自身の罪から目を背けたかったのか、それとも母親の声音に底知れぬ凄みを感じ取ったのか、小春は逃げるように電話を切った耳元で無機質な電子音が虚しく鳴り続けていた。杏奈はしばらくその場に立ち尽くしていたが、やがてゆっくりと足を踏み出した。その足取りが向かう先は、自身の家ではなかった。……「どうした?」一方、吉川家の書斎。蒼介がリモートワークをこなしていると、不意に扉が開いた。小春が駆け込んできて彼の膝に顔をうずめた。その小さな背中は、どことなく沈んで見えた。「パパ……モモちゃん、今どうなってるの?」小春が、不安げに上目遣いで尋ねる。「気になるなら自分で電話して聞け」蒼介は画面から目を離さず、淡々と冷たく言い放った。「つまり、パパがあたしに電話させたかったんじゃないの?」小春がハッとして顔を上げる。これほど見え透いた言い訳に、蒼介が気づかないはずもなかった。「お前が自分でかけたかっただけだろ。俺には関係ない」モモの容体がどうであれ、彼にとっては些末な問題に過ぎなかった。たとえそれが元の姪であったとしても。「でも……」小春がなおも食い下がろうとしたが、蒼介は冷ややかにそれを遮った。「いいから。こっちはまだ仕事がある。モモのことが心配なら、自分で連絡しろ」「……わかった」欲しい言葉をもらえず、小春は肩を落としてとぼとぼと部屋を出た。先ほどの、電話口での母親の冷たく問い詰める声が耳にこびりついて離れない。なぜだか胸の奥がざわざわと波立ち、嫌な予感が消えなかった。ママ……もしかして、もう全部知ってるの?そんな不安が小さな胸を締め付けた、まさにその時。階下のリビングから安達の声が響いてきた。「三浦様、お帰りになられたのですね」「ええ。安達さん、小春はどこ?」「小春ちゃんは……」安達が言葉を終えるより早く、小春は弾かれたように走り出し、自分の部屋へと逃げ込んだ。ドアを勢いよく閉め、カチャリと鍵をかける――その一連の動作は、目にもとまらぬ速さで、必死だった。ママが自分を探しに来た。小春にははっきりと分かっていた。罪を犯したとき、人は本能的にそこから逃げ出そうとする。子供も同じだ。知らないふりを決め込んだり、誰の手も届かない安全な場所に身を隠そうとする。そうやって息を潜めていれば、すべてやり過ご
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