Semua Bab 知らないまま、愛してた: Bab 31 - Bab 40

164 Bab

31.

「来週、雅美さんが帰国するんだけどね」「おめでとうございます」「ありがとう! 美香ちゃん、いい子だねえ。凛とした美人なのに纏う空気がほわほわ、うちのジジババたちがコロッとなるわけだよね」ジジババ……蓮司様との血のつながりをこんなところで感じてしまったわ。「それで美香ちゃんにお願いがあるの」お願い?「和美様が了承なされば問題ありません」「うんうん。その対応、すっごくいいね。うちの蓮司君が……「和司さん」……はーい、用件ですよね。雅美さんの帰国に合わせて菊乃井でパーティーをすることになったの」武美様が「菊乃井で?」と首を傾げた。「家出は継続中だからね。実家に帰らせていただきますって、家出の定番でしょう?」「雅美ったら……和司さんも、美香さんの料理で釣ったのね?」呆れたような和美様の言葉に『バレたか』とでも言うように和司様がペロッと舌を出した。そういう姿も様になるのだけれど、蓮司様のお顔でやられるから……バグりそう。 聞けば、雅美様は和司様を筆頭に一族の皆様から送られてくる料理の写真を見て日本食が食べたくなり、このたび帰国を決心なさったそう。和美様が仕方がないというようにため息を吐かれたけれど、「お願いできるかしら」と仰られたので私は少し早いけれど菊乃井本邸に異動ということになった。  * 「うちの両親が本当に申しわけない」引っ越しを早めてしまったお詫びに人を送ると和司様は言ってくださったけど、それが蓮司様とは思わなかった。お会いするときの蓮司様は大体がスーツ姿で、部屋着もきちっとした感じのものを好んでいらっしゃる。でも今日はジーンズにTシャツ。体を動かすという意味での選択だろうけれど、見慣れない姿は少しだけ目のやり場に困る。「どうした?」 「
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-27
Baca selengkapnya

32.

パーティーは私の予想と違った。『家族の集まり』と聞いていたのだけれど、家族の定義を花嶺家と同じにしてはいけなかった。和司様の仰った通り、和美様のところにきた方々は多くて、私に気づくと「美香ちゃん」と笑ってくださって、確かに料理を歓迎していただける雰囲気。でも、和美様のところにいらっしゃるのは毎回5人程度で、それがこうして一同に揃い、それぞれが配偶者や子どもを連れていらっしゃればかなりの大人数。 「菊乃井家はパリピなのよ」笑いながらそう教えてくださったのは、菊乃井邸に30年お勤めの家政婦である米沢さん。もう一人勤続28年の佐野さんがいらっしゃって、菊乃井邸の家政婦の需要は足りているのではないかと、私のために雇用を捻出させてしまったのではないかと思ったら、家政婦の増員は世代交代を視野に入れてのものだと聞いてホッとした。 「さあさあ、これが最後ですね」流石勤続30年のベテラン。いろいろなことをお話ししてくださる傍らで、ものすごいスピードで料理を作っていく。電子レンジもコンロもフル稼働。気がつけば使った鍋などの調理器具が洗われていて、この手際の良さを見習わなければいけないと思うし、このレベルを求められていると思うと気合いも入る。 「さて、料理の準備は終わったし、次は美香ちゃんのお手伝いをしないとね?」「私、ですか?」和美様に頼まれたことだと、米沢さんは和美様から頼まれたのだと私の手を引いて近くの部屋に連れていった。和室を改装したような、モダンという言葉が似合う洋間。数ある客間の一つであろうそこには、品の良いワンピースのかかったトルソーがあった。「美香ちゃん、急いでこれに着替えて」「え? これは?」「和美様からの贈り物。私も選ぶのをお手伝いしたの、若い子の服を選ぶのはやっぱり楽しいわね。和美様と二人で、ああでもない、こうでもないって、気づけば2時間もたっていたわ」贈り物……私に&h
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-27
Baca selengkapnya

33.

