Semua Bab 知らないまま、愛してた: Bab 41 - Bab 50

164 Bab

41.

1年にも満たない私の記憶の中で、蓮司さんに何度「無理はするな」と言われただろう。妊娠中や出産直後は、「無理はするな」は私を気遣ってくれる蓮司さんの優しさなのだと、「無理はするな」という言葉に素直に頷けた。何でとか、何のためにとか、無理な何かが分かっていたから。 でも、いまは?何が無理なのだろう? 子どもは生まれた。もう妊婦じゃない。誠司が生まれて6ヶ月もたった。出産後の回復は順調って言われたし、生理がくれば完全ではなくてもほぼ妊娠前の体に戻ると言われていた。その生理は、もう3ヶ月前に来た。 何もさせてもらえないわけではない。家の中でのことなら「無理はするな」という言葉でダメとは言わない。「無理はするなよ」と心配してくれるのは同じだけれど、私の希望を受け入れてくれる。 家に閉じ込められているわけではない。買い物だって、「無理はするなよ」と心配されて誰かが一緒にいくけれど自由に行っている。テレビをみていきたいお店があれば、蓮司さんが休みを取って一緒にいってくれる。 会社や桐谷家の対外的なお付き合いのときのことだけ「無理するな」と言われる。そして「武美がやるから大丈夫」と言う。武美さんが無理なら、「秘書がやるから大丈夫」。秘書さえも都合がつかない場合は「朋美が頑張るから大丈夫」。 頑張れば私だってと思うのは、私の奢りだろうか。   *  「ねえ」聞いたことのない声に振り返ると、見たことのない若い女性がいた。そういえば朋美さんが今日は友だちと家で課題をやると言っていた。彼女がその友だちだろうか。「どうかしましたか?」「朋美の部屋が分からなくなったのだけれど、どこかしら?」やはり朋美さんの友だちだったらしい。 「桔梗さん?」朋美さんの部屋のドアをノックすると朋美さんが顔を出す。案内してきた子が私の脇を抜けて部屋の中に入り、それで察したのか朋美さんが私に礼を言った。部屋の中は賑やかで、案内してきた子の他にも何人か来ているみたい。「よければ焼き菓子を持ってきましょうか?」お義父様のリクエストで午前中にお菓子を焼いた。作っている最中にお義父様が顔を出して、食べたさそうにしていたから食べるかと聞いたら高速で首を横に振られた。桐谷家は食べられるものの管理が本当に厳密だ。全員が揃った場できっちりと
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-01
Baca selengkapnya

42.

「朋美、今週の金曜日の夜の予定は空いているか?」「どうして?」取引先のセレモニーに呼ばれたのだと説明したら、朋美は奇妙な顔をした。「私?」「ああ。武美は外せない勉強会があるらしくてさ」「武美ちゃんねえ……武美ちゃんが無理なら秘書を連れていけば?」「そう思ったんだけど、武司にやめとけって言われた」なんだ?さっき武司にも「武美が無理だから秘書ってか……やめたほうがいいぞ」と言われた。 「お兄、マジで分かってないの?」「何が? 言いたいことがあるならハッキリ言え」「それじゃあ言うけど、桔梗さんと離婚するならお兄がこの家を出ていってね」「はあ?」「当たり前でしょう。桔梗さんは食の女神、誠ちゃんは癒しの天使。要らないのはお兄だけじゃん」「いや、そもそも離婚ってなんだよ」「離婚されるのも時間の問題だって言っているの。武司兄さんだって気づいているのに、なんで気づかないかな」   *  出社して武司に朋美とのやり取りを話したら、「マジで言ってる?」と武司に呆れられた。 「お前さ、イベントには桔梗さんじゃなくて武美や秘書を同伴しているだろう?」「当たり前だろう」 彼女は父親の花嶺辰治がきたあの日、彼女は頭痛を訴えて意識を失った。心療内科医に相談したら、何か記憶を揺さぶることがあったのかもしれないと言われた。彼女が病気、全てを忘れてしまった理由はあの夜だろう。だから、彼女が記憶を戻すなら、そのキッカケはあの夜に関係することに違いない。 彼女が全てを思い出す日がくることを、覚悟できていた……はずだった。でも、心のどこかで彼女はずっと思い出さないんじゃないかなと思っていた。あの日、彼女が思い出しかけたと知って、心底怖くなった。 俺は、彼女を……桔梗を愛している。 桔梗は、東国美香とは違う。東国美香という女性は、彼女が忘れてしまった人生で体験したことの積み重ねで出来た女性で、その全てを忘れてしまった桔梗が東国美香と同じわけがない。でも性質というか、人格というべきコアな部分は同じで、東国美香にあった俺が愛らしいと思う部分は桔梗にもあって、俺は東国美香に恋したのと同じように桔梗にも恋をした。毎日、桔梗に恋してる。桔梗の好ましい部分を見つけては新たに恋して、昨日の桔梗よりも今日の桔梗を愛している自信がある。 愛する
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-01
Baca selengkapnya

