Semua Bab 知らないまま、愛してた: Bab 11 - Bab 20

164 Bab

11

今回は、和美様がお二人の婚約を認めたとSNSに投稿されたため、ご親族の騒ぎは前回以上らしい。そんな状態でも、蓮司様は吉川様と結婚すると仰っている。桐谷の本邸に突撃し、蓮司様がその意思を変えないと分かると、その悶々とした気持ちを抱えて和美様のところにやってくる。おかげで、別邸にくるご親族の方はどなたも渋いものを食べたかのような表情。武美様は……顔を赤くして起こっていらっしゃるけれど、武美様のご両親、春樹様と唯花様は他のご親族同様に渋い顔をしている。「蓮司ったら、一体何を考えているのよ!」ここから始まるのは、いつもの流れ。「そう言えば、蓮司って昔から……」このように、親戚らしい蓮司様の昔話が始まる。他の方のときもそうで、「美香さんも休憩なさい」と和美様から声を掛けられ、いつの間にか私も彼らの昔話に巻き込まれているのがいつもの流れ。そして、旧知の中に新参者の私が混じれば、「そういえばあなたは?」と聞かれる。私は自己紹介をし、和美様から仕事に関するお褒め言葉を頂戴し、そこからご親族の方のリクエストに合わせてお昼ご飯や晩ご飯を作る……。……あら?思い返せば、私も楽しくて刺激もある生活を送らせていただいているわ。「とりあえず中に入りましょう。美香さん、人数分のコーヒーをお願いするわ」「畏まりました」「美香さん、手伝うよ」「ありがとうございます、朋美様」   *  「ん~、美味しい!」お湯が沸くのを待ちながら、朋美様にコーヒーカップの準備を手伝ったお礼として、皆様にお出しするシフォンケーキの切れ端を出した。これ狙いでお手伝いを申し出てくださったのは分かっていた。「これ、絶対に武美ちゃんの好みだよ」朋美様が首を傾げる。「いつもの美香さんのクリームとは違うよね、武美ちゃんの好みを知っていたの?」「武美様のお名前は、ご親戚の方々の会話の中でよく聞いていましたから。武美様がお好きだと言っていたケーキを私も食べたことがありまして、それで、お口に合えばいいと思って」「……美香さん、親戚の話を覚えているの」まさか。「一言一句を覚えてはいませんよ。重要そうな情報だけ覚えているだけです」聞きかじった情報を覚えるのは、昔からやっていたこと。花嶺家では、言われていないからと準備しないでいると、「言ったでしょう」と怒られて罰を与えられた。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-17
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12.

「お待たせいたしました」リビングの入口のところでお声がけをすると、お三方の会話がピタッと止んだ。私が三人の前にコーヒーを置き、そのあと朋美様がシフォンケーキを置いてくださった。あ……先ほども食べていらっしゃったのに、ご自分の前に一番大きなものを……見なかったことにしよう。 「うわっ、美味しい! めちゃくちゃ美味しい! 大叔母様、これはどこのシフォンケーキ?」「美香さんの手作りよ、美味しいでしょう」「なんで大叔母様がそんなに自慢げなの……朋美までドヤ顔して……へええ、あなたが噂の家政婦さんか」和美様に苦笑し、朋美様に呆れた目を向けていた武美様の目が私に向いた。声にも目にも探るような気配があるけれど、気にしない。自分の仕事は完璧なんて驕る気はないけれど、和美様にご満足いただけているという自負はある。 「お祖母様に気に入られるだけあるわ」「由美様、でございますか?」……気に入られていた、かしら。 武美様のお祖母様で、和美様の妹で英家に嫁がれた由美様は、和美様に料理やお菓子の感想を求められても「まあまあ」と仰るだけで、気に入られたという印象はない。でも、それが嫌だという印象はない。先程もそう思ったけれど、私を雇っているのは和美様であり、和美様が満足するならよい。味には好みもあり、万人が美味しいと思うものなんてない。 「お祖母様は人見知りでツンデレなのよ」ツンデレ……武美様の言葉に、和美様たち他の方も頷いていらっしゃる。「私、三日前に深夜に日本に帰ってきたのよ」それで翌日桐谷家に乗り込んで、本日はここにいらっしゃる……バイタリティ溢れる方なのね、武美様は。「朝起きて、久しぶりにテニスのラケットを出してきて素振りをしたの。私、中学校、高校とテニス部で、全国大会までいったのよ」「すごいですね」「ありがとう。昔取った杵柄というやつで平手打ちには自信があるんだけど、ちゃんと決めたいから練習しておこうかなって思って素振りをしていたの」……ん?「武美ちゃんの平手打ち、風の唸る音からのブワッチーンって気持ちいい音がするよね。あれで、まだ練習必要?」それはすごいわ。「しばらく誰も叩いていないから、ちょっと自信がなくて」「それで、やったの? 相手は一応妊婦だよ」「それだから、とりあえずやめておいたわ。でも吉川凛花……あの
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-18
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13.

