正造に成哉の行方を尋ねられた際、紬は適当な嘘でその場を取り繕い、「こもれび」の菓子の話題へと巧みに話を逸らし、祖父の関心をすべてそちらへ向けさせた。病院では、望美が普段より遅れてやって来る成哉を、指折り数えながら待っていた。不安と焦燥が胸の奥で膨れ上がり、拭いきれない危機感となって彼女を締めつけていく。健一から、今日成哉が紬の実家を訪れたと聞いていた。そこは紬の祖父が暮らす場所だ。成哉が呼び出された理由が紬に関するものであることは、考えるまでもなく明らかだった。あの二人の結婚は、そう簡単には終わらないのではないか。そんな予感が、望美の胸に薄く影を落とす。だが、絶対に、そんなことはさせない。ここまで来るのに、自分がどれほどの時間と労力を費やしてきたと思っているのか。最後の最後で失敗するなど、決して許されない。望美は病室のベッドに横たわったまま、瞳の奥に計算高い光を宿した。……崇の七十歳の祝宴が催された当日。宴は新浜にある六つ星ホテル、グランド・アステリアで開かれることになっていた。紬は新浜行きの航空券を手配し、ホテル近くへ直行した。祖父が崇へ贈る祝いの品は大型だったため、すでに配送業者を通じてホテルへ送付してある。前日に成哉から届いていた「一緒に会場へ行こう」という誘いは、紬はあえて無視した。別途予約していたビジネスホテルで身支度を整えると、紬は一人でグランド・アステリアへ向かう。崇の寿宴のため、ホテルは三階から五階までのフロアすべてが貸し切られていた。紬が到着した頃には、ホテルの正面にはすでに高級車が長い列を作っていた。会場へ足を踏み入れる客たちは、業界でも名の知れた人物ばかりである。天野家がこの晩餐会をいかに盛大に執り行っているかは、一目で分かった。入場口では受付係が招待状の確認を行っていた。紬はその場に来て初めて、入場に招待状が必要であることを知る。おそらく崇は、紬が成哉と同行するものと思い、個別の招待状を用意しなかったのだろう。だが成哉は、その件について一言も触れていなかった。困惑して立ち尽くす紬に気づき、一人の女性受付係が気遣うように声をかけた。「お客様、招待状をお忘れになりましたか?まだ開宴まで少しお時間がありますので、どなたかに届けていただくことも可能ですが」「申
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