43

「桔梗、大丈夫か? 何か手伝うか?」台所で動き回る桔梗に声をかける。正直に言えば俺が台所で戦力になるとは欠片も思えないが、だからと言ってボーッと見ているのも気が引けてしまう。「大丈夫です。それよりも誠司の様子はどうですか?」「ぐっすり寝ているよ」俺の言葉に、良かったと笑う桔梗の顔はとても楽しそうだ。彼女の顔に陰りがなくなったことは喜ばしいが、これを引き出せたのが朋美や母さんであったことに悔しさを覚える。 「お兄、すっごくいい匂いがするんだけど」「食いたいならお前も参加しろ」「今日の参加者の前で食事をする勇気なんてないよ」ラスボスから始めず村人Aとの会話から始めなよと、ぼやく朋美に苦笑しつつも内心は同意する。 ―― お客様を選んでうちのお茶会に招待して、少しずつ桔梗さんという人を知ってもらいましょう。これが母さんの今回の計画。 桔梗には素行が悪いという噂と、婚約者のいる俺を寝取ったという不名誉な噂がある。桔梗を表に出しつつも、この噂を始めとして話題を完璧にコントロールし、なおかつ桔梗にとって好ましくないであろう人物を近づけない方法。それが桐谷邸でのお茶会の開催。参加者は俺たちが厳選し、桐谷家の当主である祖父・桐谷勝司の名前で招待状を出した。ここで俺たち夫婦を紹介し、少しずつ桔梗の人柄を知ってもらおうという作戦。祖母さんが威圧し、母さんが睨みをきかせている会場で桔梗に無礼な態度をとれる度胸のある者はおらず、その状態で桔梗がもてなせば絶対に堕ちるというのが祖父さんと父さんの意見だった。 社交には3つの派閥がある。財界・企業・投資家を中心としたこの国の金を握る経済界。国会議員や官僚その他に地方の名家を中心とした、この国の伝統や権威を背景にした政界。芸術家や大学教授など精神的権威を持つ文化界。この3つが基本的には対立し、均衡を保っている。 我が桐谷家は経済界の頂点に立っているので、経済界中心の集まりは支配しやすい。政界については、ここは経済界とは協力したり対立したりであるが、最近の情勢では協力の方向にあるから比較的楽に攻略できるだろう。一番攻略が難しいのは、経済界・政界と違う価値観で動く文化界。簡単に言えば、金や政治では動かない連中の集まりだ。 桔梗のデビューともいえる今回、母さんは文化界の重鎮を多く招待した
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-02
Baca selengkapnya

