All Chapters of 生神様になったらめっちゃ思い通りになるんですけど: Chapter 61 - Chapter 70

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第61話・種

「何を落としたんだ?」 リーヴェに言われ、俺は下の様子を見ながら答える。「種」「種?」「生神特製の種」「だから……!」 キガネズミはきぃきぃ言いながらネズミの上に子ネズミが乗って、その上に孫ネズミが……方式でこっちに届こうとしている。ネズミは頭がいいって言うけど、なんか観光地の鯉みたいな勢いで上がってくる。 自在雲の高度を上げて対抗しながら、俺はまた種を【増加】し、ばらまく。「種って……餌を与えてどうするんだ」「毒か何かは使えないのか」「俺の属性に毒はないから無理。その代わり、【神威】が込められている」「魔獣に【神威】を与えてどうするんだ」「【神威】与えたのはネズミじゃなくて種」「だから何をやっているんだ」「もう少しで結果は出るかな」「キキィ……」 明らかに他に比べて鈍い鳴き声が幾つか聞こえた。「どうだ?」 見下ろした先には、大きく膨れ上がったキガネズミ。「キキィィィ!」 膨れ上がったキガネズミは、悲鳴を上げて内側から破裂した。「何、が?」「おし、成功」 破裂したキガネズミのあとには、たくさんの種がある。 目の前の餌にキガネズミは喜んで飛びつき、ネズミ階段は崩れていく。「だから、何を」「胃袋の中に入ったら【増加】……いやちょっと違うな、増殖する種を送り込んだんだ」「はあ?!」「生きた胃袋の中にあると増え続けて、内側から破裂させる。倒れた後には同じ種がたくさん。それをキガネズミは食い、また食あたりする、と」「……シンゴ、お前結構えげつないな」「だってあっちの数がえげつないんだもん」 ヤガリくんの言葉に俺は首を竦めた。「全員でキガネズミと戦っても、数千って数の暴力にレベル差は無意味だよ。おまけに相手小さいから振り払うのも大変だし」「確かに……まともに戦闘するより楽だし確実だ」 アンガスさんが唸った。「でも……それは人間が食べても危険なものなのでは?」「魔獣専用の生体兵器だから、人間が食べても大して問題はない。ちょっとお腹膨れるの早いかなくらい」「ならば、キガネズミ対策に村の周りに種を植えておけば」「うん、結構潰れてくれると思う」 パン、パンとあちこちで弾ける音。「とりあえずここにいるキガネズミは種に任せて、俺たちは村の様子を見に行こう。誰かが生きているかもしれない」 食べ物の匂いにつられ
last updateLast Updated : 2025-12-28
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第62話・ワー・ラット

 石造りの倉庫に入る。 恐らくそこに溜め込まれていたであろう穀物は、今は欠片もない。キガネズミが食い荒らしたんだな。 下を見ると、石でできたスライド式の扉がある。 キガネズミがいないのを確認して、俺は石扉をスライドさせた。 そこにあるのは階段。 一応キガネズミ対策にドラをスライドさせて閉めて、俺は階段を下りた。 ……ん? キィキィと言うあの独特の鳴き声が聞こえる。 キガネズミがここにいるってことは……ここにいた人が食い荒らされたってことか……? 最悪の想像に、俺は足音を立てないように下りながら、ポケットの中の種を触っていた。 最後の一段を降りる。 そこにあったのは。 床一面のキガネズミと。 真っ青な顔をした六人と。 頭がネズミで身体が人間と言う生き物がいた。 なんだあれは? 俺は反射的に端末を向け、【観察】した。【ワー・ラット(個別名メルク):レベル50/戦闘レベル45/属性:獣/人 敵対勢力に創り出された亜人種。人鼠とも言われる、半人半獣。人間と同等の知能を持つ。半獣の中でも戦闘力は低いが、ネズミと意思疎通ができ、ネズミの群れを召喚して戦わせることができる】 もしかして、あいつが……ここにキガネズミを送り込んだのか? まだネズミもワー・ラットもこっちに気付いてないようだ。 俺は影からその様子を見ていた。「……生神など降臨しない」 ワー・ラットは震える六人に向けて甲高い声でそう告げた。「この世界は、我らを生み出した神によって滅びる運命。お前たちも破壊の愉悦に身を委ね、全てを壊すのだ……」 カタカタと震えている六人は村人……ってことは、ワー・ラットは、端末の言う敵対勢力によって生み出された、世界を滅ぼす存在か。 なんで村人を勧誘してるかは分からないけど、とにかくワー・ラットとキガネズミを倒して村人を助けるしかない。 だけど。 俺は端末から俺のステータスを引っ張り出した。【遠矢真悟:生神レベル38/信仰心レベル15000/戦闘レベル7 神威:再生15/神子認定4/観察10/浄化10/転移3/増加10/創造4/直接戦闘5/援護戦闘7 属性:水5/大地3/聖6/植物4/獣4/岩3/鉱石3 直接戦闘神威:[攻撃]水流・水/[防御]木壁・植物 援護戦闘神威:[攻撃]
last updateLast Updated : 2025-12-28
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第63話・はーい

