Semua Bab 知らないまま、愛してた: Bab 21 - Bab 30

164 Bab

21.

「言い訳になるが、『すぐそこに美香さんの料理があると分かっていてコンビニのおつまみなんて耐えられないんだけど~』と朋美が言ってな」朋美様の口調、うまっ!え、蓮司様、こんなことも上手なのね……。「この時点で俺と武美はかなり飲んでいて気も大きくなっていて、怒られることを覚悟して食べることにした」冷静な判断はできていらっしゃったようだけど、適切な判断はできていなかったようだ。 「一通り食って、ちょっと一服と思いながら夜風に当たっていたら徐々に冷静になって、明日の俺たちの朝食は作ってもらえないのではないかと……俺は別に卵かけご飯でもいいのだが、それさえ祖母さんは許さないんじゃないかなと思ってな」ああ、それで……。「それで帰りが遅いと仰られたのですね」穴埋めをしてほしかったのね。ご自分で穴を埋めようにも呪われていらっしゃるから……。「それは違う」「え?」「君がまだあの……「蓮司ー!」」 !武美様の声と共にガラスが開く音がして、ベランダに設置してある防犯ライトがパッとついた。 「蓮司と……美香さん?」「ただいま戻りました……武美様?」……どうしてそんな睨むような目で蓮司様を? 「美香さん! 帰ってきたんだ、おかえりー!」武美様を押しのけるように朋美様がお姿を見せられた。お帰り……初めてではないけれど、とても久し振りに聞いた。思わず目の奥が痛くなり、朋美様と、そして武美様の姿が滲んだ。そういえば先生が妊娠初期はホルモンバランスの関係で情緒が不安定になると仰っていた。この涙も、こんなことで泣きたくなる気持ちも、ホルモンバランスのせいにちがいない。しっかりしなくては。 「蓮司様からお聞きしました。これから少し料理をしますので、よろしければお夜食を作りましょうか?」「いいの? やったー! これでお祖母様の朝食抜きの刑を受けても耐えられる」朝食抜き……朋美様もわかっていらっしゃったのね。 「朋美、私はちょっと蓮司と話があるから」「武美ちゃん?」「ね、蓮司」武美様の冷たい声に思わず蓮司様を見ると、目のあった蓮司様はふいっと目を逸らした。「……ああ。君も、行ってくれ。話に付き合わせて悪かったな」?なにかしら?   *  「お兄と武美ちゃんのことが気になる?」朋美様?それは、確かに。「お二人も食べるなら
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-22
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22.

地方大学への進学をすすめたのは玲子さんだった。あのときは学費の問題だと思ったけれど、いまにして思えばあの頃から桜子と柾さんをくっつけようとしていたに違いない。卒業して家に戻れば父に婚約者なんだから柾さんともっと交流しろと言われた。父がそう言いたくなる気持ちも少しは分かる、私と柾さんはろくに話すこともなかった。婚約していたものの小学生のときは月に1、2回会って話をする程度。柾さんが中学生になってからは交流する機会もほとんどなく、何かも催しで顔を合わせたときに挨拶するくらい。高校生になってからは共通の知人もいなくなり連絡すらとらなくなっていた。 そんな相手に、しかもそれまで地方にいた私に振る話題などあるわけがない。戸惑う私と怒る父に玲子さんが桜子を同席させることを提案してきた。よく考えれば変な提案だけど、柾さんは別に構わないと言っていたし、私も桜子が主に話をしてくれて助かったと思いさえした。 柾さんと桜子が話していたことに「思い出」がやたらと多かったことに気づいたのは比較的最近で、そう言えばとあの頃を思い返したときだった。思い出が多いということは、あの二人は私がいない間も会っていたということ。それに気づいたのが婚約解消後だったにしても、婚約者に裏切られたという気持ちは浮かばなかった。いま思い返してみても、柾さんに対して特に思うところはない。私は柾さんに対して恋愛的な好意を持っていなかったのだろう。破談となってよかったと、和美様たち皆様のいい関係を見ている今は心からそう思う。 「朋美様には婚約者はいらっしゃらないのですか?」「いないよ。一族には若い人がそれなりにいるし、みんな仲いいし、政略が必要なわけでもないから、結婚してもしなくてもいいよって状況なんだ」「自由、なのですね」「それがそうでもないんだよね」?「いつかお祖母様たちの手の上で転がされるの、私」「どういうことですか?」「和美お祖母様にはあの目があるから、みんな人を紹介するときには本人より先に和美お祖母様に言うのよ。朋美にこの人はどうかなって感じで」「なるほど」「それで『いいね』となると、恋愛畑組の親族が出会いを演出するのよ。恋愛超淡白組はそもそも恋愛に興味がないから放置、誰も何も止めない」「それはまた……」呆れてしまう反面、和美様のあの目の実績を考えれば
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-23
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23.

