(……え?) 小夜子は耳を疑った。父もハッとしたように手を打った。「そ、そうです! 小夜子がおりました! これでも戸籍上は私の娘。正真正銘、白河の血を引いております!」 倉庫の奥から埃を被った不良在庫を引っ張り出してきたような口ぶり。本来の商品の代わりに、オマケを差し出して手を打とうという、透けるような浅ましさだった。 麗華も「ああ、その手があったわね」と言わんばかりに、小夜子を嘲笑うような目で見下ろしている。 小夜子は呆然とした。自分が選ばれた喜びなど微塵もない。あるのは「麗華の身代わり」として、生贄の台座に引きずり出されたという事実だけだ。 隼人の視線が、ゆっくりと小夜子に向けられた。小夜子は思わず身を縮めた。(私のような、ボロボロの娘に……3億円の価値など……) 値踏みするような視線が痛い。当然、あり得ないと激怒されると思った。ふざけるな、と一蹴されると。 しかし隼人は眉一つ動かさなかった。「戸籍に傷はないか? 白河の籍に入っていることは間違いないな?」 感情のない声。彼は小夜子の顔も見ず、服も見ず、ただ「スペック」だけを確認した。「もちろんですとも! 亡くなった母親も……その、由緒ある家柄でしたから!」 父がこの期に及んで嘘をつく。 小夜子の母は白河家に勤めていた使用人で、平凡な出身だったのに。「ならば、構わん」 隼人は即決した。一秒の迷いもなかった。「私が欲しいのは『白河ブランド』という看板と、それを持つ配偶者だ。中身が誰であろうと興味はない」 隼人の言葉は、淡々とした事実の羅列だった。そこに侮蔑の感情すら乗っていないことが、かえって小夜子に自身の立ち位置を理解させた。(この人は私を見ているようで、見ていない。彼が見ているのは私の背後にある「白河」という家名と、戸籍上の続柄だけだ。私は人間として扱われているのではない。壊れた機械の代替部品や、棚の隙間
Last Updated : 2025-12-08 Read more