 ネズミがメルクとか言うワー・ラットの方を見ていて、村人も目をそらせなくて、ワー・ラットがこっちに気付いていないので、俺は階段の一番下の段に座って考え込んだ。 ワー・ラット……人鼠とでも言うのかね、そいつがネズミを操ってるって言うけど、そこまで操っているかだな……。 キガネズミは常に空腹状態だから、ほぼ二十四時間物を食っている習性があるらしい。だからこそあの種が効くわけだけど、そのネズミが人間を食ってないってことは、食欲を我慢させるだけの影響力があるってわけで。 俺が戦うとしても、ワー・ラットとはレベル差があり過ぎる。キガネズミは水流で一掃できても、ワー・ラットが生きていたらいくらでも呼び寄せられる。 何とか、ネズミとワー・ラットをまとめて倒せる方法があれば……。 神様って呼ばれてるけど、生神って言うのは基本的に【再生】と【創造】が取柄。【創造】で相手をぶっ潰す何かを創るのが俺の能力。 何を創れば、あのワー・ラットとキガネズミに効果があるのか。 とりあえず、これを使ってみるか。 俺は端末で、無限の種にキガネズミが大好きな匂い、と言うのを付与して、五粒ほどをほい、とネズミの群れの中に放り込んだ。 何匹かのネズミが気付いて、その種を口に入れる。 あとは放っておくだけ。腹の中で種は【増加】し、限界を超えるとたくさんの種を残してネズミは破裂する。 エグい絵面だが、キガネズミ対策の種なので人間が食べてもお腹いっぱいになるのが早まるくらいで安全安心。 あっと言う間に、五匹のキガネズミが破裂した。 その種に他のキガネズミが食いついて、それが……と繰り返す。「な、なにしてる!」 ワー・ラットのキィキィ声が地下倉庫に響いた。「何だ、この種は! いかん、食うな! 危険だ!」 ワー・ラットがキガネズミの食欲を抑え込んだのは、キガネズミが三分の一以下にまで減った頃だった。 キィキィ文句を言うキガネズミの中に入って来て、あちこちに散らばる大量の種を一粒手に取り、くん、と匂いを嗅ぐ。「ぬぬ、何と言う香《かぐわ》しさ……。食欲が沸き立つ……。しかし駄目だ、これは危険だ。だから危険だと言っているから食べるんじゃない!」 空腹に耐えかねたキガネズミはまた一匹種を食って、破裂する。「貴様ら、これは何の種だ!」 ワー・ラットは六人の民の前に種を突き付けた。
last updateLast Updated : 2025-12-29
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第64話・守ってきたもの

