All Chapters of 生神様になったらめっちゃ思い通りになるんですけど: Chapter 81 - Chapter 90

107 Chapters

第82話・種族

 俺が端末を向けてタップすると、黄色い花が溢れかえった。「これを、居住区にも仕掛けとく」 蔦とスイセンが、堀から外に向けて乱れ咲き。「元からあった罠とかも【再生】しておいたから、これで敵対勢力とか迎え撃てるでしょ」「あ、りがとう、ござ、います」 お礼の言葉は途切れ途切れ。「見つけた農業とかできそうな人をこっちに送っていい?」「は、はい」 コクコクと頷く民。 かなり怯えさせちゃったなあ……。「じゃあ泉と鉱山見てこようか」 俺は村の居住区の方へ向かった。「子供たちは心配しなくていいから。シャーナさんが見ていてくれている」「はい!」 アンガスさんと一緒に神殿に辿り着いた子供二人を連れたお母さんが大きく頷いた。「何かあるようだったらメモにまとめておいて。定期的に回るつもりだから」 そのまま神殿から森エルフの泉へ【転移】した。 相変わらず森の香りの強い場所で、とうとうと清き水が溢れ出して流れている。「生神様!」 俺の姿を見たエルフの子供がわあわあと寄ってくる。「おう、元気だったか?」「うん!」 エルフには子供も多いけど、よく考えたら寿命が長い分成長も遅い人間なんだよなあ。レーヴェだって百は超えてるって言ってたし。「何か問題は?」「今のところは。オークどもは弓で撃退できていますし」 エルフは細く見えて結構強い人間なんだなあ。「畑は?」「聖水を引き込んで、薬草や神草を増やしたりしています」「神草?」「神の祝福から生まれた植物で、身体の穢れを内側から浄化するものや食べたものに怪力を与えるもの、幸運に恵まれるものなどを」 知らないなあ。「生神様が知らなくても仕方ありません。この世界を捨てた神が残して行った……いや、回収し忘れたとでも言うか……そういうものです」「じゃあ束縛蔦も神草かなあ」「ほう、蔦」「うん。侵入者を絞め殺すって言う物騒なヤツだけど、俺が創ったんだから……」「しかし、それはヒューマンにやったものでしょう?」 エルフの長老が露骨に嫌な顔をした。「神草とはエルフに下賜された神聖なるものなのです。ヒューマンにやる程度のそんなもの、神草とは言えません」 ん? 露骨にヒューマンをけなしてないか、この人。「気にするな」 ヤガリくんが小声で言った。「エルフは基本的に自分が人間の中で一番
last updateLast Updated : 2026-01-06
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第83話・限界範囲

 無窮山脈に行くと、そこでは声が飛び交っていた。「銀鉱石はまだ続いていそうか?」「そろそろ限界かな」「生神様に頼まなきゃあ……」「俺が何?」 声をかけると、ドワーフたちが目を見開いてこちらを見て、そして深々と腰を折った。「これは、生神様!」「ちょうどいい所に!」「困ったことでも?」「はい、こっちへ」 ドワーフたちは聖域から居住区に出て、そこから続く坑道へと案内した。「アシヌスはどう?」「素晴らしい生き物だ! 可愛く強く逞しい! もう全員朝に夕にブラッシングして撫でて……」 うん、ドワーフは思った以上にモフモフが好きらしい。「荷も運んでくれるしコボルトやラスト・モンスターが襲い掛かって来ても撃退の手伝いをしてくれる、本当に賢く素晴らしい」「うん、そこまで言ってくれれば俺も創った甲斐があるけど」 そこで、思い出して、俺は言った。「悪い、ドワーフのために創ったアシヌスだけど、原初の神殿で守っているヒューマンの子供たちの護衛に、もっと小型のアシヌスを創った。……やっぱりアシヌス、小型でも許せない?」「許せない? まさか」 鉱山長が首を横にぶんぶんと振った。「子供を守る為だろう? ヒューマンであっても子供には友達が必要だ。これから生神様が世界の再生を続けていくのに、幼子を敵から守らなければならない時もある。その為にアシヌスが選ばれたのであれば、俺達は怒りやしない。むしろアシヌスについて語り合える相手がいることが嬉しい」 ……予想以上にアシヌス大人気だな。 俺と鉱山長とそのアシヌスが先頭を行き、その足元でコトラが進む。数人のドワーフとアシヌスが並び、一番最後尾にレーヴェとヤガリくんとブランが歩いていく。「これが分かるか」 言われなくても分かった。 それまでキレイな断層を見せていた壁が、その先からはボロボロのグズグズなのだ。「あー……前の【再生】で届かなかったかー……」「ああ。大体円を描くように鉱脈が途切れてる」「掘りつくしちまったのか?」 ドワーフも随分人数が減っているはずなのに。「いや、アシヌスが元気で立派に働いてくれるから、採掘が進んで」 そこまで進むもんか? いや、癒しが傍にいると仕事が捗るのは確かだけど。「生神様がもう少し来なかったら、溶鉱炉の方に主力を移そうと言う話になっていたが」 ああ、鉱石掘り出す
last updateLast Updated : 2026-01-07
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第84話・謝罪