44

「少し失礼します」 それに気づいたのは桔梗のほうが早くて、彼女は俺から離れると少し急ぎ足で一人の女性のもとに向かった。 桔梗の唇の動きから、掛けた言葉は『大丈夫ですか?』。 声をかけられた女性はさっきまでの困り顔に安堵を浮かべる。 桔梗が行くのが見えたのだろう。 母さんや祖母さんは動かず、それまで通り、そこで談笑を続けていた。 30分ほど前から、こんなことがよく起きている。 異変を感じ取るのは桔梗のほうが早く、あちこちに行ってトラブルを解決し、そして俺のもとに戻ってくる。 解決できたという顔は誇らしさよりも大事でなかったことを安堵していて、そんな桔梗の姿を俺は誇らしく感じる。 数分前よりさらに俺を惚れさせる桔梗。 そんな彼女が当たり前のように、俺のところにまっすぐ戻ってくる姿に嬉しくなる。 「さっきからよく動き回って」 「よく気がつくお嬢さんね」 「気遣いも細やかで、蓮司さんもいいお嫁さんをもらいましたね」 「はい、私には勿体ない女性です」 俺たちの会話が聞こえたのだろう。 少し離れたところにいた、過去に自分たちの娘を俺の嫁にと進めてきた夫婦が悔しげに顔を歪める。 今日この場で桔梗を貶めるのは無理でも、いつかどこかでと桔梗の悪いところを探していたのだろう……ふんっ。 「花嶺家のご長女の桔梗さんといえばあまりいい噂を聞かなくて、あの明美さんのお嬢さんがと思ったけれど」 「どうしてこんないい子にあんな噂が流れたのかしら」 「それは気になりますね」 好奇心とは人を動かすエネルギーであり、ここに集う文化界の人たちのその好奇心はとても大きく、探究心は並外れている。 噂には、それが流れて得をする者と損をする者がおり、誰が何のためにと考えると、“誰が”は得をした者であることが多い。 桔梗の噂の場合、前妻の娘である桔梗が貶められて得をしたのは、元は愛人で花嶺辰治の隠し子である娘の桜子を連れて後妻に収まった花嶺玲子。 ただこの噂は約10年前から流れていて、いまはその桔梗が俺の妻で在ることから、噂はあらゆる方向に勝手に自走し、元を辿るのは俺たちでは容易ではない。 それに対して文化界の方々はそういうことが得意である。 そして、調べて得た結果を誰かに言いたいと言う欲求は多くの者に共通して
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-02
Baca selengkapnya

45

錦野家は資産家であるが、その資産を得た方法があまり褒められたものではないため国際的な評価が特に低い。花嶺家は貿易で名をあげ、諸外国とも交流があり、さらに花嶺家には錦野柾と釣り合う年齢の娘の桔梗がいて、錦野家にとってよい条件の相手だった。 錦野家の当主、錦野柾の祖父である錦野政一は多少汚い手は使ってもその商機を見る目は確かであり、だからこそ桔梗が幼いうちに孫の婚約者として確保したかった。真の狙いは桔梗の母親。桔梗と花嶺桜子は母親が違い、桔梗の母親の花嶺明美は西園寺家の娘。 西園寺家は人徳があり発展途上国に対して積極的な支援を行うなど慈善家として知られており、それは錦野家を助けるものだった。しかし、錦野政一が目をつけたのは花嶺明美の内助の功。どんな人物だったのかは、母さんによる「桔梗さんの母親よ」の説明でなんとなく想像がついた。 桔梗がいると、それが家政婦という立場でも妻という立場でも全く同じ、彼女がいるだけで家が安心できる場所になる。家政婦とは桔梗に会うまでは代わりに家事をしてくれる人というイメージだったが、「政」という字のつく仕事、家に秩序をもたらし、家を管理する仕事なのだ。桔梗がいる家に帰ると、俺はなにもしない。桔梗から与えられるもので満足できてしまう、それ以上に願うことなど思いつかない。任せて、委ねて、何も言わなくても俺は幸福で、リラックスして安心感に浸れる。そうできるように桔梗がしてくれていて、桔梗のおかげで俺は家の外でいいパフォーマンスができている。 そんな桔梗の母親、花嶺明美の内助の功はあの花嶺辰治を時代の寵児とまで言わしめた。俺には到底信じられないが、あの花嶺辰治が、その商機を見る目には驚かされると口々に称えられ、社交においては経済界と文化界を結ぶ架け橋だったという。花嶺明美に支えられていることに花嶺辰治は全く気づいていなかった。美しいだけで目立った才覚のない凡庸な女だと花嶺辰治は妻を笑い、花嶺辰治は何人もの愛人を抱え、その一人がいまの妻である花嶺玲子だった。生まれつき体の弱かった花嶺明美は若くして亡くなり、すでに花嶺辰治との間に子をなしていた花嶺玲子が後妻に入った。花嶺玲子は一般的な家庭の出だが、その美貌と卓越した話術で銀座の女たちの中でもトップクラスだったらしい。なによりも花嶺辰治が花嶺玲子を望んでいたた
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-03
Baca selengkapnya

