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第6話 竜神橋ダンジョン②

Auteur: 結城らい
last update Date de publication: 2025-11-29 09:03:56

 ギャアギャアとけたたましい鳴き声が聞こえてきた。

 空の向こうから、何百羽はいるだろう、怪鳥達が黒い雲のように群れをなして、俺達のほうへとまっすぐ飛んでくる。

 ナーシャのボール型配信機材は、コメント読み上げ機能も搭載しているようだ。合成音声がスピーカーから流れてくる。

《:来たぞ、オンモラキだ!》

《:数が多いだけで大したことない、ナーシャたんなら楽勝っしょ》

《:ツレの底辺ライバーはどうだろうな》

《:見るからにひょろっちいし、楽勝でやられそうだな》

《:それな》

 俺は肩をすくめた。「ダンジョンクリエイト」のスキルを使えば、それこそ吊り橋に壁を作ることだって出来る。対象物に触る必要はあるけど、その条件さえ満たせば、不可能はない。質量保存の法則だって無視できる。

 もしも俺一人だったら、ダンジョンの構造自体をいじって、どうにか撃退していただろう。

 でも、ここでスキルを使うのは、あまりにも危険すぎる。今回は大勢に注目されてしまってる。万が一、「ダンジョンクリエイト」持ちだってバレたら、えらいことになってしまう。

 幸い、俺と一緒にいるのは、あのガトリング・ナーシャだ。

 火力の女神。圧倒的攻撃力。まず負けることはない。

「よーし! 派手に行くわよ!」

《:待ってましたー!》

《:今日も無双頼みます!》

 ガシャン! と重々しい音を立てて、ナーシャはガトリングガンを構えると、飛来してくるオンモラキの群れへと狙いを定めた。

 たちまち、ガトリングガンの銃口が火を噴いた。

 凄まじい銃声が響き渡る。一秒間にいったい何発の弾を放っているのか、雨あられの如く飛んでいく銃弾は、次々とオンモラキに当たり、秒に何十羽という勢いで撃墜していく。

「ケアアア!」

 オンモラキ達が怒りの鳴き声を上げ、口から火球を放ってきた。

《:あれはやばい!》

《:橋を焼かれるぞ!》

 だが、ナーシャは、その火球をも射撃で撃ち落としていく。攻防一体の苛烈な銃撃を受けて、とうとうオンモラキの群れは散り散りになった。

《:やった! 逃げてく!》

《:さすがナーシャたん!》

《:いや待て! 違う! 分散して襲うつもりだ!》

 さすがいくつものダンジョン配信を見ているであろう、視聴者達だ、よく観察している。

 俺も、気が付いていた。敵は逃げ惑っているように見せて、いくつかの小隊に分かれて、複数の方向から襲いかかるつもりなのだと。

「ちょっと! 戦わないの⁉」

「いや、あんまりにもお前が強いから、見とれてて」

「そーいうのいいから! 真面目にやって!」

 ナーシャは素早く目を走らせて、どのオンモラキの群れを撃ち落とすか、選んでいる様子だ。

 いくらパワードスーツを着ているとはいっても、あの重たいガトリングガンを、スピーディに右へ左へと振り回しながら攻撃するのはきついのだろう。ナーシャの弱点は、小回りがきかないところにある。

 はあ、と俺はため息をついた。

 キリク氏は、この状況をどう考えているのだろう。右手に持つスマホを見てみると、こんなコメントをよこしてくれていた。

《キリク:期待してるよ、マイヒーロー》

 やれやれ、弱ったな。

 俺は自分の能力をあまり知られたくないんだけど、こういう風に頼られるのには、弱いんだ。なにせ、長男だから。昔から両親もいない中で、妹の面倒を見てきた。そのクセがあるから、誰かに助けを求められたら放っておけない。

「わかった! やってやるよ!」

 俺のスキルの発動条件①。左手で、ダンジョンの構造物に触れること。右手はスマホを持ったまま、左手で、吊り橋に触れる。

 俺のスキルの発動条件②。頭の中でイメージする。ダンジョンの構造をどのように変化させるか。なるべく具体的なビジュアルを伴って、想像してみる。

 俺のスキルの発動条件③。脳内でも、声に出しても、なんでもいいから、掛け声を上げること。

 今回は、声を出してやってみるぜ。

「伸びろ!」

 途端に、吊り橋がグニャリと変形し、ニョキニョキと新たな吊り橋が伸び始めた。

《:うおおおおお、なんだこりゃあああ》

《:また伸ばしてるぞ! でも吊り橋⁉ 大地系スキルじゃないのか⁉》

《:きっと物体を伸ばす能力なんだ! 伸びるスキルだ!》

 ナーシャもまた、しばらく銃撃を中断して、目を丸くしながら、俺のことを凝視している。

「な、なに、それ。どうやってるの」

「何度も言わせるなよ。スキルって、理屈ではかれるもんじゃないだろ」

 俺は、頭上を旋回しながら飛び回っている、オンモラキのいくつもの群れを睨みつけた。

 楽しそうに空を飛んでいるところ、悪いな。でも、俺は、こんなところで死ぬわけにはいかないんだ。

 さらに俺はイメージを重ねた。

「暴れ回れ!」

 その掛け声とともに、新しく生成された吊り橋は、まるで鞭のようにブンッ! と激しく回転し、空中にいるオンモラキ達を次々と叩き落としていく。

 怪鳥達の絶叫が、谷間にこだました。

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