「美香さん!」和美様に頼まれたと朋美様が迎えにきてくださった。会場に行くのを私が気後れすることを見越していらっしゃったようで、見透かされていたことに気恥ずかしさを感じた。「うわあお」上から下へ、下から上へ。キラキラした目で朋美様に見られて背中がくすぐったい。 「すっごくキレイ。米沢さん、グッジョブ!」「ありがとうございます、朋美様」朋美様のサムズアップに、米沢さんもサムズアップで応えた。 「私がエスコート役なんて、すっごい役得! 男共のうらやま視線を独り占め、くうう、快感!」「ほほほ、そうでございますね。武美様、雅美様と武司様はご到着なさったのですか?」「さっきね。武司兄さんはお兄まっしぐら。ぶんぶん揺れる尻尾が見えたよ」「半年も離れていらっしゃいましたものね」武司様の蓮司様激ラブは、家政婦である米沢さんもご存知の、この一族およびその関係者の常識のようだわ。 「お母さんはひたすら騒いでる。美香さんに会いたい、和食美味しい、ビールはやっぱり日本よねって、なんかすごく情緒不安定なんだ」そう言いつつも、朋美様は雅美様と久しぶりに会えたことが嬉しいのだろう。……羨ましいと思うのは、さっきお母様を思い出したせいだろう。 「私もご挨拶したいです……私です、すみません」畳んで置いておいたエプロンの上で震えていたスマホを手に取る。……華乃?「電話なら席を外すね。10分くらいしたらまた来るよ。米沢さん、行こう」「ありがとうございます」朋美様と米沢さんが出ていったところで通話ボタンを押す。「はい」『桔梗、面倒なことになったわ』……面倒?『うちに花嶺辰治が来たの』「父が? なんで?」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-28
Baca selengkapnya

34.

……どうして? 「いやあああああああっ!!」――蓮司様。 彼女に名前を呼ばれるといつも胸の奥に静かな波が広がった。女性にしては少し低めの、落ち着いた響き。その声がゆっくりと言葉を紡ぐたび、内容は朝食は何を食べるかのような他愛のないことだけど、日常の中のありきたりなことは俺の周りの何かを柔らかく解いて、気づけば口もとが緩んでいた。耳に触れるだけで、肩の力がふっと抜ける、ただ寄り添うように届く彼女の声が好きだった。 その声で、いま彼女は悲鳴をあげている。 「こっち来ないで!」その声で、俺を拒絶している。 「どうし……「いやあああああああっ!!」」言い終えぬ間に涙を流していた彼女の瞳は恐怖に染まり、まるで身を護るように後ずさりする。どうして俺に怯えるんだ? 「退いて!」武美がぶつかってきた衝撃で我に返る。「朋美、そこの馬鹿とこっちの馬鹿を早く外に出して。誰か私の鞄を持ってきて……早くしなさいっ!!」!武美の厳しい声が鞭のように俺の体を打ち、体が動くようになる。「お兄、こっち!」それを感じたのは彼女の悲鳴で集まった他の人たちも同じで、全員がゆっくりだけど動き出す。朋美に強く腕を引かれて出口に向かい、動く人波を分けながら進みつつ、後ろを振り返る。俺の目に入ったのは俺に恐怖を向ける彼女だった。 部屋を出たものの、その場を離れる気にはならなかった。いや、正確には何をしていいか分からなかったから行き先がなかった。ただぼーっと閉まったドアを見ていて、カチャッとドアの開く音がしたとき腕時計で時間を確認したのは、これが俺の癖だからなのだろう。さっき彼女の悲鳴を聞いたときも、俺はやはり時間を確認
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-28
Baca selengkapnya

35.

誕生日、俺は大学時代の友人たちに誘われてホテルで飲んでいた。もう大々的に祝う年ではないが、俺の誕生日というのは利害がある付き合いの奴らを集めるのに役立つ。仕事と家の話を中心に、時に思い出話を混ぜて2、3時間過ごす。そんな予定でいたが、あらかた酔いがまわったところで一人が同じホテルで開かれているパーティーに女が来ているから呼ぼうということになった。男だけで飲むほうが気楽で好ましいが、こういうことはよくある。盛り上がっている雰囲気に水を差すのも無粋なので黙っていると、個室に女たちが入ってきた。その中に凛花がいた。 凛花は子どもの頃からしつこく俺に付き纏っていたが、ここ数年そのしつこさが増していた。他の者なら、強引にこられれば多少痛い目にあわせて追い払えばいいが、吉川家の人間なので気を使っている。彼らが持っている桐谷グループの株を売る口実を与えないためだ。 吉川凜花の父親はいま兄の息子である甥と次期当主争いをしており、まとまった資金を得るために持っている桐谷グループの株を売りたがっている。それを高値で買うという海外資本の会社もあるのだが、俺たちはそこに買われると厄介。吉川家の現当主の方針で売ることはできないでいるので、売る口実を作らせないように注意する。面倒だけど無難にやり過ごさなければいけない、俺にとって凛花はそういう存在だった。好意はない。俺はもちろん、吉川凜花のほうも。彼女にとって俺は自分をよりよく見せるアクセサリーでしかない。この日もスマホを片時も離さず、SNSに何かを投稿しては何人が見た、どう評価されたと騒いでいた。 あの夜、体の異変を感じたのは突然だった。面倒を避けるため吉川凛花と距離をとることに気を取られ、異様なほどの体の熱さを感じ、性的な衝動を煽る、いわゆる媚薬を盛られたと気づく始末だった。誰が入れたのかは分からない。そもそも適当にその場にあったものを飲んでいたから、俺を狙
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-29
Baca selengkapnya