 顔は平然としているけど、俺は比較的焦りとか心配とかそういう感情が表情に出ない方。内心では、ワー・ラットちょっと強いよなー水流でキガネズミ一掃してから一対一に持ち込んでもレベル差あるしなー今から自在雲の上で待ってる神子を呼んで戦ってもらってもなー……とグダグダ考えていた。 だけど、民が立ち上がった。「まさか……生神様では!」 キィ、と鳴くネズミが立ち上がろうとし……。「正解、からの水流!」 空中から現れた水の流れに、キガネズミはあっさり流され、壁に叩きつけられてノックアウト。「こっちへ! 早く!」 俺は村人に声をかけた。 六人が走って寄っていく。 俺が一番後ろを走って水流使い続ければ何とか逃げ切れるか?「本当に、生神様でいらっしゃいますか!」「生神だけど今この状態で何かできる立派な生神じゃないからとりあえずここから逃げる!」「お、お待ちを!」 種の匂いに食う食わないの究極の二択を迫られているネズミの間を割ってこっちに来た一番の年より……恐らくアンガスさんのお父さんで村長さんだろう……が奥を指した。「ん?」 そこには、始まりの神殿にあったのと同じ円と十字を組み合わせた模様がある。その模様は俺のM端末にもついている。恐らく生神を現す紋章。「生神様ならばその封印を解けるはず!」 いや解けるはずって言われても封印の解き方なんて知らないよ?! とりあえず、M端末の紋章の部分を当ててみる。  ゴゴゴ……ゴゴ……。 鈍い音を立てて、両開きの扉が開いた。「まさかっ、生神!」「とりあえず入ってっ」 村長に背中を押され、俺たち七人はその小部屋に入った。 ワー・ラットがキガネズミを部屋に突入させる直前に、石の扉は塞がった。「生神様……この村に来てくださったこと、感謝します……。私は村長のノガスです」「あんたの息子さんはこの上にいるよ」「息子と孫は、無事だったのですか」「うん。娘のイリスちゃん、だっけ? あの子は他の家族と原初の神殿で待っている。アンガスさんが上にいる。だけど、ここに逃げ込んだのはまずかったんじゃ?」 俺は首を傾げた。「出口、ないだろ」「いえ、私達が村に残ったのは、生神様にここに来ていただくためだったのです」 そう言われて、やっと俺はこの部屋の様子を見た。 壁にかかっているのは、古ぼけた武器らしきものと服ら
last updateLast Updated : 2025-12-29
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第65話・装備

 一応浄化された神具を一つずつ【観察】で調べる。 まずは白を基調に青をアクセントとした衣装。【神具「白き神衣《カムイ》」レア度SSS 生神のみが装備できる唯一の衣。全ての攻撃に耐性があり、衣を抜けて攻撃を通すことはできない。装備者を高温、気温、紫外線、放射能、病原菌などの全ての有害なものから守り、汚れたり、破れたりすることは決してない】 ……さらっと書いてあるけどさ。 これってチート中のチートじゃね? それこそ神様が出て来なけりゃ俺を傷つけることはできないってわけか? ……あ、俺生神だっけ。端末も確かレア度SSSだから、端末の力を使えばこの防御も抜けるかもだけど……いやそれでもとんでもなくね? 次の剣は何だ剣は。鏡のように俺の顔を写す刃。めっちゃカッコいいんですけど。【神具「蒼海の天剣」レア度SSS 生神のみが装備できる剣。装備者が敵と認識したものに、この刃で少しでもダメージを与えれば、そこから切り裂いて両断し、いかなる手段でも破壊することはできない】 ……えーと、つまり。あれだ。この刃で傷一つつければすっぱり行くってことか? これもまたチートじゃね? あとは、片手で持てる程度の大きさの盾か。もう何が出ても驚かないぞ。【神具「水鏡盾」レア度SSS 生神のみが装備できる盾。大きさは自在に拡大・縮小され、全ての物理・魔法攻撃を反射し、如何なるものであっても破壊することはできない】 ……チートランクトップクラスじゃね? 何でも反射って。この青い鏡みたいな盾を構えて立ってれば攻撃が敵に反射して勝手に自滅するってこと?「これらの神具を生神様にお渡しするために、我々はビガスに残っていたのです……」「あ……ありがとう」 こんなキガネズミの大群の中で、神具を守ってくれてたなんて。 端末を見ると、【「白き神衣《カムイ》」「蒼海の天剣」「水鏡盾」を装備しますか?】と出ていた。 要するにお着替えタイムはいらないってことか。 Yをタップすると、光が放たれ、次の瞬間、俺は紺のスーツから白い衣装へと変更していた。腰には鞘についた剣。背中には水鏡盾。「おお……何と神々しい……。よかった、命あるうちに生神様にお会いできて……」 どーん、どーんと石壁の向こうから音がする。「もう逃げられんぞ貴様らーッ! そこで餓死するか、我々に降伏するか、二つに一つだーっ!
last updateLast Updated : 2025-12-30
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第66話・装備済み初戦