華乃はトランスジェンダーであることを隠している。自分が偏見と差別に苦しみたくないという思いもあるようだけど、私が見るにお母さんを悩ませたくないという思いが強いように思える。今でこそ「トランスジェンダー」と言われるが一昔前は「性同一性障害」と呼ばれた。「障害」という言葉はどうしても差別的見方を避けられない。そういう私も華乃のことは受け入れられたけれど他の人はどうかなって自信はないから、上の世代はもっとそういう思いが強いだろう。 だからだろう、華乃は外では徹底的に『乃蒼』として振る舞っている。二年ほど前に出会ったパートナーの佳孝君も同性愛者であることは周囲に知られたくない派だから、私から見て二人は運命的に出会ったいいパートナーだと思う。二人は同棲しているけれど知らない人が見れば仲のいい男性の二人暮らしにしか見えない。都内は家賃が高くそうじゃない男の人たちのルームシェアもあるから悪目立ちもしない。見映えの良い二人だから腐女子のアンテナには引っかかるかもしれないけれど、事情を知っている私でさえ外で見る二人は完璧に友人なので腐女子の妄想の域内で収まっているだろう。 表では男性として振る舞う華乃がトランスジェンダーだと知ったのは偶然だった。 見た目超絶イケメンの華乃は大学の女生徒に大変人気で、尾行されて家を突き止められ、宅配便の配送員を装った女生徒に突撃自宅訪問を受けてしまった。華乃は表向きは男性として完璧に振舞っているが、そのストレスを発散させるかのように華乃の部屋はとても女性的で可愛らしく、当時もそうだった。それを見た彼女の反応は「乙男、意外」「ギャップが可愛い」ですんでいたのに、そこからどう噂が改悪され、もしかしたらトランスジェンダーであることが暴露されるかもしれないという恐怖心が華乃を突き動かし――。「これ、同棲している彼女の趣味」そう言って、丁度帰宅したところだった私をその騒ぎに巻き込んだ。完全に巻き込まれただけなのに、「彼と別れて!」という修羅場に発展し、彼女には思い切り平手打ちされた。 「一体なんなの?」当然私は説明を求め、華乃は最初はのらりくらりと誤魔化そうとしたが、かまをかけてトランスジェンダーかと問えばあっさりと白状した。かまをかけるにあたりトランスジェンダーを選択したのは、華乃は私に会う
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-19
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14

「桔梗が雇ってほしいとうちに来た日、桔梗の首の後ろに歯形がついているのが見えたの」三ヶ月も前のことなのに、反射的に首を後ろを手で覆った。ここに噛み痕……ゾッとする。「桔梗が男を避けていることは知っていたけれど、こういうのは出会いだし。いい人を見つけたから、あの錦野柾との婚約がなくなったのだと思ってもいたの……その様子だと、違うみたいね」首の後ろにあてた手に力が籠る。「なにがあったの?」なに。そう思った瞬間、私はあの暗い夜に戻った。 恐怖の記憶。痛みの記憶。 抵抗した。必死に逃げようとした。 男に襲われたのは、初めてのことではない。大学生のときだって、同じアパートに住む男の先輩が部屋に押し入ってきたことがある。あれは、華乃とルームシェアするキッカケでもあった。油断していた。よく見かける人だったから。同じ大学の学生の多いアパートだったから。まだ外が明るい時間で、ちょうど講義が終わる時間で、人気がないわけではなかった。ただ、玄関の鍵を開けただけ。扉を開けて、中に足を踏み入れたとき後ろから足音がして、驚く間もなく背中を押されて、部屋に押し込まれて、躓くように玄関の床に転がったところを圧し掛かられた。幸い、すぐに華乃が気づいてくれて助けてくれたから未遂だった。このことがあって、男性には一層警戒していた。全員がそうではないと分かっていた。でも、そうなのか、そうではないのかが分からないから、『男性』というだけで一括りにまとめて警戒していた。大学卒業して、実家に帰ってからは桜子の”お友だち”によく絡まれた。桜子は「ちょっとした悪戯」だったけれど、私は怖かった。でも、桜子の言う「ちょっとした悪戯」だったから、怖がらせて揶揄えれば桜子たちは満足で、私を暴行しようとまではしなかった。男性に対する嫌悪感は増しただけ、体は無事ではあった。でもあの夜、真っ暗な闇の中にいたあの男は違った。あの男は――私を穢した。 あの男の力は強かった。私の抵抗など、まるで児戯のようにあしらわれた。あの男の圧し掛かる大きな体は重くかった。押しのけることができなかった。あの男の獣のような呼吸を聞きながら――「やめて」と懇願することしかできなかった。ただ、「やめて」と願い続けた。 下着を無理やり引っ張られ、肉に布が食い込む痛みと恐怖に
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-19
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15