「あとは、溶鉱炉を少し直してもらえれば」「溶鉱炉?」 学校で習った反射溶鉱炉を思い出す。「ああ。古の時代に鍛冶の神が与えて下さった神鉱炉なんだが。神の力が失われて、普通の溶鉱炉しか使えないんだ。神聖銀を作るには神鉱炉が必要で」「よし、案内してくれ」「我々はアシヌスに乗るが、生神様は」「ヤガリくんはブランに乗るよな」「ああ。……シンゴはどうする?」 俺は何もない所から自在雲を引っ張り出した。「レーヴェ、コトラ、乗って」「ああ」「ぅなっ」 アシヌスたちがドワーフたちを乗せてぽっくりぽっくり歩き、俺たちは自在雲でゆっくりゆっくり進む。「あの、済まない、シンゴ様」「?」 急にレーヴェに謝られ、俺は首を傾げた。「泉での、長老の対応のことだ」 ああ。なんかヒューマンも差別するようなこと言ってたな。「エルフは古の時代、一番最初に生み出された人間と言われている」 ピリッと、空気が凍った。 ドワーフたちだ。「済まない、ドワーフの諸君には不愉快かもしれないが、生神様と、ヒューマンと、ドワーフに謝罪したいんだ」「謝罪?」 ドワーフたちが胡散臭そうに言う。「そうだ、長老発言の謝罪だ」 確かに言ってたな。神草はエルフが神から下賜されたもので、俺が創ったような束縛蔦のようなヒューマンに渡されたような植物と一緒にするなとか。「異世界から来たという生神様は知らないだろうが、創造の時、全能神はエルフを最初に創り、神聖な森を守らせた、と言われている。森から川へ、海へと広がっていったが、エルフがなかなか増えないので、ヒューマンやドワーフ、フェザーマンと言った人間を追加で創った、と言われていて、古いエルフはそれを信じている。神聖な森を預かるために生まれた我々を、海や川へ行った同族や大地を掘り返すドワーフ、平地を耕すヒューマンと一緒にするな、とな」 おーい空気がピリピリ通り越してびっしびし言ってるぞ。「だが、人間と呼ばれる種族は、同じ全能神に創られ、それぞれの神に守られた者たちで間違いはない。ドワーフは鉱山で鉄や宝石と言った宝を掘り出し、ヒューマンは田畑を耕して皆の食料を整える。森エルフは薬草などで人間を救う。そこに上下などないはずだ。しかし長老はそれを認めない。森エルフが人間の中で最も尊いと信じている。……ヒューマンと、ドワーフを見下す発言を、私
last updateLast Updated : 2026-01-07
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第85話・神鉱炉

