「だから、学園長。あなたを倒す」「倒せるわけないでしょう?」「やってみないと分かりませんよね」「分かってるわ」 学園長の笑みに、僕もまた、笑みを浮かべる。反吐が出そうなほど最悪
last updateLast Updated : 2025-12-02
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第176話・鍵

「そうだけど、貴方は別よ?」「分かってますよ。でも、このまま人類滅亡していくのに、僕たちだけ生き残っちゃっても仕方ないでしょう?」「あら。じゃあ大人しく死んでくれる?」「違うでしょう? あなたは僕を殺さない。羽根さんが言っていた。僕のコアは鍵だって」「あら、緋色ってば、余計なことを」「緋色は羽根さんじゃなくてあなたでしょう?」「今は彼女が緋色だから」 僕は即座に色をコピーした。 ナナが同化したことによる、二色同時コピー。 海馬さんのコアはコピーできない。本来の黒茶のコアが、全身に行き渡っているし、本来は肉体強化ではなく肉体変貌である海馬さんのコアをコピーして僕に操り切れるかって言う不安もある。 だから、白藍色と桜色を。「行くぞ!」 僕は空気の塊である空気弾を、少し変えて放った。 白い光が立て続けに飛んでいく。「あら、嫌らしい攻撃」 学園長は本気で避けた。旧人類にはありえない程素早い勢いで。「やっぱり、渡良瀬さんの他者強制鎮静化は厄介なんですね?」 僕の向けた笑みに、ほんの少し、学園長は嫌そうな顔をした。「二色をコピーするだけでなく、組み合わせて使うなんて、なかなかやるじゃない。今のうちに、そのコアを、取り込みたいわ」「一つ聞きたいんですけど」「なぁに?」「僕の透明なコアは、何の役に立つんです?」「透明とは、即ち、どんな色にも染まること」 優雅に学園長が笑むのに、僕も笑い返す。「反抗するコアと入れ替えて、私がコアの救世主となる」 ふと、僕はナナに聞いたことを思い出した。 染まる……染める。 染まるとは、学園長が言ったように、反抗するコアと入れ替えること。 なら、染めるとは? ふと、僕の頭に何かが引っかかった。 羽根さんの言った、鍵とはこれか。 でも、今一つはっきりしない。 まだ、そこに辿り着くまでに扉がいくつかあるようだ。 そこに辿り着くまで、時間を稼ぐしかない。「反抗するコアがいるんなら、コアの集合意識の救世主になんてなれないんじゃないですか?」「その為の貴方の透明コアだもの」「僕の透明コアが大人しく言うことを聞くでしょうか」「聞かせるわ」 学園長は嬉しそうに笑う。「緋色がその結果を出した時、私は動き出すべきだと思った。透明なコアとそのコ
last updateLast Updated : 2025-12-02
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第177話・僕は絶望しない

 その時。分かった。 羽根さんが僕のコアとナナに仕掛けたからくり。 コア救世主を倒す、ただ一つの方法。 そして、それが今この時、目覚めたということは。「羽根さんはどうしても伝えたかったんだ……お兄さんに」 呟いて、僕は、金色の光を掻き消した。「え?」 まだ海馬さん……いや僕にとっては長田先生……は金色の拘束から逃れられていない。だから僕は、そうした。 僕のコアで。 金色の光がすべて、消える。「まさか……」 救世主を名乗る女の、顔色が変わる。「何故……何故、絶望しないの……? こんなに素晴らしい私たちを前に、何故敗北を認めない……?」 喉を絞められていたので喋るのがちょっと苦しい。 だけど、僕は笑えた。 目論見が外れた救世主に。「羽根さんは君が思うより、君が予想していたより、ずっと頭がよかったんだ」(そうですね、仁さん) 小さな声が、頭の中に響く。(創造主は、私の創造主は、緋色なんかより、ずっと頭がよかった) 頭の中に刻まれた記憶が教えてくれる。 どんな生命でも、増え、力を増せば、その数と力で母なる大地を滅ぼすことになる。 だから、増えすぎた生命を糧とする天敵が必ず現れる。 人類にとって、それは蝗であったり獣であったり同じ人類であったりした。長く続けて腐りかけた生命は、必ず新たな生命に取って代わられる。それが生命の理。 だけど、決してそれは残酷な生存競争の果てに滅ぼされたわけではない。 生命の過渡期に、天敵の形を取った何かが現れている。 それは地球が送り込んだ最後の希望なのか、あるいは絶望の源なのかは分からない。けれど、生命と新生命の狭間にいる天秤の役割を持った何かがどちらに世界を明け渡すかを決めると、背かれた方はゆっくりと滅亡の路を辿り、受け継いだ方は少しずつ世界に広がり始める。 本来は今回の生存競争の天秤は、誰も知らない所で生まれ、誰も知らないささやかな判断で地球の未来は決まっているはずだった。だけど、羽根さんは演算の結果、今の勢いでコア人類が増えれば、必ずこれという形を持った天秤が、コアを増やし続ける救世主の前に現れ、人類と新人類のどちらかを選ぶだろうと判断した。 それがどんな力を持っているかは分からない。ただ、人
last updateLast Updated : 2025-12-02
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第178話・素晴らしき新人類

 そして、僕が現れた。 透明なコアを持ち、それが役立たずだと嘆きながら受験会場へ向かっていた僕が天秤だと、救世主はすぐに気付いた。そして、その能力がコア能力のコピーと言うものだとも。 救世主は僕のコピー能力を力ずくで発動させて、学校に取り込み、同時に羽根さんに計算させた。 その結果、できるのは、コア意識の制御だと羽根さんは判断した。 透明……色がないが故に、他のコアの代わりができる。 自分がコア生命体の救世主、そして女王となるためには、自分に背くコアの代わりができる、重要なコアだと知った。 だけど、判断するのは僕だとも。 だから、救世主……学園長は、僕を見守った。 コアの力で少しずつ成長していった僕を。 そして、僕が絶望したその時が、コア生命体が地球に取って代わるその時だと知った学園長は、地下施設に僕を案内する気になった。 だって、こんなに素晴らしい生命体を前に、旧人類が敗北を感じずにいられるだろうかと言う、まるで子供みたいな考えで。「新人類……新人類ね」 僕は学園長に笑みを向けた。「でも、人類に違いない。実際に学園長は間違いを犯した」 大きな誤算。 学園長は、羽根さんの計算結果を最後まで聞かなかった。 羽根さんが隠そうとしていたのもあるけど、所詮自分に寄生して生きている生物が、裏でいくら画策しても、自分の目からは逃れられないだろうという、なんとも人間らしい思考回路で。「僕って言う天秤が、人間の側に傾いたら、学園長は僕をどうする気だった?」「もちろん、抹消するわ」 笑みを取り戻して学園長が僕を見る。「なら、人間の側に傾いた天秤は、人間を救うために、何ができると思う?」 僕は軽く後ろに回した手で、下がれと合図した。渡良瀬さんと彼方くんと長田先生に。 長田先生はすぐに気付き、異形としか呼べない肉体で、それでも渡良瀬さんと彼方くんを庇いながら、じり、じりと下がる。 学園長は気付かない。 どんな優秀な生命体だったとしても、間違いを犯さないなんてことはない。 だから僕もまた、笑う。 彼方くんが教えてくれたように。 そして、実行に移す。 ココが言ってくれたように。「天秤を人類に傾けるなら……絶望を味わわせる方法は、いくらでもあるのよ?」「あなたにと
last updateLast Updated : 2025-12-02
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