冷たい水で喉を冷やしながら、あの夜のことを華乃に話した。長い時間だったけれど、華乃は焦らせず、最後まで黙って聞いてくれた。「ふう」話したら、スッキリした。誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。その誰かは、私には華乃しかいない。華乃がいてくれて、よかった。 「ごめん」「華乃?」「何も知らずに、何も考えずに妊娠とか言って……ごめん」「ううん、それは当たっていたし……普通なら、そんなことが起きたなんて思わないよ」「でも、気づくべきだった」華乃の目に涙が浮かぶ。「桔梗にこれまであったことは聞いていた。事情は、それなりだけど、知っていたんだ。だから、その可能性を俺は考えるべきだった。考えるべきだったのに……本当にごめん」唇を噛んでも堪えきれなかったのか、華乃の目から涙がこぼれた。それに、慰められた気がした。震える華乃の肩に寄り掛かる。自分のために泣いてくれる人が隣にいてくれる。これは幸せなことなのだろう。 「気をつけていたんだよ……動画配信で、護身術もちょっとは齧ってみたんだ」「……うん」「護身術って、難しかった。だから、華乃に言われた通り、急所を思いきり蹴っ飛ばして逃げようって思っていたんだ」そうか、と華乃がスンッと鼻を鳴らした。「確かに、同居初めてすぐにそんな話をしたっけ……」「懐かしいよね」随分と昔のことのようだ。あれから、いろいろあり過ぎた。「それで、どうするの?」「どうするのって」選択肢は、一つしかない。「堕ろすしかないから」いまの私の状態で子どもは育てられない。子どもは何も悪くない。それなら、不幸になる子どもは産むべきではない。 「“しかない”って、お祖父さんちは?」「……従兄がいるから」「あのニート、まだ西園寺家にいるのか。そもそも、アイツが諸悪の根源なんじゃないか? あいつに襲われたから桔梗は……初めてを、そんな形で……」それは、八つ当たりで言いがかりだよ。でも……諸悪の根源、か。  *  西園寺家にいるニートは西園寺明広。母たち兄妹の末っ子である明子叔母様の一人息子である西園寺明広は、なぜか私に昔から執着している気がする。特に、仲が良かったわけではない。仲が良かったのは叔父様のところの三兄妹で、彼らと遊んでいたときに視界の端にチラチラ明広兄さんが見えたくらい。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-19
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16.

「子どもを堕ろすのは、仕方がないから?」「華乃?」「暴行されたときのことを思い出すから産みたくないとかではなくて?」暴行されたときのこと……ぐうっと胃が動くのを深呼吸で鎮める。「子どもを見るたびにあの夜のことを思い出すかもしれないけれど、それは子どものせいではないわ。子どもがいてもいなくてもあの日のことは忘れられない」例えドラマみたいな出会いがあって、ドロドロに溺愛されて、愛され尽くされても、あの夜のことは忘れられないだろう。どれだけ愛されても、ふとした瞬間に私はあの夜を思い出して悲鳴をあげるに違いない。そんな女を愛せる?例えそのとき「愛している」と言えても、それが何日も、何年も続けば嫌になるに違いない。 「むしろ現実逃避をしてあの日をなかったことにしようと、アフターピルを飲まなかったから……そのせいでこんなことになって……」ごめんなさい。でも、これは口にはできない。この子にしてみれば、これから自分を殺す人間が何を言っているんだってところだろう。 「あのさ……あくまでも提案なんだけど、この子どもを俺たち三人で育てないか?」「三人でって……私と華乃と佳孝君でってこと?」 半年ほど前、華乃と佳孝君は、佳孝君の知人の女性の子どもを三人で育てる計画を立てていた。「彼女の夫がDV夫で、彼女は夫と離婚するために佳孝のところに相談に来たんだ」彼女は生後二か月の子どもを連れて夫から逃げ出したものの、夫の稼ぎでは十分な仕送りは期待できず、かといって彼女も今まで働いたことがなく、彼女は子どもを児童養護施設に預けようとしていた。「俺と佳孝、それまでずっとどうにかして養子が取れないかって話していたところでさ」日本では同性婚が認められていないから同性カップルが共同で子どもの親権をとることはできない。「言い方は最低だけど、渡りに船って感じで、それなら三人で、俺と佳孝が彼女の子どもの未成年後見人になる形で、みんなで子どもを育てよ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-20
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17.