「ここが神鉱炉だ」 案内されたのは、採掘区からも居住区からも離れた開けた場所だった。 何か大きな建物と熱気を期待していたけど、熱気もないし建物らしい場所もない。……確かに鉱山の中だから建物を建てる必要はないだろうけど……。「がっかりと言った顔だな」「あ、ごめん」「いや、謝られる必要はない。あちらに普通の溶鉱炉はあって、そこは稼働しているんだが、鉄や金銀が限度、神聖銀やその他の特別な鉱石は神鉱炉でしか加工できないから、まだ完璧にこの鉱山は再生されたわけではない」「う~ん……」 俺は思わず考えてしまった。「属性のことか?」 ヤガリくんに言われて、俺は頷く。「神鉱炉に足りないのは熱……つまり炎。俺の属性の中には炎がない。となると、神鉱炉を復活させるのは……」「とりあえず見てはくれないか?」 言われ、俺は炉の中を覗き込んだ。 炉には……穴? 深いぞ。 かーなーりー深いぞー?「神聖なる炎水が、昔は無窮山脈の一番奥に眠る「炎の道」と呼ばれる場所から導かれていた」 エンスイ? 即座に端末でタップしたところ、「溶岩」と言う回答が出てきた。 なるほど、溶岩ね。「世界が滅びに導かれ、炎水も沸き出す量が減り、終いにはこの通りだ。炎水がなければ神の鉱石は加工できない」「う~ん……」 俺は頭をガシガシ掻いた。「溶岩……炎水が枯れ果てたって可能性もあるぞ……。とすると、やっぱり炎の属性がいるなあ……」「炎水果てる時、神は炎の守護獣を目覚めさせる」 ぼそりと鉱山長が呟いた。「何それ?」「無窮山脈に昔から伝わるおとぎ話だ」 炎の守護獣。 炎の属性を持つ神獣?「工場長さん、詳しく教えてくんない?」「……俺もしっかりとは覚えてないんだが、この無窮山脈にずっと伝わっていてな」 ……無窮山脈の真の財宝は、炎水である。 世界の始まりの時、ドワーフの守護神は、炎の守護獣を使わして、地の最も奥底に流れる炎水を神鉱炉まで導き上げた。 炎の守護獣はそれを認めて長き眠りについた。 地の滅びの時、炎水が枯れ果てたなら、新たなる神の訪れを待て。 神は地の奥底へと赴いて、炎の守護獣を目覚めさせ、世界の再生と共に炎水を導き上げるだろう。「……って話だ」「あー……つまりだ」 俺は頭を抱えたくなった。
last updateLast Updated : 2026-01-08
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第86話・新しい神具

「俺はこの山脈の一番地下まで降りて行って炎の守護獣を起こして炎水を持ってこなきゃならないってことか」「おとぎ話だけど本当かどうかは分からない」「神が実在していた世界でそこまでしっかり伝えられた伝承がただのおとぎ話ってことはないだろ」 はあ~。 思わずため息が出た。「下まで潜るしかないかあ……」「ぅなー」 っと、そう言えば。 灰色虎は岩山の王者とか神の獣とか呼ばれていたけど、守護獣とはどう違うんだろう。 ヘルプをタップすると、すぐに回答が出る。 聖獣、神獣は、人間が神の使いとして崇める獣。神に等しい力を持つこともあるが、神そのものではない。 守護獣は、神の創り出した存在を守るために生まれた獣。守護神の力を受けた守護するものの化身でもある。 つまり、炎の守護神は炎の化身でもあるってことか。 神が去ると共にほとんどの守護獣もモーメントより去ったが、特に人間に親しい守護獣は眠りについたりしてこの神亡き破壊の時をやり過ごしていると言う。 炎の守護獣も、そんな一頭なんだろう。「う~ん」「今更悩むことはないのでは? シンゴ様」 レーヴェが声をかけてきた。「真悟様はこの世界を再生するために降臨されたはず。ドワーフの守護でもある炎の守護獣様を見過ごすつもりはないだろう」「まあね。ただ……」 俺は息をついた。「俺一人で行くしかないらしい」「シンゴ?!」「ぅなお?」「何故だ」「多分、この地下は溶岩地帯だ」 俺は神鉱炉の穴を指して言った。「溶岩ってのは俺の世界での炎水のことで、この底ではマグマがぐらぐら沸き立っていると思う。俺はこの服で守られるけど、水の属性魔法を持っていても全員熱と炎から守れるとは思えないし」「そう……か」「ドワーフのことを任せきりにするのは心が痛むが……」「気にすんな。【再生】は俺の仕事だ」「それなら、あれが役立つかもしれんな」 鉱山長が「持って来い」と子供ドワーフに合図した。 ドワーフ……最初にアシヌスを受け取ったあの子だ……は栗毛のアシヌスに乗って駆け去り、すぐに戻ってきた。「これ! リウスと一緒に見つけたお宝!」 ヤガリくんが目を見開く。「まさか、神具か?」「多分そうだと思う」 ボロボロの布のようなものと、枠だけ残った眼鏡。「ボロボロなのに破れないし壊れないから、もしかしたら神具かも知
last updateLast Updated : 2026-01-08
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第87話・炎水を求めて

