異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい3 のすべてのチャプター: チャプター 61 - チャプター 69

69 チャプター

61話 崩壊する精鋭と、一歩踏み出す「護衛対象」

 その瞬間、俺の隣で上級貴族の男が勢いよく立ち上がった。「よし! 行くぞお前ら! 俺に続け~!」 は? 意味が分からん……。作戦は? 役割分担は?「行くぞ」と言われても、具体的にどう動くつもりなんだ?まさか、何の策もなくあのバケモノに向かって正面から突っ込むつもりなのか?いや、まさかな。エリートなんだから、何か勝算があるはず……。 そんな俺の淡い期待は、一瞬で打ち砕かれた。男は剣を振り回しながら、まさに猪突猛進という言葉がふさわしい動きで現場へ躍り出たのだ。「――なっ!?」 死闘を繰り広げていた騎士団長が、突然現れた闖入者に気づく。彼は驚愕に目を見開いたが、すぐさま凄まじい勢いで駆け寄り、突撃しようとした男の横面に烈帛の勢いで拳を叩き込んだ。「貴様! 何をしている!」 地面に転がった男は、頬を押さえながら呆然とした声を漏らす。「え? あ……その……待機をしていた場所にモンスターが現れ、移動をして来ました」 あまりに苦しい言い訳。騎士団長の額には怒りの血管が浮かび上がり、その目は燃えるような怒気に満ちていた。「その護衛対象と一緒に、この戦闘をしている場所へ来て……突撃してくるとはバカなのか? 死にたいのか? それに任務放棄、護衛対象を危険にさらすとはな……お前達、なぜ反対をしなかった!」 騎士団長の咆哮が、茂みに隠れていた他の護衛騎士たちにも突き刺さる。震えながら姿を現した彼らを、騎士団長は今にも斬り捨てんばかりの形相で睨みつけた。俺は最後尾で、そっと溜息をついた。彼らが叱責されている間も、目の前の「調整ミス」の怪物は、邪魔者が増えたことを楽しむようにその不気味な武器をゆっくりと持ち上げていた。♢崩壊する戦線「意見を致しましたが……身分差を弁えろと言われ、何も言えませんでした」 下級貴族の騎士が、悔しさに唇を震わせ、今にも泣き出しそうな声
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62話 理外の解体、そして畏怖の静寂

 だが、その下の配下まで教育が行き届いていないのが、この組織の致命的な欠陥だ。軍の階級と貴族の門地が混ざり合い、公の命令よりも個人の血筋が優先される歪な構造。戦場を知らない上級貴族が、手柄欲しさに闇雲な突撃を命じれば、どんな精鋭部隊でもあっさりと瓦解する。今まさに、目の前の惨状がその証明だった。「そうだね……でも、その騎士団はもう瀕死の状態だろ。もう、帰る準備をしておきなよ」 俺の突拍子もない言葉に、騎士団長は「何を言っているんだ?」と言いたげな、呆然とした表情で固まった。その背後では、巨大な二足歩行の化け物が、最後の一撃を叩き込もうと槍を天高く掲げ、不気味な咆哮を上げている。「……じゃあ、ちょっと片付けてくるから」 俺は一歩、また一歩と、死が渦巻く中心地へと悠然と歩みを進めた。♢制限解除の片鱗「まあ……コイツを倒してからでも帰る準備を、ゆっくりとしても良いか」 俺は虚空から収納を開き、一振りの剣を静かに引き抜いた。頭の中で「制限解除」のイメージを僅かに広げる。それだけで、全身の細胞が沸き立つような、圧倒的な力が漲ってくるのが分かった。 その瞬間、猛り狂っていたトカゲの化け物が、ピタリと動きを止めた。普通の人間には感知できないほどの微かなプレッシャー。だが、本能で生きる魔物には、俺という存在が「捕食者」に書き換わったのが理解できたのだろう。化け物は一歩、また一歩と後ずさり、やがて逃げ場がないと悟ったのか、覚悟を決めたように低い姿勢をとった。 俺が悠然と間合いに入ると、モンスターは手に持った武器を振るうと見せかけ、視界の外から強靭な尻尾を叩きつけてきた。「おい! 強力な尻尾の攻撃が来るぞ!! 死ぬぞ~避けろっ!」 背後で騎士団長が悲鳴のような警告を上げた。仲間たちを何人もゴミのように吹き飛ばした、戦慄の一撃だったのであろう。『ブンッ! ガシッ!』 空気を爆ぜさせるような轟音を立てて迫った尻尾を、俺は視線すら向けずに、左手一本で受け止めた。衝撃で周囲の砂埃が舞い上が
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63話 崩壊する虚飾の盾、冷ややかな視線