 で、今は剣を右手に、盾を左手に持っている。「封印の解放……神具の浄化……貴様、まさか本気で本当の生神か……?」「さっき言わなかったっけ」「そう言えば言っていたな……オレは運がいい……」 ワー・ラットは嬉しそうに言った。「生神を捕えれば、オレは我らが破滅の神に手ずからの褒美を頂けるだろう……」「破滅の神の褒美って、ぶっ殺されるだけなんでない?」「フンッ……オレたちは破滅のために生み出されたんだ。偉大なる唯一神の手によって殺されることは最高の褒美なんだよ……」「なるほどね。俺とは相性が合わないわ」「行け、我が下僕!」 キガネズミが一斉に襲い掛かってきた。 俺は黙って種をその群れに放り込む。「キゥゥッ!」 飢えているために食欲に正直なキガネズミは、種を奪い合って大騒ぎ。懲りねーな、さっきそれで仲間結構死んでんのに。まあ動物だからな。「くそくそくそっ! やめろ! やめろと言っているんだ! これだから知性のない魔獣が!」 ワー・ラットの命令を聞くキガネズミはほとんどいない。俺は一歩下がってネズミが減るのを待っていた。たまに襲い掛かってくるヤツもいたが、服を食いちぎることも出来ず、歯が折れたりして落ちる。その苦痛で支配を解かれ、飢えに囚われ、種を食い。 あっと言う間に、床は大量生産された種でいっぱいになった。「生神が、卑劣な真似を!」「あんなたくさんのネズミに襲われたらいちいち武器や魔法を使っても手に負えないだろうが。卑劣な真似って言われてもまとめて吹っ飛ばすか自滅を待つかくらいしかないだろ?」 言って俺は立ち上がった。 右手で剣を構える。「ふん、ならば、俺の手で殺してやるまでだ」 ネズミ頭の人間の身体が歪んだ。 急に肉体が膨れ上がる。内側から毛が生えて、指が爪に変わって、尻から尾が伸びる。 人間並みの大きさのキガネズミが出現した。「うお」 人間大のキガネズミってえげつねー。こいつも多分腹減り状態なんだろうなあ。俺を食ってしまおうって考えなんだろうなー。 ワー・ラットは俺の所に飛びついて来ようとした。 俺は咄嗟に左手の盾を前に出す。  がきぃん! すごい音がして、点々と赤いものが飛ぶ。 巨大キガネズミは鼻の頭から血を流している。 すっげ。盾が完璧に反射した。噛みついたのを反射されて、鼻の頭に傷をこしらえてしまっ
last updateLast Updated : 2025-12-30
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第67話・初めて

 う~ん、実は武器を手に取ったことなんてないから、戦い方が分からない。 だけど、傷さえつけてしまえばこっちのもんだ。 よっ、と剣で巨大ネズミを指す。「破滅したいって言うのがお前らなら、自分らだけ滅んでくれよ」「フンッ」 鼻面を赤く染めながら、ネズミは言った。「全てを巻き込んでの破壊《カタストロフィ》こそ、我々の望みだ」「うん、分かった。じゃあ一人で死んでくれ」 俺は油断なく盾を構えて、距離を詰めた。「キキィ!」 巨大ネズミは床を蹴ろうとして……床に散乱する種に足を滑らせた。 今だっ! 俺は剣でネズミの鼻面を狙った。 切っ先が触れる、かすかな手応え。 次の瞬間、ネズミは鼻面から真っ二つになり、光と化して消えた。「終わった?」 予想以上にあっさり終わった。「終わった」 俺は自分の手を見た。「終わった……」 ヤバい。 手が震えてきた。 人語を介する生き物を、殺した。 オークを倒した時、あいつらは人間の言葉を喋らなかったし、ただひたすら襲ってきただけだったし、魔法で触れずに一掃したから、何とも思わなかった。 ネズミに無限の種を与えた時は、只のネズミだと思ってなんとも思わなかった。 だけど。巨大なネズミは、確かに俺と意思疎通できていた。 意見は合わなかったけど、人間に近い思考回路を持っていた。 そんな相手を、殺した。 俺が。 この手で。 直接。 冷たい汗が流れてくる。「……ダメだな」 俺が呟いた。「怖くなってきた」 手が小刻みに震えている。 その時、端末が鳴った。【遠矢真悟:生神レベル40/信仰心レベル17000/戦闘レベル30神威:再生15/神子認定4/観察10/浄化10/転移3/増加10/創造4/直接戦闘15/援護戦闘7属性:水5/大地3/聖6/植物4/獣4/岩3/鉱石3直接戦闘神威:[攻撃]水流・水/[防御]木壁・植物援護戦闘神威:[攻撃]武器強化・鉱石+大地/[回復]回復・聖固有スキル:家事全般10/忍耐10/剣術15/盾術15固有神具:自在雲/導きの球/白き神衣/蒼海の天剣/水鏡盾】 固有スキルにもレベルがついた? 今までなかった剣術と盾術が追加されてる。レベルもアップしてる。でも、精神面
last updateLast Updated : 2025-12-31
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第68話・まだ救っていない

