カフェの席で、那月は誠実さを装い、悲劇のヒロインのような表情ですべてを打ち明けた。杏奈でさえ、思わず信じてしまいそうになるほどの熱演だった。――もちろん、炎上工作の件に関わっていた事実を隠していなければ、の話だが。那月が白状したのは、決して良心の呵責からではない。美南のプレッシャーに耐えかね、窮余の一策として告白を選んだのだ。杏奈の同情と信頼を得て、美南に脅されている被害者を演じながら堂々とデザイン画を手に入れる。見事任務を果たして実家である横井家を守り、さらに美南からの信頼も深めて、引き続き杏奈からも旨みを引き出し続ける。完璧な二枚舌。両天秤にかけるその立ち回りは、筋金入りのしたたかさだった。「そう……」那月はこの瞬間、狂信者のような澄んだ瞳で杏奈を見つめ、声を震わせた。「杏奈、あの人がどういう性格か、あなたもよく知ってるでしょ?もし私が断ったら、実家の横井家が潰されちゃうの……っ!」ここでポロリと泣けば完璧だ。あとは心優しい杏奈が慰めてくれて、さらに美南への共感と反発を引き出し、強固な信頼を勝ち取る。それが那月の描いた完璧な筋書きだった。しかし杏奈には、那月が到底信用に値しない「食わせ者」であることは、すでに見抜いていた。いまさら、こんな安い三文芝居に付き合ってあげる気にもなれない。そういうわけで、数分の間、那月は「嘘泣き」から「本気の号泣」まで、表面的な浅い演技から魂を込めたアカデミー賞級の熱演に至るまで、ありとあらゆる表情を駆使した。しかし、杏奈の表情は一ミリたりとも動かなかった。那月は本気で叫びたくなった。なんだよこの女、血も涙もないの!?「許してくれる気はない……?」那月がすがるように正面から尋ねると、杏奈はあっさりと頷いた。「うーん……正直なところ、私って少し根に持つタイプで、執念深い質なの」本当は紗里みたいに、含みのある嫌味を器用に使い分け、精神的にじわじわ追い詰めてやろうかとも思った。でも、自分は地道な努力型であって、器用な真似はできない。それがよくわかった。杏奈は回りくどいことは抜きにして、身も蓋もない本音をぶつけることにした。「とりあえず、何か目に見える『誠意』を見せてくれる?ずっと嘘泣きされてるだけだと、こっちも疲れるから」「……わかった」那月はしばらく黙り、覚悟を決めて自分
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