俺もナーシャも、指一本動かすことが出来ずにいる。 ちょっとでも何かアクションを見せれば、その瞬間、このイワナガヒメはあっさり俺達の首をもぎ取るだろう。 そんな恐ろしさが漂っている。 いつの間にか空には暗雲が垂れ込め始めており、あたりは暗くなってきた。今にも雨が降ってきそうな空模様だ。 「なんじゃ、名乗らぬのか? それとも、名が無いのか?」 冗談めかして言ってから、クスクスとイワナガヒメは笑う。 「愉快愉快。うぬらの恐れが、手に取るようにわかるぞ」 きっと、カルマ業を殺したのも、この女だ。しかし、いったいどうやって首をねじ切ったのか、見当もつかない。一切姿を見せることなく、攻撃の影すら捉えさせず、カルマ業を一撃で葬った。 まさに化け物。 「さて、久々の現世じゃ。案内してもらおうかのう」 気が付けば、イワナガヒメは、俺達の目の前まで迫っていた。移動する姿が見えなかった。まるでワープしたかのように、一瞬で、距離を詰めてきた。 「うぬに決めた」 ナーシャの頬に手を触れながら、楽しそうに、朗らかに言う。 よせ。やめろ。 喉元まで声が出かかるも、余計なことを言えば、真っ先にイワナガヒメは俺のことを殺すのだと感じ、何も言えなくなる。 ナーシャもまた、ガタガタと震えながら、悲鳴を上げそうなのをこらえている様子だ。 「若者達をいじめるのも、それくらいにしていただきましょうか、姫」 そこへ、ゲンノウが現れた。
آخر تحديث : 2025-12-17 اقرأ المزيد