 封印の扉の向こうで待っていてもらった村人さんたちは、大量の種を残して誰もいなくなった地下倉庫を見て絶句し、そして泣いて喜んだ。「もう……ここを出て大丈夫なのでしょうか」 それでも地上は危険だと思っている村長に頷いて、俺は一人、地上に出た。「シンゴ!」 ヤガリくんが駆け寄ってきた。「どうした、その恰好は」「封印された聖域にあった神具。もらった」「シンゴ様、御無事で!」 シャーナも駆け寄ってくる。「キガネズミは?」「様子を見ていたが、大体種で潰れて、残っていたのも散っていった」 レーヴェは冷静に答えてくれた。「あー、やっぱワー・ラットが死んだら逃げるかー」「ワー・ラット?」「うん、ここの地下で村人の生き残りを脅していたワー・ラット」「そんな厄介な敵がいたのか」「ここにあった武器が強すぎてレベル差一気に埋まったけど」 うん、ボロボロになった村に、キガネズミの独特の獣臭はしない。 地下に向けて声をかける。「キガネズミはいなくなったよ。出てきて大丈夫だ」 恐る恐る、と言った体で六人が出てきた。「本当に……キガネズミの気配もないな」「父さん!」「アンガス! アンガスじゃないか!」 村長が飛び出してきてアンガスさんの手を取った。「確かお前たちには原初の神殿に行くようにと言ったんだ……」「ああ、何とか辿り着いた。生神様の御力で食べ物と飲み物はあったし、神殿は復活していた。生神様と神子が来て、村を助けると言って下さったんだ」 アンガスさんは村長と一緒にこっちを向くと、膝をつき、深々と頭を下げた。「生神様、ビガスをお助けいただき、ありがとうございます……!」「まだ完全に助けたわけじゃないから」 お礼は後で、と俺は二人の肩を叩いた。 キガネズミを追い払っただけで、村を助けたわけじゃない。 敵対戦力は全ての破壊を目的としているのが分かった。 となると、キガネズミと首領のワー・ラットを倒したとしても、次の敵が狙ってくる可能性が高いんだよなあ。無限の種は魔獣だったら効くけど、ワー・ラットのような欲望を抑え込める敵だったら種は食べないし。 エルフの武器は再生したし、ドワーフにはアシヌスを渡したけど、この人たちを守る方法を考えないと……。 う~ん……。「とりあえず一度原初の神殿に戻ってこれからのことを考えるってのはどーだろ
last updateLast Updated : 2025-12-31
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第69話・身を守れる何か