46

「婚約破棄した相手が実は、は人気の設定。この場合、元婚約者はやり直してほしいと追いすがってくる」 「蓮司、そんなジャンルも読むのか?」 先日、初めて読んだ。 「武美の件で桔梗を不安にさせたとき、勉強しろって父さんに渡された。女はすごいぞ。愛想尽かしたらそれで終わり、冷徹なほど容赦なく、未練の“み”の字もない」 「女がすごいなんて、うちの一族を見渡せば分かるだろ」 確かに。 「朋美に、男は母親に似た女を選ぶのだと笑われた。もちろん桔梗になら尻に敷かれても足で踏まれても構わないがな」 「同じことを和司小父さんが言ってた、だから結婚したんだって。話が逸れたけれど、桔梗さんはすで結婚している。夫は桐谷蓮司、桐谷家の後継者。どれだけ口惜しかろうと錦野家は指をくわえているしかない相手だ」 「それを理解していたら、桔梗に会いたいなんて言わないだろう?」 俺の知る限り、錦野柾はプライドが高く、潔癖な完璧主義者なのか僅かでもケチがついたものは受け入れない。 潔癖で、完璧主義……そこがずっと気になっていた。 花岡社長は桔梗と錦野柾の婚約破棄の理由が錦野柾の心変わり、花嶺桜子の略奪愛だと説明したが、あの日俺が桔梗を穢したことが原因だったのではないかと俺は思っている。 そうなると、錦野柾に婚約破棄の選択をさせたのは俺となり……桔梗が錦野柾を愛していたなら俺が……全ての原因になる。 「婚約者以外の女、しかも婚約者の妹と、あんなあからさまに不義を働いていて今さらだろう」 30歳を過ぎて結婚したり子どもが生まれたという友人が増え、独身者は彼らに結婚をしないのかと聞かれることが増えた。 錦野柾は、婚約者が有名な『悪女』だったから結婚するのはやめたらどうだと、代わりに花嶺桜子と結婚すればいいと言われていた。 花嶺桜子と、と言われるのは錦野柾はいくつものイベントに花嶺桜子を連れてきたからで、頻度も高く俺でさえも花嶺桜子の顔を知っていたくらいだった。 錦野柾は花嶺桜子を『将来の義妹』と言っていたが、二人の間に漂う男女の空気にそれを信じる者はいなかった。 花嶺桜子は、俺の好みではないが、男受けする容貌をしている。 銀座でトップクラスだった母親によく似て、小柄で幼く見える顔立ちは男の庇護欲を誘い、馴れ馴れしいスキンシップは男に甘えられていると思わせる。 肉付きのいい
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-03
Baca selengkapnya

