翌朝。4月14日。台所で母の朝食準備を手伝っていると、廊下に足音がした。振り返ると、作務衣姿の蓮さんが立っていた。髪は整えられているが、いつもより早起きしたのか、目元がわずかに眠そうだった。「おはようございます」「おはよう」「今日は、何から始めればいいですか」母が驚いた顔をした。「え、蓮さん自ら?」「昨日の客室掃除が、不十分でした。源さんに指摘を受けました」「まあ……」母が申し訳なさそうにしたが、蓮さんは穏やかだった。「正しい指摘です。今日はやり直します」それだけ言って、蓮さんは掃除道具を取りに向かった。私は、その背中が廊下の角を曲がるまで見送った。◇午後。蓮さんは源さんに頼み込み、皿洗いをさせてもらっていた。「邪魔になるだけだ」と源さんは渋ったが、蓮さんは黙って流し台に立った。配膳の合間に、厨房の扉が少し開いていた。私はそこから、そっと中を覗いた。蓮さんが、無言で皿を洗っている。慣れない手つきだった。でも、急がない。雑にしない。一枚一枚を確かめるように、丁寧に。源さんが横目でそれを見ていた。何も言わなかった。それが、かえって試されているようだった。◇夕方、配膳を終えて厨房に戻ると、源さんの声が聞こえた。「皿は、縁から洗え」蓮さんの手が止まる。「客が口をつける場所だ。そこに汚れが残っていたら、板前の恥になる」「……承知しました」蓮さんはすぐに、スポンジを縁に当て直した。正確な動作で、皿を回す。たった
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