泣いたら喉が渇いて、ペットボトルを傾けたがあまり水が入っていなかった。「泣いたからな。もう一本買ってくるよ」「私も行く。なんか甘い物が飲みたい気分だし、乃蒼の分も買ってくるよ」「俺も行く。その言葉を聞いたら俺も甘い物が飲みたくなった」 二人で自販機まで歩き、ミルクティのボタンを押してしゃがみ込む。!「なにこれ?」「ミルクティじゃないのか?」「違う、私の顔、なんかもう、めちゃくちゃ」「……泣いたからな」そうだよね……ヤダ、目の周りなんて真っ黒。 「け、化粧落とし、持ってない?」「持ち歩くわけないだろ」「早く飲み物買っちゃって。車に戻って、最初のコンビニに寄って、化粧落としを買ってきて」「はいはい」「早く、早く」知り合いに会ったら恥ずかし……。 「家政婦さん?」 ……ああ。真横で止まった黒塗りの車の後部座席の窓が開いて、吉川様が顔を出した……知り合いに会ったらって、私、フラグたてていたのね。 「……なにやっていらっしゃるの?」「えっと……」化粧ボロボロの顔を隠すためと、華乃に助けを求める気持ちを込めて、後ろを見る……華乃、缶が引っ掛かってる……ううう。 「もしかしてそこの方となにやら……っ!」楽し気が声がピタッと止まった。取り出し口からやっとコーヒーの缶を取り出せて、顔をあげた華乃(乃蒼)を見たからだ。「まあ。家政婦さん、そちらの方は?」こういう反応は吉川様に限ったことではなく、華乃(乃蒼)を見た女性は大体そうなる。「社長です」「まあ、社長さん」「家政婦派遣業の『コンシェルジュ・ド・ハウス』の花岡乃蒼と申します。いつもうちの東国がお世話になっております」「吉川凛花と申します」華乃が軽く首を傾げるから、私が補足説明する。「菊乃井様のお孫様である蓮司様のご婚約者様です」「……そうでしたか」ん?華乃の反応、何か含みを感じるんだけど。 *「あれが吉川凛花か」後ろから車が来たため、話の途中でとても名残惜し気な吉川様を乗せた車は発進した。おそらく菊乃井家の別邸に行くのだろう。それにしても……。「吉川様を知っているの?」「『コンシェルジュ・ド・ハウス』は上流階級のお客様が多いからね。最近ご挨拶に伺えばどこも桐谷グループの御曹司の婚約者の話になる」「それなら、どうしてさっきは『誰?』って顔
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-20
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18.

「お客さん、着きましたよ」……いけない、ウトウトしてしまっていたらしい。起こしてくれたタクシーの運転手に礼を言って、運賃を払う。予定よりかなり遅くなってしまった、和美様はもう眠っていらっしゃるだろう。 「随分と遅かったな」!「……蓮司様?」暗がりだからお顔が見えなかったけれど、蓮司様はくわえている煙草の火を大きくし、ご自身の顔を照らすことで私の疑問に答えてくださった。煙草を吸っていらっしゃるということは、どうやらお酒を飲んでいらっしゃるらしい。 「ただいま戻りました。遅くなって申し訳ありません」「いや……顔はどうした?」顔……そういえば吉川様に凄い顔でお会いしたのだったわ。「病院に向かう途中で気分が悪くなり、車を降りて顔をこすったらメイクが取れてしまいまして……メイク道具を持たずに出かけたので、ほぼノーメイクなんです」鞄に入れておいた色付きのリップクリームと、化粧落としと一緒に華乃が買ってきてくれたアイライナーでなんとか修復しただけの状態。「お見苦しくて申し訳ありません」「いや……気にする必要はない」「そう言っていただけると……そう言えば皆さま、お食事は? 和美様はなんとでもなるから気にしないでいいと仰られましたが」「菊乃井の本邸から幾人か来た。今後も何かあればそうすればいいから、君が無理をする必要はない。体調は?」「もう大丈夫です。お酒をお飲みでしたら、何か作りましょうか?」「ありがとう。無理するなと言っておきながら申しわけないが、出来るなら頼みたい」「大丈夫ですよ」「冷蔵庫に入っていたものも、いくつか勝手に食べてしまった」「それは和美様が了承していれば構いませんが…&hel
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-21
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19.

