私たちはそれから何をするわけでもなく、ダラダラとして過ごした。「紬は、普段何してんの?」「しがない会社員ですよ。会社じゃオカンと呼ばれています」「ふーん」 そんなどうでもいい話をしていた。 いつの間にか、時計の針が深夜0時を回った。シンデレラの魔法が解ける時間だ。彼もそろそろ帰らなければならない。「……帰るか」 彼は名残惜しそうに身を起こした。渋々といった様子で、元の不審者スタイル(黒い服)に着替え始める。 モチ犬スウェットを脱ぐ時の、あの悲しげな顔といったらなかった。 着替えを終えると、彼は脱いだスウェットを丁寧に畳み始めた。ハイブランドのシャツは床に投げ捨てていたくせに、この1980円の服は角と角を合わせて几帳面に畳んでいる。 そして。彼はスタスタと私の寝室に入り、クローゼットを開けた。「えっ、ちょっ……」 止める間もない。彼はクローゼットの一番端、空いていたスペースに畳んだスウェットを置いた。まるで、そこが最初から自分の定位置であったかのように。「ここ、俺の場所な」「えっ、持って帰らないんですか?」「持って帰ったら、次着てこれないだろ」 彼は当然のように言った。「ここに置いておくから、また着に来る」 ぱたんとクローゼットの扉を閉める。私のクローゼットの一部が、正式に彼に占領された瞬間だった。「鍵もあるし、服もある。……これでいつでも、会いに来れる」 彼はポケットから、さっき渡した合鍵を取り出した。それを握りしめて満足そうに微笑む。「じゃあな、紬。……おやすみ」「あっ、あっ、はいっ!」 甘い声。 つい先ほどまであのダサ犬スウェットを着ていたと分かっていても、あの声と顔の破壊力は抜群だった。名前を呼ばれただけで、腰から下の力が抜けそうになる。 彼はひらりと手を振り、
최신 업데이트 : 2025-12-11 더 보기