激しい銃声が渓谷にこだまする。 ガトリングガンが火を噴き、放たれた大量の銃弾が、押し寄せるモンスター達を次々と粉砕していく。(おー、すごいすごい。ありゃ、相当強いな) 岩の陰から様子を見つつ、俺は彼女を助けようかどうしようか、迷っていた。 ぶっちゃけ、あれだけ戦えるなら、救援とか必要なくね? 襲いかかっているモンスター群は、低レベル帯の「泥田坊」。体が泥で出来ているから、非常に脆い。 ガトリングガンを自在に使いこなしている女の子は、あれだけの重火器を軽々と扱っている時点で、並大抵のダンジョンライバーではない。アニメタッチのセクシーなレオタードアーマーを着用しているが、たぶん、パワードスーツの類だろう。 女の子は、透き通るように白い肌と、長い金髪が印象的だ。あの顔には見覚えがある。名前はど忘れしたけど、たしか、かなりの人気ライバーだ。 彼女の背後には、ボールのようなものが三個ほど浮かんでいる。おそらく、配信用の機材だ。あんな高性能な物を、俺と同い年くらいの女の子が、普通は持てない。べらぼうに高いからだ。大企業のバックアップでもないと、無理だ。(ま、自分でなんとかできるっしょ) とりあえず、俺は俺で、この「等々力渓谷ダンジョン」をもうちょっと探索したい。 それに……あまり、他のライバーと関わり合いになりたくない。《キリク:え、助けないの?》 ふと、スマホの画面を見ると、そんなコメントが流れてきた。俺の配信を見てくれている、唯一の熱心な視聴者。 面倒くさいなあ、と思いつつ、俺はスマホに向かって語りかける。「必要ないよ。あの子、俺より遙かに強いから」《キリク:ダメだなあ》《キリク:そんなんだからファンが増えないんだよ》 随分な言われようだ。でも、視聴者キリク氏の言うことは正しい。俺のDライブチャンネルの視聴者数は、いまだに5人。その内4人は、クラスメイト。純粋な視聴者はこのキリク氏のみである。(あんまり関与したくないんだけどな) 過去、俺はとあるダンジョン探索チームに所属していた。ダンジョン配信をしていない集団だったので、誰一人知らないのだけど、そこでひと悶着あった。もうあのような目には遭いたくない。 俺の持つスキルは、少々、いや、かなり厄介で誤解を生みやすいものなのである。 できれば使いたくない。けれども、使わなければ、ダン
Last Updated : 2025-11-27 Read more