「ズバッと聞くね。美香さん、浮気をする男ってどう思う?」浮気をする男と聞いてポンッと浮かんだのは柾さん……柾さんをどう思う、か……どうでもいいわ。 「私に関与しなければどうでもいいですね」「結構冷徹!」朋美様は楽しそうに笑ったあと、何かに気づいたという表情をなさった。「……もしかして、浮気されたことがある?」浮気をされたこと……。「まあ、似たようなことは……ありますね」「えええ! 美香さんみたいな恋人がいて浮気するって、馬鹿なの? いや、それよりも、どんな女なら美香さんから恋人を奪えるの? あ、二次元!」「え?」「三次元で実体のある人間の美香さんはダメというパターン?」「そういう人なら私は最初から関わりを避けますね」「……そうだよね」 もう大丈夫かと思えたから、だし巻き卵に包丁を入れる。少々出汁は出るけど許容できる範囲、成功と言えるだろう。小皿に盛って、爪楊枝を指して渡すと、朋美様が軽快に口に入れた。 「やっぱり美味しい~、どうやったらこんなに美味しく出来るの?」お作りになるつもりだろうか。教えることに問題はないが……蓮司様のあの話をきいたあとでは大問題な気がする。でも、どこまでのものができるかのちょっとした興味も出てしまう。 「そうですね……」美味しくするコツはいろいろあるけれど……朋美様にはどれもまだ早い気がする。「失敗する要素をなくすといいかもしれませんね。料理を始める前に使う材料を並べる、それ以外のものはしまうか手の届かないところに置いてしまう。これだけで失敗する確率はかなり落ちます」砂糖と塩を間違えるというベタな失敗は避けられるはず……いや、でも、神がかったミラクルが……。 「失敗する要素をなくすって?」 武美様?あ……蓮司様もご一緒のようだ。丁度いい、お夜食……。「蓮司……「それって、恋愛もそう考えている?」」武美様? 「おい……「蓮司は黙っていて」」……本当に黙った。「美香さんの考えも聞いてみたいじゃない。ねえ、美香さん。美香さんは婚約者のいる男は恋愛対象外?」突然の質問に戸惑う。それにしても、やけに今夜は恋バナ……恋愛話は得意ではない。でも武美様に聞かれているのだし……婚約者のいる男性に恋……桜子、該当するのはこの子くらい。桜子を思い出すと――。「そうですね、婚約
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-23
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24.

恋愛劇はいまも昔も人気がある。 ドロドロの愛憎劇に巻き込まれるのは嫌だし、誰それの浮気だ何だに関わりたくないけれど、関わらないなら、つまりモブ中のモブである『家政婦の女』としてなら間近であってもただ楽しんで見ていられると思う今日この頃。 「お帰りなさいませ、武美様」 「ただいま、美香さん」 蓮司様の車が停まると、助手席から武美様が降りていらっしゃった。 武美様はいまこの菊乃井別邸に滞在していらっしゃる。 武美様は海外からお戻りになったばかりで実家に身を寄せていらっしゃったが、医師免許をお持ちのため和美様が滞在をお願いしたとのこと。 和美様はお体の不調を感じられているのだろうか、心配だ。 「蓮司、今日もこっちに泊まっていくでしょう?」 「ああ」 「ちょっと蓮司さん!」 後部座席から降りていらっしゃった吉川様が割り込んだのだけど……幼馴染(女性)が助手席で、ご婚約者様が後部座席。 この構図は、武美様のお祖母様である由美様からお勧めしていただいたWEB小説の構図。 「吉川さん、助手席を譲ってくれてありがとう。私、車に乗るとすぐに酔っちゃうから」 そう、小説の中でもそんな台詞を幼馴染の女性が言っていた。 「白々しい嘘つかないでください! 武美さん、そんな柔ではないでしょう!」 あの小説の女主人公、そういえば彼女は男主人公の婚約者、彼女は「仕方がない」と我慢をしていた。 でも、あれは小説。 現実は逞しい。 吉川様は武美様の前に仁王立ちし、ビシッと武美様を指さす。 ……某少年探偵を思い出すポーズだわ。 「凛花、俺は武美と用事があると言っただろう。変な言いがかりをつけてくっついてきたのは君だ。俺は忙しい、タクシーを呼んであるからそれに乗って帰れ」 某少年マンガからドロドロ愛憎小説へとちゃんと戻ったわ。 WEB小説の男主人公は、ここで『甘えるな!』とばかりに女主人公を突き放す、ちょっとしたクズ臭のする男性。 もちろんタクシーなんて呼んでくれないけれど、現実(蓮司様)はアフターケアもきちんとしていらっしゃる。 「行くぞ、武美」 「蓮司さん! なんで毎日毎日武美さんと? 用事ってなんですか?」 「君には関係ない」 小説のように婚約者の吉川様を冷たく突き放す蓮司様。 小説の