47

桔梗と花岡社長の関係については調べた。男の嫉妬は女に向かうから、見当違いの俺の嫉妬で桔梗を傷つけないため、桔梗と花岡社長の関係については調べておいたほうがいいと祖母さんに言われたからだ。 調べてみると桔梗と花岡社長は確かに仲が良かったらしいが、年頃の男女にしては珍しく性愛めいたものはなく、二人の間にあったのは友情だったという。但し、あえて名前をつけるなら『友情』という雰囲気。互いに互いしかおらず他の者は信じられないといった排他的な雰囲気が二人の間にはあり、友情でくくるには大きすぎるが、だからといって恋人になる前のような雰囲気は一切なかったという。二人は大学3年生のときに同居を始めた。花岡社長はあの通りのルックスなので女にかなり人気があり、二人の同居のニュースは大学でかなりの騒ぎになり、大勢が二人の同居理由を探った。その結果、分かったのは異性からのアプローチを避けるため。二人とも異性からのアプローチに困っていた。桔梗のほうは困るというレベルを大きく超えていて、大学2年のときに同じ学生アパートの男子学生に帰宅したところを襲われている。当時隣人だった花岡社長が助けたので大事はなかったが、二人の同居のキッカケはそれだったらしい。それでも二人は同居。二人は周囲の思惑に反して恋人同士にはならず、家族のような関係でいた。そのことからかつ桔梗には花岡社長の生き別れの妹という説さえも出ていたという。友情。――あの子を返せ!桔梗にとって花岡社長は感情の関係。桔梗の記憶がなくなり花岡社長は桔梗と距離をとるようになった。桔梗は花岡社長に安心感を抱いていたが、それは目が覚めた直後の本能的な反応だったようだ。時間が経つと記憶がなくて整合性のとれない感情は薄れていき、いまの桔梗にとって花岡社長は『大学時代に仲よくなったらしい人』。かつては子どもの後見人にと、そこまで信頼し合っていた友人だったというのに……俺はそんな存在を互いから奪ってしまった。 「花岡社長にアポを取ってくれ」 桔梗は俺にそれを奪われるまで処女だった。あれだけの女性だ、それまで誘いが一度もなかったとは考えられない。最初は花岡社長への思いからだと思っていたが、調べれば調べるほど桔梗は彼に対して女の情はない。それなら、やはり……錦野柾のために純潔を守っていたのではないかと思ってし
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-04
Baca selengkapnya

48

錦野柾が桔梗に会おうとすれば、その理由はやり直しを求めるものだと普通は思う。でも、それならばなぜそれを桔梗の夫である俺に言うのか。仮に桔梗に連絡先をブロックされていたとしても連絡の手段は他にいくらでもある。桔梗が錦野柾とやり直すなら俺との離婚は必須で、その連絡を俺経由でするというのは失礼な話でしかない。 「桔梗に連絡をしたいというのは口実で、俺に会うのが目的の可能性がある」「それなら普通に会いにくればいいだろ?」「目的は、恐らく脅し。脅されたくないならその対価、それを準備しておけってことだろう」「脅しって……吉川凜花か」「ああ。あの音声で俺を脅そうとしている可能性が高い」 凛花から取り上げたICレコーダの中にはあの夜の記録があり、その中の声は家の伝手で分析され、俺と桔梗であることは確認された。その結果が出る前に「どう見たってそういう女ではない!」と武司が武美を筆頭に女性陣に詰め寄られていたが、その結果が出ると文字通り袋叩きにされていた。しかし袋叩きは「蓮司の好みのど真ん中だったからママが気を利かせたとばっかり」という武司の言葉で止まった。みんな何かしら思うことがあったようで、俺に微妙な視線が向いた。あの場は祖母さんが「今さらよ、先を考えましょう」で無理やりおさめた。 あの音声データをどうやって録ったのかについては、凜花が白状した。企みがバレたことで俺と結婚する作戦が失敗したからだろう。もちろん、白状して無罪放免にはしていない。俺はプライベートを盗聴され、そうして得た情報で俺は凜花に脅されていたと吉川家に訴えた。凜花の父親の吉川英二が外資系企業に桐谷グループの株を売ろうとしていたから被害を訴えられなかった、と。その席には吉川家の当主、吉川英二、そして吉川英二と後継者の座を争っている吉川隆史が同席。吉川隆史は吉川英二の持つ桐谷グループの株を無償で俺に譲ることを提案し、吉川英二の抗議は聞き入れられず吉川英二の株は全て俺のものになった。うまいこと利用された気はするが、俺たちに害はないので放っておいた。 盗聴手段については無計画、行き当たりばったりの杜撰なものだった。 凛花はあのとき俺が媚薬を飲んだことに気づいて、俺が花宮の女を抱いて性衝動を発散すると凛花は読んだ。何しろ俺は凜花に媚薬を盛られたことがある。あの夜より
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-04
Baca selengkapnya

