病室の中。赤司は紗里のベッドの前に直立し、極度の緊張に苛まれながら、紗里をじっと見つめていた。紗里はベッドの背もたれに身を預け、半身を起こしていた。顔色はまだ青白く、無機質な病衣が彼女の細い体に緩く纏わりつき、今にも壊れてしまいそうな危うい美しさを醸し出している。彼女は何も言わなかった。赤司の方へ視線を向けることすらない。だが、その絶対的な無関心さこそが、赤司の心にいっそう深い恐怖を植え付けていた。彼の脳裏には、ある言葉が呪いのようにこびりついて離れない。「価値のない人間に、居場所なんてない……」今回、自分は致命的な失敗を犯した。己の存在価値が、今まさに風前の灯火となっているのだ。息詰まるような沈黙の中で、時間が無限に引き伸ばされていく錯覚に陥る。一秒一秒が、彼にとっては身を切られるような拷問だった。空気が鉛のように重くのしかかり、赤司はほとんど呼吸もままならない。心臓だけが胸の内で狂ったように暴れ回っていた。やがて、紗里が静かにまぶたを持ち上げた。普段は柔らかそうに見えるその瞳には、今や人肌の温もりなど微塵も残っていない。そこにあるのはただ一面の、氷河のように凍りついた無関心だけだ。薄紅色の唇がゆっくりと開き、冷酷な宣告がこぼれ落ちた。「……次はないわ」それは彼にとって、地獄から解放されたように響いた。赤司は堰を切ったように安堵の息を吐き出した。背中はとうに冷や汗でびっしょりと濡れそぼっている。彼は身に余る感謝の念に駆られながら、何度も激しく首を縦に振った。「はい、はいっ!必ず!次は絶対にございません!この命に誓って!」……扉の外で、杏奈の眉が険しく寄った。「今回のこと……」「次はない……」赤司の異常なまでの恐怖と、紗里のまるで絶対的な支配者のような底知れぬ落ち着き。どう考えても、仕事上の些細なしくじりを咎めているような次元の話ではない。おぞましい推測が、理性の歯止めを突き破って杏奈の頭の中に飛び込んできた。まさか、あの拉致事件の黒幕は……しかし次の瞬間、杏奈は強引にその考えを頭から振り払った。論理が破綻している。紗里はこれまで、手段を選ばず愛人の座から正妻の座へと這い上がろうとしてきた。そのすべては、蒼介を手に入れるためだったはずだ。その命まで狙うなど、自分で自分の首を絞めるよう
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