36.

凛花はあの夜、いなくなった俺を探してあの部屋まで来たのだと言った。 武司が部屋から出てくるのが見えて、部屋の前にいたら突然扉が開いて女が出てきて逃げ去って、中から俺のうめき声が聞こえたから心配になって部屋に入ったところを俺に襲われたのだと言った。 薬を盛られたから。 頼んでいた女と思ったから。 俺にも言い分がないことはないが、彼女からしてみたら暴力を受けただけ。 しかも初めて。 「とりあえず、凛花さんを呼びましょうか」 母さんの言葉にそうするべきと分かっていたけれど、考えたくない答えが出そうで俺は何も言えなかった。 * 凛花を連れてきたのは千佳叔母さんだった。 「お義姉さん、凛花さんをお連れしました」 「蓮司さんっ!」 千佳叔母さんを押しのけるように凛花が部屋に入ってくる。 その明るい表情に俺に怯えた彼女の姿が重なり、考えたくないのに、俺が彼女を傷つけたのかもしれないという可能性が高まる。 「凛花さん、あなたを呼んだのは私よ」 「雅美小母様、ごめんなさい。でも変な騒ぎが起きて、蓮司さんは走っていなくなっちゃって、それで戻ってこないから寂しくって。あの悲鳴は? ゴキブリでも出たんですか?」 「似たようなものね。座って頂戴、あなたに聞きたいことがあるの」 首を傾げつつも母さんに示された椅子に凛花が座ったところで――。 「単刀直入に聞くわ。あなた、本当に蓮司に乱暴されたの?」 母さんの言葉に凛花は驚き、俺を見た。 「なんで……あのことを、言うなんて……」 焦った目……凛花の目に浮かんでいるのは紛れもない焦り。 まさか俺がそれを言うとは思わなかったのだろう。 何しろここまで一切を誰にも言わず、一族に反対されても大した説明なしに凛花と結婚すると俺は言い張っていた。 「答えが、出たな」 ――出てしまった。 凛花から目を背け、立っていることもままならず、壁に寄り掛かって深く息を吸った。 「そうです。私は蓮司さんに乱暴されました。嘘ではありません!」 凛花が持っていた鞄を漁り、あのICレコーダーを出す。 あれに入っている音声を思い出して血の気が下がる。 顔色が目に見えるほど変わっていたのか、俺を見る凛花の目が満足気なものになったが――。 「武美」 母さんの声に、武美が凛花を背後から羽交い絞めにする。 「痛っ! え
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-29
Baca selengkapnya

37.