 マントを羽織って、神鉱炉の上に立ち。 透過するイメージを持つ。 すると、すーっとエレベーターで降下していく感覚。 ……真っ暗。 そりゃそうか、岩の中だし、光もないし。 一応眼鏡はかけているから、見下ろせば炎水路と呼ばれる炎水を導く水路は視認できるので、無事に辿り着けはしそうだ。 今のところ真下に向かって続いている。 しかし、何処まで続いているのか……。 俺が来た居住区は、無窮山脈の中腹付近にあった。中腹と言っても世界一高い山脈、エベレストなんざ屁でもないって感じで高い山の中腹から、溶岩が流れているような地下まで行くのは時間がかかるだろう……。 一応白き神衣を着ていれば熱気や炎からは守られるだろうけど、そこに行くまで時間がかかりそうだなあ。 炎の守護獣ってどんなものなんだろう。炎と言うと、有名なのは不死鳥フェニックスとか……? いや、フェニックスは鳥だから大地のドワーフとは相反するだろうし……。 と、視界に違和感を感じて降下を止めた。 穴が斜め下に曲がっている。 俺はその穴に沿って移動する。 随分降りた気がするが……もう数百キロ単位は降りた気が……結構時間も経ってるし……そう言えばこれまでトイレとか行きたいとかならなかったな……食べ物は食べれたけどお腹空いたとかはなかったし……。 ぼーっと考えてると熱くなってきた。 ……いや、精神的なものじゃなくて、実際に熱を帯びて来たって言うか……俺が熱出したってわけじゃなきゃ……。 間違いない。 確実に周囲が熱くなっている! てことはあれだ、溶岩地帯に近付いてるってことか? 神衣が守ってくれるって言ってたけど、そういや靴は革靴のままだった。神衣の加護は足も込みか? 唐突に視界が広まった。 と、唐突に落下の感覚っ! そうか、透過のマントの移動能力は透過中だけなんだっ! 足元に不安があるから慌てて自在雲を引っ張り出す。  ぼふっ。 雲にキャッチされて、やっと俺は安心して辺りを見回せた。 ……あれ? てっきり溶岩地帯に落ちてきたと思ったのに、辺りは真っ暗。 じゃあ、あの熱は何なんだ? 振り向いて、眼鏡をかけなおして俺が降りてきた炎水の通る道を見た。 炎水の道は床らしき所で、真っ直ぐ奥に向かって伸びている。 ここを通って来ていたってことか? この先に行くのか。 何がある
last updateLast Updated : 2026-01-09
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第88話・火蜥蜴

 ……いや。  ぼこっ。  ぼこっ、ぼここっ。 何かが沸き立つ音。 そして、見通しの眼鏡を使っても歪む視界。 これは……。 少しずつ向こうが白く見える。 眼鏡は視界の邪魔をしない。 遠くを見るスキル【遠視】でじっと目を凝らすと、炎水路の果て、赤く白く熱を発する空間があった。 その真ん中には、黒い岩で造られた神殿。 周囲の溶岩が神殿を守るように取り巻いている。 守護獣の居場所はあそこか? 自在雲で行けるか? とりあえず雲の進行速度を遅めて、少し溶岩から離れるように上に浮いた。 神衣がなければ、今頃熱死していたかもな。自在雲も神具じゃなけりゃ蒸発してたかも。 そっと溶岩の上を通りかかると、突然熱が渦を巻いた。 なんだ? 見回して。 溶岩が高波のように伸びあがって四方からこっち目掛けてきている! やべぇ、どうしよう、何か使えるか、俺の防御魔法は木壁だけだし、いや、水流もあるなでもあれは攻撃だしいやそれを防御に生かせばとりあえずどうにかしなければ!「水壁!」 自在雲に乗った俺の周りに水の膜が張り巡らされ、突き抜けてこようとした溶岩と同士討ちして黒い岩と化した。「た、助かった……」 と思って、思い直す。「白き神衣って、炎からも守ってくれるんだっけ?」 咄嗟の新防御魔法が出来たけど、意味がなかったらしい。「ま……まあ、自在雲がヤバかったかもしれないし、これはこれで」『これはこれで、ではないだろう?』 凛とした声が届いた。 男か? 女か? どちらともとれる不思議な声。『焦って力の無駄遣いをしたのは間違いないだろうに』「いや、分かってるけど、とりあえず納得させなきゃね」 誰とも知れない相手に言い訳して、そして俺は慌てて顔を上げて目の前の神殿を見た。「もしかして、あんた……炎の守護獣か?!」『だけど、ここまで来れる力の主がここへ来たということは、我が目覚めなければならない時が来たということだろうね』 敵意がないようなので、神殿の床に降りて自在雲を戻した。 熱気は神殿の奥から発せられている。 俺は恐る恐る前進した。 神殿の一番奥に、炎を球にしたような珠が捧げられていた。 そういや、俺が落ちてきた原初の神殿も、そっくりな形してたような……。『もしお前がここへ来られる力の主ならば、こ
last updateLast Updated : 2026-01-09
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第89話・この世界に来た理由