49

凛花のICレコーダーを手に入れてデータを移すことは、錦野柾には容易だったろう。 花嶺桜子はお友だちとして吉川凜花の催す会や参加する会に参加しており、錦野柾は花嶺桜子の同伴者としてよく参加していた。母さんの帰国パーティーを開いた日、俺とのことを疑われて吉川凜花はすぐにICレコーダーを取り出した。いざというときのため準備していたというより、いつだって出せるようにしていたという感じで、おそらくあれをラッキーアイテムの感覚で日頃から持ち歩いていたのだろう。落としたり紛失したりしていたらと思うとゾッとする。 錦野柾は俺を脅せるネタだと思ってデータを盗んだ。俺が女を抱いている音声でガッカリしただろう、錦野柾には使い道もないネタだ。暴力的な性行為を好むなどの煽り文句で一時騒がれるかもしれないが、それは錦野柾の得にはならない。 しかし、状況が変わった。 吉川凜花との婚約間近と騒がれていた俺が桔梗と結婚した。婚約ではなくて結婚。しかも桔梗は臨月。 ネット上では騒がれた。俺は吉川凜花と桔梗の二心、桔梗は吉川凜花から婚約者を略奪したと騒がれたが、桐谷一族が桔梗を心から歓迎していることで騒ぎは戸惑いに変わった。そして満を持してロマンスが投入。婚約者が異母妹と結婚することになるからと実家の花嶺家を勘当された。学生時代の伝手で家政婦派遣の仕事に就き、派遣された先が祖母さんのところだった。祖母さんのところで俺が桔梗に一目惚れして恋仲になった。桐谷と吉川の関係から俺に断れない縁談が来たことで俺たちは泣く泣く別れたのだったが、その時すでに二人の間には愛の結晶が……。嘘に真実を織り交ぜる手法はよく聞くが、うちの一族の恋愛畑組はそこにロマンスを練り込んで拡散した。 人は信じたいものを信じるし、桐谷の団結する雰囲気を感じて信じたほうがいいと察した勘のいい者もいる。
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-05
Baca selengkapnya

50

「蓮司さん?」誠司が久しぶりに夜泣きをし、あやしていたら目が冴えてしまって、ホットミルクでも飲もうかとキッチンに行ったら蓮司さんがいた。暗い中、開けた冷蔵庫の中の光だけに照らされた蓮司さんの顔は端正な顔立ちが災いしてちょっとだけホラーだ。 「桔梗、ただいま」今日は酒席があるからと言っていたから、顔には出ていないけれど軽く酔っているみたい。いつもより少し反応が遅い。それでも蓮司さんは『ただいま』と、私の『おかえり』より先に言ってくれる。「お帰りなさい」先に『ただいま』と言ってもらえることが嬉しい。どちらでも同じではないかと、人に言ったら笑われてしまいそうだから蓮司さんにも言うつもりはなかったけれど、いつだったか「ただいま」を聞きたくて「おかえり」が遅くなってしまって、どうしたのかと尋ねる蓮司さんに理由を話した。それ以来、蓮司さんは必ず先に「ただいま」と言ってくれる。「ただいま」は“あなたのところに帰ってきた”という意味で、あなたのいる場所が自分の帰る場所なのだと言う意味がある。安心できる言葉。それを教えてくれたのも蓮司さんなのだけど、これは言っていない。 *生まれたばかりの誠司と共に退院した日、蓮司さんとお義父様とお義母様、そして朋美さんまで病院に来てくれた。先生は「素敵な家族ですね」と言ってくださったけれど、状況が状況だけに『家族』と私が言ってしまっていいのかという戸惑いがあった。入院中に入籍していたけれど書類上の名前が変わっただけという感覚で、結婚したのだという実感はなかった。大所帯だから迎えの車は2台。お義母様が誠司を抱いてお義父様と1台目の車に向かったので、2台目に私たちは乗った。朋美さんも一緒で、どれだけ誠司に会いたかったか、誠司への贈り物が子ども部屋にところ狭しと置いてあると、基本的に言葉数の少ない私たちの代わりに朋美さんがいろいろ話してくれた。蓮司さんは「うるさくてすまん」と言っ
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-05
Baca selengkapnya
Sebelumnya
1
...
34567
...
17
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status