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第174話・救世主の使命

作者: 新矢識仁
last update 最終更新日: 2025-12-02 11:35:14

「ごきげんよう、お兄様」

 その声に、直治……海馬は二人を背にして千鶴と対峙した。

 まるで絵に描いた神仏のように、金色の光をまとってやって来た千鶴に、海馬は軽く目を細めた。

「生憎、君のような悪趣味な妹がいた覚えはないんですけど」

「ええ、でも、貴方を実験体として使ってコアの可能性を切り開いた残酷で冷酷な妹はいらしたわよね?」

「まあ、いましたね」

 海馬は手を伸ばす。

「それでも、この肉体がなければ、七十年君を見張ることができなかったのですから、結果オーライということで」

「妹の実験で人外になって、よくもまあそんなことが言えたこと」

「人外?」

「それに、私を探るために生徒にコア監視員の情報を伝えたのも貴方。残酷な女の兄はやっぱり残酷ね。自分を慕う可愛い生徒を偵察に使うなんて。何人、私の所へ送って来たの?」

「それこそ、お互い様、というものですよ」

 海馬の声も一段と冷たくなる。

「君がコア結晶化した中に、君を慕う可愛い生徒や君を尊敬する有能な研究者が大勢いたはず。それらを全員切り捨てられるほど、私は残酷にはなりきれなかった」

「邪魔者は消す。それが美丘羽根のポリシーだったわよね、お兄様?」

「その伝で言えば君も変わらないでしょう、学園長殿。何人、記憶消去・追放して……その後、姿も形も見えなくなった者がいたんです?」

「くっそ、バケモノばばあが」

 壮はコアを使おうとするが、海馬が止めた。

「なんでだよ!」

「今の彼女を見なさい」

 黄金の光を放つ女を顎でしゃくって、海馬は言った。

「コア監視員がいなくなったのは気付いていましたね?」

「……そう言えば」

「あの光はコア監視員の意識。彼女はそれを取り込んで、何かになろうとしている」

「だから、その前に……!」

「あのコア監視員の塊を削らないと、あの女に攻撃は当たらない」

「相変わらず勘が鋭い事。それとも長生きして身につけた知恵?」

 海馬の腕がぐぅんと伸びた。

 拳は千鶴を狙っている。

 だけど、まるでバリアのような金色の光に阻まれた。

「残念ねえ、旧人類の攻撃など、私には効かなくてよ」

「旧人類、ね。私たちが旧人類として、君は一体何者なんです?」

「私は救世主メシア。新たな世界を創るもの」

「戯言をっ」

 海馬の腕が幾つにも分かれて、その先から空気弾エア・バレットに似た何かを放った。

 金色の光が
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