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-23
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「それで、観察に精を出していたら家政婦を辞めることを言い出せなかった、と?」華乃の呆れた目から目を逸らす。ここは会社の近くにあるカフェだから、いまの華乃は乃蒼の姿。 「楽しくって言い出しにくいのもあるのよ」「おいおい」「まだ働けるって気持ちもあるの。妊娠していると言っても生理がないくらいで、よく言われるつわりみたいな症状もないんだもの」「そんなもんか?」「妊娠しているってこともうっかり忘れそうよ」「おいおい、自分の体のことなんだからしっかりとしろよ」乃蒼が呆れた声を出すから、午前中に区役所で取ってきた母子手帳を見せた。 「おお、これが……」「その反応、分かるわ。私も受け取ったときは『これは!』って思ったもの。でも窓口の人淡々、『はい、次の方』ってアッサリしていたわ」「その人にとっては日常茶飯事だろう。他人事なんだろうし。なあ、見てもいいか?」「もちろん。でも中は何も書いてないよ。名前とか住所は自分で書いて、あとは病院のほうでいろいろ書いてくれるって」「そういうものなのか」「知らなかった世界の話だよね。そうだった。緊急連絡先なんだけど乃蒼を書いてもいい?」「俺以外に誰が……」「花岡さん!」 乃蒼を呼ぶ知った声に反射的にそっちを見た。吉川様?吉川様も驚いていらっしゃる。  「東国さん? なんでここに?」いや、吉川様こそ……。ここはビジネス街であるが、蓮司様の職場はこの近くではない。吉川様の家の会社などもないはず。吉川様の近くに桜子が現れそうだから、吉川様には会わないように調べたから間違いない。……。……あれ?吉川様、さっき華乃(乃蒼)のことを呼ばなかった?もしかしてここにいる理由って華乃(乃蒼)? 「どうしてあなたがここで花岡さんといらっしゃるの?」「えっと……」「凛花」吉川様の後ろから、買った飲み物であろう紙製のカップを持った蓮司様がこちらに来た。蓮司様が私に気づいて、驚いた表情を浮かべる。「え……なん、で……」蓮司様の目がもっと大きく……さらに驚くことなんて……。あった。体が強張る。蓮司様の目は、華乃の手の中にある母子手帳に釘付けだったから。 「どうして母子手帳なんて……」蓮司様は吉川様を見た。確かに蓮司様の反応は正しい。彼が知っている妊婦は吉川様だけだ。「え……ぼし
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-24
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「乃蒼」「ごめん」しばらく歩いて、店から離れたところで乃蒼(華乃)に声をかける。乃蒼(華乃)は私の手を離した。なんで乃蒼(華乃)がこんな強引に店を出てきたのか。その顔を見て分かった。「ありがとう。あの夜が蓮司様の誕生日だと知っていて、心配してくれたんでしょう?」「……知っていたのか。まあ、暗記は得意だもんな」「計算は苦手だけどね」「計算は電卓も表計算ソフトもあるだろう……あれ、いま、妊娠五ヶ月?」「うん」乃蒼(華乃)が不思議そうに首を傾げた。「計算、ミスってるだろ。その日なら四ヶ月前じゃないか。吉川凛花も妊娠四ヶ月って言っていたし、同じ日に妊娠したなら桔梗も四ヶ月だろう? 大事なことなんだからちゃんと覚えてろよ」あー、それ。「間違いじゃないよ。いまはもう妊娠五ヶ月。ちょっと計算が複雑なの。簡単に言うと、妊娠した日から約二週プラスして計算するの」「へえ」「あと、実際の一ヶ月は三十日とか三十一日だけど、妊娠の一ヶ月は二十八日の四週間で計算したり、いろいろあるのよ。詳しくはWebで」「分かった、Webな。それじゃあ、吉川凛花が間違っているのか?」それは、どうだろう。「表現の違いじゃない? 三日間と四日目みたいな感じ。五ヶ月目が私で、吉川様のは四ヶ月間」「なるほどね」   *  「和美様、お話があるのですが」あのあと二人で話して、妊娠のことを和美様に話すことに決めた。一身上の退職でもいいのだけど、交代までの期間があるし、その間に万が一があって、そのときに妊婦だからが理由で対応できなかったら会社の信用に関わる。それに、万が一のときの不手際で和美様に何かあったら私も自分が許せない。――早めに契約終了も覚悟しておきな。華乃にはそう言われて、覚悟している。シングルマザーは確かに増えてきているし偏見も減ってはいるけれど、無責任とか無計画とかネガティブな印象はやっぱり残ってしまっている。しかも私は住み込みの家政婦。信用できる存在でなければいけない。 「構いませんよ」和美様は頷いてくださったあと、朋美様と武美を見た。「お二人も、よろしければ」蓮司様はご存知だからお二人に席を外していただく必要はない。「一身上の都合で大変申しわけありませんが、家政婦を辞めさせていただきます」「「「…………え?」」」御三方の声が揃