「あ、俺は護衛対象なだけですよね? 俺からは詳しいことは話せないというか……それよりも、俺の護衛が全くできてないですよね?」 俺はあえて突き放すような口調を選んだ。騎士団長の表情が、打たれたように強張る。「俺のことより、そっちの方が問題だと思いますけど、大丈夫なんですか? 護衛対象をモンスターのいる場所に無理やり連れてきて、さらに放置をする。それに加えて、護衛たちが全員モンスターに突撃していったんですけど? 王国を守るために選ばれた騎士団ですよね? それって、かなり不味いんじゃないんですか?」 俺の言葉は、静かな戦場に容赦なく突き刺さった。  王国軍の精鋭の中から選ばれた貴族。新人だからという言い訳は、この場では通用しない。王国の幹部が直々に護衛をつけるような重要人物に対し、これほどまでに無能な護衛を配属し、その失態を見過ごしたのだ。 彼らの行動を思い返せば、コネで入隊したのが容易に想像できるほど拙く、その思考回路は戦場を知らぬ志願兵と大差ない。どこが選ばれた精鋭だというのか。 俺の辛辣な指摘に、騎士団長は反論の一言も発せられず、ただ深く、深く項垂れるしかなかった。その背後で、先ほどまで威張っていた上級貴族の男が、血の気の引いた顔でガタガタと震えているのが、ひどく滑稽に見えた。「緊急時でしたので……部下に人選を任せてしまい、ご迷惑をおかけいたしました」 騎士団長は、絞り出すような声でそう言った。鉄錆と泥に汚れたその拳は、怒りか、あるいは己への情けなさからか、白くなるほど強く握り締められている。「聞いた話だと、騎士団って軍の中の精鋭の中からさらに選ばれた超エリートって聞いてたんですけど? 新人でもエリートだと思ってたんですが……? あの無謀に仲間を闇雲に突撃させるとか、あれがエリートなんですか?」 俺は、冷え切った戦場に突き刺さるような冷徹な声を投げかけた。傍らでは、先ほどまで「身分」を盾に威張り散らしていた男が、惨めなほど小さくなって震えている。「それに……相談もなしに『行くぞ!お前ら!』って
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64話 崩壊する特権意識と、惨めなる騎士の断末魔