 ゲーム好きな友人が見せてくれた本の中に出ていた、炎の精霊、火蜥蜴。 炎の守護獣だ。 蜥蜴にも小竜にも見える火蜥蜴は、ちろちろと火を吐きながら笑う。『なるほど、無窮山脈も随分と力を失ったようだ。我の力を受け取りながらも炎水を神鉱炉まで上げる力がないのだね。もう少し我の目覚めが遅ければ……』 火蜥蜴は俺をチラッと見た。『このまま炎もろとも我が消え去ったか、あるいは我を封じる力が暴走して無窮山脈を巻き込んで噴火したか。どちらにせよ世界の破滅が一層早まったであろう』 いや、どちらにせよって言っても選択肢によってはエライ違う結果が出るぞ?! 火山が休火山になってそのまま力を失ったならゆっくりとした滅びだけど、この無窮山脈が噴火したら文字通りとんでもないことになってたぞ?! 少なくともドワーフは全滅。この規模の火山だったら下手すれば森エルフの聖域まで噴煙が届いて火が陰り、世界中暗くなっていたかもしれない。 まさに黙示録の世界だ。「……とりあえず俺的には世界滅ぼしたくないんで、目覚めてくれて嬉しいです」『くくく、眠りにつく時は、二度と目覚めることのなきようにと願ったものだが……嬉しいと言ってくれれば我も嬉しい』 その声は、耳に届くのではなく、直接脳みそに伝わっているようだ。『さて、ここまで炎水が失われれば、文字通り無窮山脈も終わりを迎えかけているわけだが……生神よ、お前はどうしたい?』 へ?『我は人間とは違う。神の力を継ぐ炎の守護獣。故にお前が何処から何故に来たかも知っている。何処かの世界での生を全うし、その心が認められて神としてこの世界に来ることとなったのだろう?』「知ってんの?!」『知っているとも。神とはそうして世界を訪れ、救うもの』「じゃあ、俺がいた世界にも神はいる……あるいは、いた、のか?」『ああ、そうだとも。神のいなかった世界はない。神を決める存在が何者か迄は知らぬが、かつて生きた世界でかくありきと望んだ世界を、呼ばれた世界で創り上げるのだ』「じゃあ……なんで生まれた世界じゃできないんですか?」『我を生み出せし神は言っていた。己が生まれた世界であれば、必ず邪心が入っただろう、生前の心を失くさない限り世界を平等になど扱えぬと』 なるほど……確かに。 俺は真面目に生きてきたつもりだけど、嫌いな奴もいたし苦手な奴もいた。もしそ
last updateLast Updated : 2026-01-10
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第90話・名づけ