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-24
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「全然気づかなかったわ、武美は?」「私も。いま何週目なの?」「19週です」和美様と武美が安心したような目をしたのは安定期に入っていることが分かったからだろう。一方で、週数を言ったことで妊娠がリアルに感じられたのか朋美様は慌て始めた。立ち上がって私に椅子を勧めてくださる朋美様に和美様が呆れる。「朋美、落ち着きなさい。妊娠は病気じゃないのだから大事なければ普通に生活して大丈夫なの」「そ、そうなの?」「とは言っても、美香さんを立たせている理由もないわね。美香さん、座って、少し立ち入ったことまで聞いてもいいかしら」「はい、答えられる範囲でとなりますが」和美様は頷き、私は和美様が目で示された椅子に座る。武美様はそのまま、朋美様はそのまま元の椅子に座って話を聞く態勢になる。 「あなたたち……」「私は構いません。いろいろお聞きになりたいのは、この状況では当然だと思いますし」和美様は気遣ってくださったが、あとで個別に質問されるより一度で済ませてしまいたいのが本音。聞かれることを想像すれば、何度も話すのは憂鬱だ。 「あ、お兄も呼ぶ?」「朋美、あなたね……」「あんた、鬼なの?」朋美様の提案に和美様は呆れ、武美様は非難なさった。確かに、鬼のような所業とはいかないだろうけれど、妊娠したという話は当事者でなければ男性には身の置き場のない話題だろう。それに……。 「蓮司様は私の妊娠を知っていらっしゃいますので……」「「「はあ?」」」」わざわざ呼び出す必要はないと言うつもりで言ったのだけれど……どういう反応なのかしら? 「み、み、み、美香さん! もしかして……」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-25
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「蓮司様がご存知なのは偶然で……」ああ、あのお顔はどなたも納得していらっしゃらない。ご婚約者のいらっしゃる蓮司様に隠し子疑惑を作ってしまった。どうしましょう。何を言っても白々しい気がするわ、ありのままに話す?「本日母子手帳をもらいまして、それを乃蒼に見せていたときに吉川様と蓮司様が偶然同じカフェにいらっしゃり、それで私の妊娠を知ることになったのです」……私も動揺している。ありのままに話し過ぎてしまった。 「“のあ”って、花岡社長のことよね? それなら、お子さんのお父様は花岡社長なの?」当然の質問よね。「いえ、花岡でもなくって……子どもの父親は……」恐怖と痛みの記憶に怯むものの、顎を引いて耐える。「事情がありまして誰かは言えません。でも花岡ではありませんし、もちろん蓮司様でもございません」「それって……「そうなのね。さて、それより大事なことがあるわ。ねえ、大叔母様」」「そうね。朋美、お黙り」朋美様の追求が止まったことにホッとする。まだ学生でお若い朋美様はいろいろなこと、ご表情から見て素敵なロマンスを想像していらっしゃるが、武美様と和美様は察してくださったようだ。ズルいまとめになるけど、大人の事情ということ。 「美香さんは仕事を続けるの?」「保育園が決まり次第復帰するつもりです。家族はいませんし、花岡ともう一人の友人が子どもの後見人を引き受けて、子育ても手伝ってもらえることになっているんです」家族がいない事情について朋美様は興味がありそうだけど、これも大人の事情としか言えないので気づかない振りで流す。「後任が決まったら引き継ぎをし、引っ越しもあるので妊娠後期に入る前に……「ちょっと待って」」武美様が
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-25