「ゴキブリが出て美香さんったら吃驚したみたい」祖母さんの言葉に花岡社長は笑いを返す。「嘘は結構ですよ。美香はゴキブリは丸めた新聞紙で瞬殺する肝の持ち主です。滅多なことでは悲鳴などあげる女でもない、しかもあんな……」花岡社長が憎々し気に唇を噛む。この様子……もしかして彼は……。「俺と美香が電話をしているとき、入ってきたのは誰なんです?」この男、知っている? 家族の顔を見れば、同じように思っているようだ。でも違えば彼女に……してしまったことを勝手に話してしまうことになる。何と言っていいか分からない。 「身内だからとそうやって庇うなら結構。菊乃井様、東国との契約はこの場で終了とさせていただきたい」「花岡さん!」「信用できない相手に彼女を預けられない。連れて帰ります、美香はどこです?」「失礼いたします。武美様、美香ちゃんが目を覚ましたのですが……どうなさったのです?」タイミング悪く入ってきた米沢さんに、武美が苦笑を返してため息を吐く。隠せることではない、か。 「花岡社長、ご案内いたします」「ありが……「あ、お待ちください」」部屋を出る武美についていこうとした花岡社長を米沢さんが慌てて止める。「武美様だけでいかれたほうがよろしいかと……」「どういうこと?」「あの、目は覚まして意識ははっきりしているようなのですが……美香ちゃんの様子がおかしいんです」   *  「あなたは、誰ですか?」あれから1週間ほどたって、ようやく顔を合わることができた彼女の最初の言葉はこれだった。 解離性健忘。あの日、武美の紹介で来てくれた心療内科医の出した彼女の病名。彼女は自分が誰かも忘れてしまった。俺も見る知らない人を見るような目にショックを受けつつも、あの夜を完全に忘れていることに安堵もしている。視界の端で武美がホッとしているのが見えた。俺相手でもこうだったから安心したのだろう。 「桐谷蓮司です」「花嶺桔梗です」 花嶺桔梗。それが東国美香と名乗っていた彼女の本名。花嶺家と言えば欧州との貿易で名をあげた先祖を持つ名家。花嶺家の現当主、花嶺辰治には二人の娘がいる。姉の花嶺桔梗は異母妹の花嶺桜子を虐め、夜な夜な男と遊び歩く悪女。それを、俺は花嶺桔梗の婚約者であり、俺の大学時代の同期である錦野柾から聞いていた。 
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-30
Baca selengkapnya

【第二章】1

花嶺桔梗。 これが私の名前だと教えられた。年齢は28歳だと教えられた。名前も、年齢も、本来なら人に教えられるものではない。自分の口で言えて当たり前のはずなのに、どうしても思い出せない。免許証や保険証を見せられて、周りの言葉が正しいのだと理解はできた。私はそれらが身分を証明するためのものだと知っているから。28年間の人生で積み上げてきた知識は、確かに私の中に残っている。それなのに、この28年間を生きてきた『私』は私の中のどこにもいない。   私は解離性健忘という病気らしい。耐え難い何かから心を守るために、心が自分自身を切り離してしまうのだと説明された。心身にそんな仕組みがあることを『私』も知らなかった。きっと、これまでの人生では必要のない知識だったのだろう。 「人生のすべてを忘れるなんて、『私』は心が耐えきれないほどの不幸だったのでしょうか」 そう尋ねたとき、心療内科医の先生は静かに首を振った。 物事は複雑に絡み合うから、原因がひとつでも記憶が丸ごと抜け落ちることはある――と。 長い文章を書いて、間違いに気づいて修正して、 修正したら矛盾が生まれて、 矛盾を直そうとしているうちに、何が正しいのか分からなくなって、 「もう全部消してしまえ」と、全消しした。それが、いまの私の状態らしい。 私は妊娠している。花嶺桔梗の情報が書かれた母子手帳もあるし、何より自分の体のお腹の膨らみを見れば妊娠していることも分かる。子どもについては良かったも、悪かったもない。母子手帳に挟まっていた、妊娠中絶手術に関する資料。これをもらっても中絶をしなかったから私はまだ妊婦なわけで、その事実から『私』がこの子についてどう思っていたかは分からないけど、『私』はこの子を産もうと考えていた。それにもう、嫌も何もない。中絶できる期間を過ぎている。もう産むしかないわけで、私は『私』の判断に賭けるしかないのだ。子どもはもう直ぐ生まれてくる。その"もう少し”で心の準備ができるかは不安だけど、私の置かれた環境では何とかなるんじゃないかなと思える。   *  「変な顔をしてどうしたんですか?」蓮司さんが何か渋いものを食べてしまったような顔をして病室に入ってきた。端正な顔立ちだから、蓮司さんはそういう表情でも様になる。桐谷蓮司さ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-30
Baca selengkapnya

39.