 とりあえず、民長や残っていた村人と共に、【転移】で原初の神殿に戻った。 待っていた村人たちが、村長や他の五人の村人を見て涙を流しながら喜び合う。「おじいちゃん! おじいちゃん!」「イリス! よかった、生きてたのか……!」 そんな喜びを他所に、俺は考え込んでいた。 ……う~ん……う~ん……。「どうしたシンゴ」「難しくて」 心配そうに聞くヤガリくんに、俺は自分の眉毛が八の字になっているのを感じていた。「エルフは弓矢で身を守れる。ドワーフはアシヌスがいる。ところが、ビガス村にはどうすればいいのかがさっぱり分からない。難しいなあ……」「ヒューマンの身を守る何か、か……」 ヤガリくんも腕を組む。「人間……この世界じゃヒューマンだっけ……って、どんな特徴持ってんの?」「ヒューマン? ……人間の中でも、何でもできる、が取り柄だが、逆を言えば器用貧乏」「あ~……うん分かる」「不得意はないけど得意もない。敢えて言うなら繁殖力の強さか」 繁殖力ねえ……。それは武器にならないなあ……。 人間が扱えて、身を守る手段になる物……。「思いつかねえ……」「守るのは人間じゃなくてビガス、と言う考えではどうだ?」 ヤガリくんを見返すと、ヤガリくんは戦斧にもたれかかって言葉をつづけた。「ビガスは割と最近まで居住地として機能していた。穀倉地帯と言うだけではこの大崩壊の時代でここまで生き残れない。恐らくは何か身を守る術があったと考えられる」「ヤガリくん賢い」 確かに、前に聞いた話では、ビガスはキガネズミに襲われるまではきちんとして存在していたってことだし。「村長さんに聞くか……いや無理かな」「何で」 俺は首を竦めてチラリと十数人のヒューマンの方を見る。 今だ生存と再会の喜びに浸る人たち。「あれを引き離して村で何かしていたかって聞くほど俺たち急いでないし」 再会の喜びがある程度終わって、みんな落ち着いたところで、ビガスについて聞いて見た。「ビガスがここまでもったわけ、ですか」「ああ。森エルフの村もドワーフの無窮山脈も、随分昔に落ちたって聞いてる。だけどビガスは少なくとも一年前までは村として機能してたって言う。その秘密を聞きたい」「何故、でしょう」「みんなを守るため」 当たり前のこと聞くなあ。「俺はこの、モーメントって世界を再生したいと、
last updateLast Updated : 2026-01-01
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第70話・罠の植物

「はい、居住区や働く場所の周りを深く掘り、そこに槍を立て、侵入口は跳ね橋一つにしてありました。入れる人間は一人ずつ調査し、確認してからの出入りでした。襲撃者にはクロスボウを放てるよう訓練もしておりました。生神様に神具を引き渡すまでは生き残らねば、と。ただ……深い堀も跳ね橋も、クロスボウも、キガネズミには通用しませんでしたが」 そうだろうなあ。自在雲の上にいる俺たちを狙って観光地の鯉みたいに上へ上へと昇って来られれば、数千を超える数だ、いずれ堀を超える。 罠、か。 ん~……。「そうか」 ピン、と頭のどこかが光った。「罠だ」「はい、ビガスは……」「そうじゃなくて。ビガスの周りを、人間には効果がない、敵対勢力のみに効く罠で守れば、安全なんじゃないかと思って」「しかし、罠とは不審者に効くものです。敵対勢力のみに通用する罠など、存在しません」「まず、ここに一つある」 俺は民長に種を手渡した。「これは」「対キガネズミに生み出した、無限の種」 ヒマワリの種にも見えるこれは、キガネズミの食欲をあおる臭いを持ち、一旦魔獣の体内に入ったら内側から破裂するまで増殖し続ける、俺が今まで【創造】した中でも一番えげつない代物だ。「俺が元居た世界には、食虫植物って言う、虫を罠にかけて栄養として吸収する植物があった」「要するに、生きた罠を作ろうというわけか?」 横で聞いていたレーヴェが口を挟んできた。「そう。敵対勢力のみに効く生きた罠があれば、後はもともとビガスにあった罠とかを再生させれば十分身を守れる。さて、ビガスの地図、は、と」 俺はM端末をいじる。M端末は一度入った地域や建物などの構造も出すようになっていた。それでビガスを選択すると、確かに居住区や畑をぐるりと取り囲む堀と跳ね橋があった。「田畑と居住区は普通に再生、でいいか。あとはぐるりと無限の種を育てればキガネズミや魔獣は途中で全滅する」「知性の高い敵対勢力はどうする。ワー・ラットが無限の種の誘惑に堪えたと言っていたじゃないか」「正規のルートを使わず入ろうとする侵入者にだけ反応する罠があればいい。捕縛と、内部への警告用に何か音が鳴るのがいいな」 M端末の上に浮いたビガスの地図の上に俺は指を走らせる。「まず何か音の出る植物を、正規のルート外に置いておく。警告だ。これ以上近付いたら何をされても仕
last updateLast Updated : 2026-01-01
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