「ご、五百億だと……!?」 会場が、蜂の巣をつついたような騒ぎになった。 五百億。 それだけの資金が注入されれば、神宮寺銀行の融資引き上げによる資金ショートは、完全に回避される。「馬鹿な……! そんな話、聞いていないぞ! 外資の勝手な介入など、金融庁が許すはずが……!」 神宮寺頭取が、血相を変えて立ち上がる。 彼の描いていた完璧な包囲網が、音を立てて崩れ始めていた。「……なぜだ。なぜ、そこまでしてこの男を助ける!」 頭取が、憎々しげにベルトラン氏を睨みつける。 ベルトラン氏は、静かに微笑んで、後方の入り口の方を手で示した。「私を動かしたのは、天道社長のビジネススキルだけではありません。……彼には、世界で最も勇敢で、美しい『代理人』がついているからです」 全員の視線が、再び入り口へと向かう。 ざわめきが、潮が引くように静まり返っていく。 静寂の中、車椅子のタイヤが絨毯を擦る、微かな音が近づいてきた。 三田村さんに車椅子を押され、鈴木さんに付き添われて現れたのは。「……莉子」 議長席の征也が、信じられないものを見るように目を見開いた。 私は、黒いワンピース姿で車椅子に深く腰掛け、膝の上で一つのファイルをしっかりと抱きしめていた。 顔色は蒼白かもしれない。化粧も最低限しかしていない。 でも、私の背筋は、かつてないほどピンと伸びていた。 数百人の視線が突き刺さる中、私は車椅子から立ち上がろうとした。「動くな!」 征也が、議長席を蹴り倒すような勢いで飛び出し、私の元へ駆け寄ってきた。 彼は私の肩を強く押さえつけ、車椅子に座らせたまま、その場に跪いた。「……なぜ来た。絶対安静だと言っただろう! お前、自分の身体がどういう状態か分かっているのか!」 彼の顔は、怒りよりも、恐怖で引きつって
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