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「美香さん、桐谷と吉川が元は同じ家なのはご存知かしら?」 財閥が解体されたとき当時のご当主は双子の息子以外の家族を戦争や病で亡くしており、唯一の家族である二人が争うことのないよう、ご当主は桐弥様と吉弥様に資産を半分ずつ残した。彼らはそれをもとに、桐弥様は桐谷商会を、吉弥様は吉川商会を興した。そして仲のよい双子のご兄弟であったお二人はお互いにお互いの会社の株を35%持った。自分の行いが道を外れたらお前が正してくれと、そういって株を贈りあったこの姿勢は美談とされて有名な話である。 「お互いの会社の株は子や孫へと遺産として引き継がれ、いまとなっては一人の持ち分は少なくなっているけれど、家として考えれば桐谷は吉川の株の35%を持っているわ」そうなると、桐谷グループの株の35%は吉川家で持っていることになる。桐谷グループの株ならば5%でも大株主。両社の成り立ちを考えれば、桐谷グループ内での吉川家の発言力は無視できない。 「吉川家のほうは手放した人もいるから吉川家全体で15%ほど持っているわ。うちもそうだけど一人あたりの持ち株数はそう多くないし、あちらは上手くいかない事業も多かったから、自分くらいは売っても大丈夫と思ったのかもしれないわね」両社の株の保有については兄弟愛から始まる美談であり経済界では有名な話。量に関係なく、株を売ること自体に非難の目が集まってもおかしくない。「株はこっそりと隠れて売買されたから、気づいたらかなりの量が売られていて、海外資本の存在もあったから桐谷家側は総力をあげて売られた株を集めたわ」当時は菊乃井家も助力したのだろう。和美様がついた一息は、当時を思い出したのか、ひどく深いものだった。 「20年ほど前、桐谷グループは吉川グループに対して、利益を度外視した援助を行った。桐谷の株を売ることは醜聞を増やすだけだと理解していた吉川のご当主は一族にそれをやめさせたかったし、多くの事業の業績が芳しいものでないこともあったこともあるから
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-26
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「後継者争いで吉川隆史様に勝つため、吉川英二様はまとまった資金が必要。だから、吉川英二様はご自身がお持ちの桐谷グループの株を売りたい」恐らく、買いたいという人が実際にいる。その人は桐谷グループにとって株を持たれたくない、もしくは株を持たれては困る方。桐谷グループは、吉川英二様に売らせたくない。「蓮司様が握られた弱みは、吉川英二様にそれを売る口実になってしまうのではありませんか?」和美様は、正解というように微笑んでくださった。「蓮司に弱点がないとは言わないわ。苦手なことだって、できないことだって、もちろん好き嫌いもある」苦手なこと。お料理、かしら。「でも、気を許していない相手に弱みや苦手を見せる子ではないわ」和美様が私をジッと見る。何かしら?私が首を傾げると、和美様は少し変な顔をなさった。……何かしら?「とにかく、凜花さんたちでは蓮司の弱みも苦手も探り出すこともできないはずよ」それって……。「蓮司様の弱みを、お作りになったと言うことですか?」そんなこと、する?……いえ、するのね。和美様はまた、正解という顔をしている。「お兄に弱みって……」「想像もつかないわね……それに、蓮司はそれを誰にも話さない……のよね?」「お母様が脅しても、殴ってもだめだったって」「あの子の場合、泣き落としのほうが効いたと思うのだけれど……」なるほど……。「だから、雅美様は『家出中』なのですね」「「どういうこと?」」武美様と朋美様が同時に首を傾げた。「夫婦喧嘩や親子喧嘩において、『家出』という手段は逃げ、つまり逃避するしかないという最終手段に出たことを示します」武美様と朋美様が同時に首を縦に振る。「それを逆手に取れば、もうこちらには成す術がないのだと相手の油断を誘う手段にもなります」アマゾネスと言われるほどの方なら、それを攻めの一手として使うほうが自然な気がする。そもそも、弱みは永遠に弱みであるとは限らない。苦手なら克服。秘密なら公開。人質なら保護するなど、取引材料にされたなら何かしら手を打って弱みではなくなるようにするほうが自然。「弱みで蓮司様の意思を奪うなら、吉川様たちはそれを弱みのままにしたいはず。蓮司様のご家族、特にご両親の動向に警戒なさったはずです」だからこそ、雅美様は早々に吉川様の注意の範囲外に『家出』なさった。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-26
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