 階級社会において、相手の背景を読み違えることは死を意味する。この男は今、その自覚もないまま、自ら破滅の引き金に指をかけていた。「ゴミ、ね……。そのゴミに守られないと、全滅してたのはどこのどいつだったかな」 俺はため息混じりに、わずかに魔力を解放した。足元の小石が震え、空気が重く沈み込む。向けられた剣の先が、男の恐怖を代弁するように小刻みに震え始めた。 血を吐くような怒声を上げて、中隊長と呼ばれた男が躍りかかってきた。騎士団長が顔を強張らせて制止の声を上げるが、逆上した男の耳には届かない。 俺は「収納」から一振りの木刀を取り出した。それ自体は何の変哲もない訓練用だが、表面に高密度のバリアを極薄く、強固に纏わせる。物理的な破壊耐性を限界まで引き上げた木刀は、今やどんな名剣をも粉砕する硬度を持っていた。 直後、戦場に響いたのは鋼を叩き潰す鈍い音だった。一撃、二撃。無造作に振り抜いた木刀が、男の着ていた豪華な装飾鎧を紙細工のようにひしゃげさせていく。必死に振るわれる男の剣を、俺は紙一重でかわすことすらしない。バリアに守られた木刀でそのまま剣を叩き折り、男の胴体、腕、足を容赦なく打ち据えた。 鎧は原形を留めぬほどにぐちゃぐちゃになり、中隊長だった男は、もはや悲鳴を上げる気力もなくふらふらと膝を突く。その顔面は恐怖と苦痛に歪み、先ほどの傲慢さは微塵も残っていない。 俺は手に持っていた木刀を静かに消し、代わりに冷たく光る真剣を握り直した。横たわる男の腕、その関節を狙って剣先を突き立てる。じりじりと、体重をかけて鎧の隙間を抉り、肉へと刺し込んでいった。「自分たちの無能を棚に上げて、本当のことを言われて反省もせずに腹を立て、本当のことを言ってきた者を殺そうとするなんて、責任のある立場の者のすることなのか?」 俺の静かな問いに、男は口から泡を吹きながら首を横に振る。「王国幹部が護衛をつけるような人物に、騎士団で役職に就いている奴が、護衛対象に剣を向けて殺そうとして良いのか? まあ、それはもういいか、どうせお前は死ぬんだしな……。剣を抜き、剣を向けてきた時に殺し合いを
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65話 跪く副団長、崩壊する価値観

「へえ……。万全なら、俺に勝てるってわけだ? 面白いな、それ……」 俺は冷笑を浮かべ、男の目の前に転がっている、先ほど叩き折った剣の残骸を爪先で小突いた。♢副団長への「再教育」「そう言うと思って、治癒薬を用意してある」 俺は懐から小瓶を取り出し、男の目の前に放り投げた。乾いた音を立てて転がったそれを、男は震える手で、泥にまみれながら拾い上げる。「そ、そうか……」「その馬鹿に一つ忠告しておいてやる。上級貴族であろうが、現場に出れば下級貴族でも上官であれば、上官に従わなければ、今回の様にモンスターにボコボコにされて死ぬことになるぞ」 突き放すような俺の言葉に、男は顔を歪め、治癒薬の栓を抜こうと指先を震わせた。「ああ……あのモンスターを倒した者に戦いを挑むなんてどうかしていた……下級貴族にひどい言われようで頭に来てしまった……クソッ!! 敵と戦い死ぬのではなく、こんなことで俺は死ぬのか……」 男は呪詛を吐くように呟く。逃げ道を失い、追い詰められ、その横顔には今更ながらに自身の招いた事態の重さが影を落としている。それでも、自分が否定された屈辱だけは拭いきれないのか、瞳の奥には昏い逆恨みの色が燻っていた。 男が覚悟を決めたように治癒薬を飲み干すと、薬液が喉を通り抜ける。即効性の極上品だったそれは、瞬時にして傷口を塞ぎ、折れた骨を繋ぎ合わせ、青ざめていた肌に生気を戻していく。 数秒前まで死を待つのみだった体が、元通りに回復した。 俺は地面を蹴るようにして立ち上がる男を見据え、抜き放った剣の重みを掌に感じていた。さあ、言い訳はすべて潰した。万全の状態で、絶望を味あわせてやるとしよう。「おおお! 体が軽く、傷も……治っている!」 男は自らの両手を見つめ、信じられないといった様子で何度も握りしめた。鎧の下でひしゃげていた肋骨も
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66話 崩壊する特権の盾、そして真の騎士への再誕