「それで?」「え?」「いいことはあったのか?」考えごとに没頭して尋ねらえたことを忘れてしまっていた。 「ずっと悩んでいたことが、少しだけ解決しました」「それは羨ましい」なんだろう……今日の蓮司様はどことなく変だ。どこがとは言いにくい。蓮司様っぽくない、この表現が一番近い気がする。 久し振りにお会いするからだろうか。蓮司様はこの一ヶ月とても忙しく、息抜きもできずに苛立っていると朋美様はおっしゃっていた。一ヶ月ぶりだけど、久し振りに会う気はしない。和美様を訪ねていらっしゃるご親戚の方々から蓮司様のお話しをいろいろ聞いているからかもしれない。 「会うのは久し振りな気がするが、全く久し振りな気がしないな」蓮司様も?「最近の親戚は口を開けば『美香ちゃんのご飯が』『美香ちゃんの料理が』と俺に自慢してきたからな。随分とジジババの我侭に付き合わされたみたいだな」ジジババ……。「皆さん、美味しいと仰って沢山食べてくださるので作り甲斐があります」「武美もシフォンを絶賛していた。本当に美味しいのだと言って、それなら食わせろと言ったら絶対嫌だと部屋に持ち込んで、部屋で食うなと祖母さんに怒られていた」「喜んでいただけて何よりです。今日はこちらにお泊りですか?」「ああ、せっかく武美が来ているからな」蓮司様の口元が緩んだ。精悍なお顔立ちのせいか、ふわりと優しい笑顔はちょっとだけ……なぜここで吉川様のお顔が?吉川様が思い浮かんだ瞬間、ひゅうっと冷たいものを感じた。彼女は怖い。もともとそうだったけれど、華乃から吉川様が桜子の友だちだと聞いてより怖くなった。 「武美とは酒の好みが似ているから、久しぶりに飲むのを
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-21
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20.

「君も……」「え?」「親戚連中が君を大変気に入っていると聞いている……ちゃっかり夕飯まで食ってるし」「私こそ、楽しい思いをさせていただいています」「あることないこと、いろいろ君に話しているんだって?」「……そう、でしょうか」かくれんぼ中の蓮司様が蔵に閉じ込められて泣いた話。武美様に喧嘩で負けて泣いた話。家出すると仰られて出ていったものの屋敷をぐるっと囲む林の中で迷子になられて泣いているところを発見された話。思い返してみると、こうして目の前にいる蓮司様からは想像もつかないこの人のちょっとドジで可愛らしいエピソードばかり。 「その顔……絶対にろくでもない話を聞いているな」「そっ……んなことは……」どれもお可愛らしいエピソードです……と言ってもいいのかしら。「親戚のジジババにとっては、俺はいつまでも洟垂れ小僧だからな」「……ぷふっ」洟垂れ……。こんな人が……こんな人の口から、洟垂れ……。 「こんなによく笑う……柔らかい君を見たのは初めてだ」「……すみません」馴れ馴れしかっただろうか。 「謝る必要はない。いまの君はオフタイムだからな。休みの日はいつも何をしているんだ?」「そうですね……食べ歩き? とかでしょうか」 食事は一日三回、レパートリーの少なさに家族は文句を言った。あの頃はまだ高校生で、いろいろな料理の本を読み漁った。それから、いつの間にか家族のために義務でやっていた料理の勉強が楽しくなって、そして自然と、余裕のあるときはいろいろな店に足を運ぶようになって、いろいろな料理の味を知るのが好きになった 「……ふっ」……笑った?いや、笑われた? 「おかしい、ですか?」「いや、すまない……変ではないが……いや、変なのか……意外とは思ったのだからな」……まだ笑いが止まっていらっしゃいませんけれど? 「考えてみれば納得だ。君の料理は本当においしいからな。いろいろな味を知っているからこそできることなんだろうな、あれは」そんなにしみじみと言われると……顔が、熱い。「いや、失礼。知っていれば作れるわけではないな。それなら俺は料理の達人のはずだ」「お料理、なさるんですか?」「いや、全然。全くできない」そこまで断言? 「うちの一族は外から嫁入り、婿入りした者以外は全員料理ができない。うちの場
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-22
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