 俺を育ててくれたおじさんも言っていた。困っている人がいて、今自分が助けられる状態にあったら可能な限り助けなさいと。それはいずれ回り回って自分の所に帰ってくるから。ただし、見返りを求めて助けた途端に、それは意味がなくなるとも。 俺はおじさんのその言葉を胸に刻んでいる。 あの日、シャーナさんが世界を救ってくれと言って、この手に救う力があったから、俺は世界の【再生】を決めた。 エルフが、ドワーフが、ヒューマンが、助けてくれと言ったから救ってきた。 それだけのこと……なんだけど。『だが、理不尽にも遭っている、そうだろう?』 ……確かにな。 ビガスの人々は、俺の力を見て明らかに怯えていた。 エルフの長老は、あからさまにドワーフやヒューマンを蔑視している。 ここは決して理想郷ではない。 だけど。 この世界を救って、みんなが仲良くなれれば……もしかしたら、この世界は、理想郷になれるかもしれない。 誰も、理不尽に悔やむことがないように。 皆で、幸せに生きていける世界に。『お前の本当の望みは、皆が理不尽に遭わず幸せに生きられる世界か』 火蜥蜴に言われて,ようやく俺が本当に欲しかったものを探し当てた。 俺が目の前で両親を亡くした時のように、理不尽に大事なものを失わずに済むこと。 人間はいずれ死ぬ。世界はいつか滅び、神と呼ばれている俺もいつかは消えるだろう。 だけど、理不尽で大事なものを失わずに済む世界ならば、創れるんじゃないかと。 俺はそう思ってたんだ……。『それは困難な道だぞ?』 火蜥蜴は笑い含みに言う。 分かってる。 エルフとドワーフのように種族間で諍いを起こしている人たちもいる。 このまま俺が強くなっていけばビガスの人々のように俺は怯えられる存在になるだろう。 でも。 レーヴェとドワーフが少しでも分かり合えたように。 原初の神殿で守られている子供たちのように。 困難な道だけど、決して不可能ではないはずだ。 俺はそう思う。そう信じている。『甘いな』 甘いかな。いや甘いな。すごく甘い。 だけど、それが俺がやりたいことだった。『そうか』 そうだ。 ……って、いつの間に俺は頭の中で火蜥蜴と会話してたんだ?!『全く、生神は疎い』 どんくさいって言われちゃったよ……。『では、我はお前の神子となろう』「え?」 
last updateLast Updated : 2026-01-10
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第91話・名づけの結果

 俺がサーラと呼んだ、その瞬間だった。 白光が炸裂し、四方八方に光が散った。俺も見通しの眼鏡がなければ目が潰れていたかもしれない。 そう、白い光の中で、火蜥蜴はその姿を変えていく。 溶けた鉄が引き伸ばされるかのようにそれは形を変えながら大きく、伸びていく。 色は見えないが、その形や大きさは……姿は、明らかに人に近付いて行っている。 そして白い光が消え、熱気も収まり。 俺は目の前にいる人物を凝視していた。 一言でいうなら、ゴージャスなお姉さま、か? 赤みを帯びた金色の巻き毛に燃える炎のような真紅の瞳。妖艶、という言葉が似合う顔立ちと笑み。何より緋色の薄い布で覆われたボディラインがすげえ! 乳でけぇ腰ほせぇ尻でけぇ! やべぇぞこのお姉さん!「ふ……良い名をつけてくれたではないか」 言葉は音となって耳に入ってきた。耳に心地いいってのはこういう声なのか。「さ……サーラ、さん……?」「何を呆けた顔をしている。見ていたのではないか? 私が人の姿を取る所を」 いや……美人……なんつーか、迫力美人……。「ああ、知らないのだな。我らのような守護獣が人の姿を取るには、名を与えてもらわねばならんのだ。そして名によって姿は変わる。男を思って名をつければ我が姿は男に、女を思ってつければ女にな。つまりは、お前はこのような姿の我を望んだのだ」 いやいやいや。 確かに胸のデカいお姉さんは好みだけどぉ! ここまでの迫力美人だと何て言うか引くわ! 美人過ぎて手ぇ出せんわ!「さあ、神子契約を結ぼうではないか。何、案ずるな。姿など仮のものにすぎん。目の前に立つ好みのお姉さんとやらが如何なる姿であれ、本来はどのような姿だったかはお前が知っているはずだぞ?」 はあ。 思わずため息が出た。 確かに本来の姿を俺は見ている。小さなあの姿を。 しかぁし! だからと言って目の前のないすなばでぃのお姉さんの姿が消えてなくなるわけではない! 服からこぼれそうなたわわなおっぱいからは目をそらせないのだ!「おや? 認定しないのか?」「ああああいややややややりますやります」 端末を出したいが目の前のおっぱいに目が吸い寄せられる……。 震える手で何とか端末を出す。【神子候補:サーラ 信仰心レベル50000 属性:炎/神/聖】 やっぱ守護獣だけあって信仰心高い……そして属性
last updateLast Updated : 2026-01-11
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