「困ります!」廊下の向こうで看護師の女性の慌てた声がして、蓮司さんと顔を見合わせて、同時に扉のほうを見たとき――。「桔梗」突然扉があいて、中年の男性が入ってきた。誰? 「花嶺辰治だ」「……ああ」花嶺辰治は花嶺桔梗の父親、つまり私の父親。……それにしても。 「父親に向かってなんだその目は」「……申しわけありません」本当に、事実がそれに相応する感情を湧かせるとは限らないと実感する。父親という事実を知っても、父親だからと慕う気持ちは湧いてこない。 心療内科医の先生によると、好き嫌いという感覚は記憶を失おうと変わらないらしい。人間の本質は変わらないからと言っていいとのことで、ノックもなく、私の顔も見ずにスマホを眺めながら歩いてくるこの人を私は好きになれない。だから、『私』もこの人がきっと嫌いだった。 「相変わらず生意気だな」相変わらずだというこの人の中で、私と『私』は同じ。いま私が向けている感情を『私』もこの人に向けていたのだろうという証。 感情の問題は難しそうで、意外と単純そうだ。嫌いなものは、やっぱり嫌い。好きなものは、やっぱり好き。   *  「ノックくらいしたらどうですか?」私たちの会話に割り込んできたのは蓮司さん。蓮司さんに気づいて、花嶺辰治は私に向けた苛立たし気な表情を驚きに変えた。  「ど、どうしてここに?」「面白いことを言いますね」面白いことと言っているけれど、口角はあがっておらず、声は平坦で目は冷たい。 「私は彼女の婚約者ですから。父親気分で来ているあなたに『どうして』と問われる理由がありません」「……ん、ふっ」 父親気分、とても上手な表現で笑ってしまった。 記憶喪失とはある意味で便利だ。誰に対しても、漏れなく感情が一度フラットになる。好きも嫌いも、過去の積み重ねがないぶん、まっさらな状態から始められる。要は『私』を勘当していても、私が入院すると連絡したときに「大丈夫か?」と一言気に掛ける言葉をかけて“父親らしさ”を見せてくれれば、そのあとがどうであれ父親であるという事実と相俟ってこの人に対して「父親だから」という気持ちが芽生えたかもしれない。 けれど、電話をかけたときの第一声は「勘当した娘が何の用だ」で、入院に必要な家族の署名を頼んだら「知らん」の一言で電話を切れた
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-31
Baca selengkapnya

40.

「あっ、あー」 抱っこしながら体を揺らすと、腕に抱いた赤子が機嫌のよい声をあげた。 桐谷誠司。 いま桐谷家はこの生後6ヶ月の誠司に支配されている。 特に、彼得意の「あっ、あー」については、蓮司さんはパパ、お義母様はバーバ、誰を呼んでいるかの熱い議論を交わしている。私としてはママじゃないかなと思っているのだけど……。 「何か楽しいことがあったのか?」! 「蓮司さん」 振り返ると蓮司さんが戸口に立っていて、口角をあげて私たちを見ていた。口角が上がっている。WEBミーティングと聞いていたけれど、なにか良いことがあったのだろうか。 「ミーティングは終わりですか?」「ああ」頷きながら蓮司さんが手を差し出すと、誠司が早速そっちに行きたいって暴れる。誠司はかなりパパっ子だけど、それを蓮司さんはとても喜んでいる。相思相愛、蓮司さんの手に誠司を委ねる。  「今週の金曜日、帰りが遅くなる。取引先のセレモニーに呼ばれた」蓮司さんの言葉に思わず顔が強張る。「どうした?」そう尋ねる顔には何かを探るようなものはなく、これは自分の邪推で、何でもないのに私が穿った見方しているのだと痛感させられた。でも……。「あの……っ」スマホの着信……蓮司さんのスマホだ。 「すまない、ちょっと待っててくれ……なんだ、武美?」 ……武美さん。「ああ、読んでくれたか? そう、今週の金曜日……うん」やっぱり、セレモニーには武美さんを誘っていたんだ。「無理? ……いや、急にごめん。いや、大丈夫。武美が無理なら秘書に頼むから」まずは武美さんで、武美さんが無理なら秘書。「え? まあ、急だからな。ああ、うん。まあ、それなら最悪、朋美に頼むから」最悪が、朋美さん?それなら、声をかけられない私は何だろう? 「ああ、じゃあな」 電話を終えたスマホを蓮司さんはポケットにしまう。 口角が上がっていて、満足気。多分、問題が1つ解決したから。でも、武美さんと話せたからかもしれない。 気の知れた、リラックスしたやり取りだった。 蓮司さんと武美さんは幼馴染。武美さんの弟の武司さんと蓮司さんが同じ歳で仲が良く、都内にある日本有数の進学校で蓮司さんと武司さん、そして同じ学校で2学年上だった武美さんは目立つグループで、同じ学校に通う人たちは3人を憧れの
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-31
Baca selengkapnya
Sebelumnya
123456
...
17
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status