 極限まで抑えたつもりだったが、それでも俺の瞳の奥に宿る「捕食者」の光を隠すことはできなかったらしい。 副団長の顔からは一瞬で血の気が失せ、土気色へと変わった。ガチガチと歯の根が合わない音が聞こえ、彼は支えを失った人形のように、その場に腰を抜かして座り込んだ。 俺を見上げる彼の瞳は、もはや人間を見ているものではない。深淵の底から這い出してきたバケモノを正視してしまったかのように、ただ絶望的な恐怖に支配され、激しく震え続けていた。「おいおい……お前は上級貴族様なんだろ? 下級貴族でもない、ただの元平民のゴミ以下の奴の前に座り込んで、いったい何をしてるんだ? その首でも、俺に差し出す気になったのか?」 俺は、無造作に剣を鞘から引き抜いた。キィィン、と硬質な金属音が戦場に響き、その切っ先を、腰を抜かして震える副団長の鼻先へと突き立てる。剣に宿る冷徹な殺気が、男の頬をかすめる。彼は喉を鳴らし、あまりの恐怖に瞬きすら忘れたまま、ただ銀色に輝く死の象徴を凝視していた。「いえ……その、こだわりは……捨て去ります……。心を入れ替え、現場では差別なく接するようにいたします……」 副団長は、震える声で絞り出した。その瞳からは、先ほどまでの傲慢な輝きは完全に消え失せ、代わりに深い悔悟と、それ以上に強い生存本能が支配していた。「だそうだな、その方が賢明だと思うがな。なあ? 団長も聞いたろ?」 俺は剣先を突きつけたまま、横に立つ騎士団長へと視線を投げかけた。俺の放つ冷ややかな圧迫感に、歴戦の猛者であるはずの団長もわずかに頬をこわばらせ、額に一筋の汗を流している。「あ、ああ……聞いた。そろそろ剣を収めてくれないだろうか……副団長が怯えている」 騎士団長の声には、懇願に近い響きが混じっていた。俺はふん、と鼻で笑うと、吸い込まれるような滑らかさで剣を鞘に収めた。カチリ、という静かな音が戦場に響くと、張り詰めていた空気がわずかに緩む。
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67話 ミリアとの遭遇、そして魔法使いとの出会い

 その光景を眺めていた騎士団長が、憑き物が落ちたような表情で俺に向き直った。「この騎士団はあなたのおかげで、今日を境に良い方向へ向かいそうだ。ありがとう!」 騎士団長は、今日何度目かになる深い一礼を俺に捧げた。その後、彼は生き残った団員たち全員に聞こえるように、朗々とした声で宣言した。これからは門地や階級に関わらず、等しく実力と規律によって評価し、上級貴族であっても例外は認めないと。 静まり返った戦場に、かつての腐敗した空気を切り裂くような、新しい騎士団の胎動が響いていた。♢ミリアとの遭遇 王城へ無事に帰還した後、騎士団は血相を変えて国王への報告へと向かっていった。重々しい空気の隊列を見送りながら、俺は人混みに紛れてこっそりと抜け出した。せっかく訪れた初めての街だ。このまま堅苦しい城の中に閉じこもっているなんて、俺の性分には合わない。 鼻歌混じりに城壁の出入り口へと足を向けると、そこにはなぜか、見慣れた装備に身を包んだ護衛の集団が整然と待ち構えていた。「ユウヤ様、どちらへ?」 鈴を転がすような、それでいてどこか逃げ場を許さない響きを含んだ可愛い声が鼓膜を叩く。あ……このタイミング、この声。バレたか。「あ~、当然……初めての街だし、少しばかり散策をしようと思って」 俺は冷や汗を拭いながら、努めて自然な笑顔で振り返った。「へえ~そうですか。わたしを置いて、ですか?」 武装した護衛たちの間を割って、可愛らしく頬をぷっくりと膨らませたミリアが姿を現した。腰に手を当て、ジト目で見つめてくる彼女の背後には、まるで「逃がしませんよ」と言わんばかりの威圧感が漂っている。 騎士団の精鋭たちを黙らせた俺の足取りも、彼女のこの表情の前では、たった一歩も前に進めることはできなかった。「ひどいですっ。ユウヤ様! 最近いつも置いてかれて寂しいですっ」 ミリアは上目遣いに俺を睨みながら、いっそう頬を膨らませた。その仕草には年相応の幼さと、隠しきれない独占欲が滲んでいる。「
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68話 バカな魔術師の末路

