数日後。俺は自宅兼事務所で、旅の準備を進めていた。 今回はこれまでにない危険な旅になる予感がする。菊千代は連れて行くとして、留守中の店をどうすべきか。そんなことを考えていると、入り口のドアベルがけたたましく鳴った。「こんにちは、先生!」 いつものように薫が入ってきた。だが、今日に限ってはその後ろに見慣れない男が立っている。「よう、……槻島、だったか」 らしくもなく、四方儀朔也が、世界の終わりかのような深い溜め息をついていた。「あの……何かあったんですか? 朔也さん。先生の家の前で、捨て犬みたいにずっとうろうろしていましたけど」 おずおずと薫が事情を尋ねてきたが、俺に心当たりなどあるはずもない。「……父上に……勘当されたんだ……」「ほう、そうか」 俺は内心で、やるじゃないかあの狸親父、と喝采を送っていた。「昨日いきなり『今まで甘やかしすぎた。自身の力で稼いでみろ。私が認めるまで家には入れん』と叱られて……半ば無理やり引越しのトラックに乗せられ、気づいたら近くのマンションに放り出されていたんだ」「マンション……? 家賃はどうするんだ」「いや、それは父上が払ってくれるそうだ」「ああ、あのマンションだ」 朔也は窓から見える、駅前の高級マンションを指さした。 ――前言撤回。 何が勘当だ。親バカにもほどがあるし、俺に迷惑を押し付けるな。「……祓(はらい)の叔父様なら、いかにもやりそうなことですね」 薫も呆れた目で朔也を見ていた。憤慨する俺に、朔也が一通の封筒を差し出してきた。「父上からお前に渡せと……」 中には、達筆な字でこう記されていた。『槻島君、迷惑をかけてすまない。 悪いが、しばらく朔也の面倒を見
Terakhir Diperbarui : 2026-02-06 Baca selengkapnya