「お前! 一体何をしたんだ? 俺のファイアボールを受けて無事でいるとは……」 リーダー格の男は、宙に浮いたまま顔を引きつらせ、震える指先をこちらに向けて叫んだ。「もしかして……今のが攻撃だったのか?」 俺が心底不思議そうに問い返すと、男は屈辱に顔を赤く染め、必死に虚勢を張る。「うるさいぞ! そろそろ……師匠が来てくれる……。師匠の攻撃を受けてみれば、俺たちの凄さが嫌というほど分かるさ!」 師匠、か。このレベルの「浮いているだけ」の連中を育てた奴がどんなものか、逆に興味が湧いてくる。「どうした? 俺を待っているのか? 良い獲物でも見つけてきたのか?」 路地の奥から、低くよく通る声が響いた。現れたのは、中年の魔術師風の格好をした男だった。手にしているのは、一際大きな魔石が埋め込まれた不気味な杖。その出で立ちは確かにそれらしく見えるが、男が放つ言葉は、到底高潔な魔導士のそれではない。「……こいつが師匠と呼ばれる男か」 師匠と呼ばれるくらいだから、弟子たちよりはマシな実力があるのだろう。だが、「良い獲物」という言葉からは、彼らが日常的に通行人を襲い、略奪を繰り返している事実が透けて見える。 俺の隣で、ミリアが嫌悪感を隠そうともせず、透き通るような青い瞳を冷たく細めた。「ユウヤ様、あの方からは非常に下品な臭いがいたしますわ。このような者が街を闊歩しているなんて、教育の必要がありそうですわね」 ミリアの静かな怒りが再燃し始めるのを感じながら、俺は新しく現れた「師匠」とやらの力量を測るべく、静かに身構えた。「師匠! こいつら、俺たちの魔法が効きません! 普通の奴じゃないです!」 弟子たちが必死に訴えかけるが、その間も彼らはぷかぷかと中途半端に浮いたままだ。見れば見るほど、その姿は滑稽でしかない。浮いていると踏ん張りが利かないから、一撃受ければ木の葉のように吹っ飛ぶだろうし、何よりそのドヤ顔が…&hell
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最終話 新たなる決意を胸に

♢帝都への旅路と予期せぬ吉報「それじゃ、帝都に向かうか……」 俺がリビングの静寂を破るようにそう告げると、向かいのソファに深く腰掛けていたシャルが、驚きと緊張がないまぜになった表情を見せた。淡いピンク色のドレスをふわりと広げ、お気に入りの場所に座る彼女は、いつもなら明るく元気な笑顔を振りまいているのだが、今はその淡いフワッとした金髪を揺らし、不安げに俺を見つめている。「て、帝都ですかぁ……?」「ん? シャルも緊張するのか?」「はい。帝都ですよ……宮殿ですよ? わたし……宮殿は苦手です」 シャルは甘えるように体を縮め、ぶるぶると小刻みに震わせた。同じ王族という立場でありながら、少しドジっ子で自由奔放な彼女にとって、他国の、それも厳格な礼式が重んじられる帝国の宮殿は、想像するだけで息が詰まる場所に違いない。そんなシャルの様子を見て、俺の隣に座っていたミリアが、不満げに頬をぷくっと膨らませた。「なんですの……その宮殿は凶悪というイメージは……そんな恐ろしい場所では、ありませんわっ」 ミリアはますます頬を膨らませ、透き通るような青い瞳を尖らせて反論した。淡い金髪が、彼女の憤りに合わせてふわりと揺れる。 ああ、なんとなく分かる気がする。それって宮殿じゃなくても同じだろう。実際、数人の王様が殺されかけてたしな……。「ユウヤ様。宮殿は、そんなに恐ろしいところではありませんからねっ!」 隣に座るミリアが、俺の腕をきゅっと抱きしめ、顔を覗き込むようにして必死に訴えかけてきた。彼女にとって、そこはただの温かな実家なのだ。 これだけ長く一緒に行動しているんだ、ミリアが大切に思っている場所がどんなところか、何となくは理解しているつもりだ。それにシャルだって、もう俺の嫁になっているんだし、俺が守るんだから安全性に問題はないだろう。 あ、でも……シャルはなぁ。
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