All Chapters of 溺愛結婚〜懐妊後、御曹司から猛烈に溺愛されて困っています〜: Chapter 31 - Chapter 40

68 Chapters

30話

わたしはお義母様に「ありがとうございます」と微笑んだ。「透子さん、無理はしないでくれよ。身体に障ったら大変だ」高城明人からもそう言われ、わたしは「分かっていますので、大丈夫です。ご心配なく」と答えた。高城家にとっては、わたしたちの赤ちゃんは念願の孫だ。そりゃあ嬉しくない訳がないだろう。なにより将来、この子が男の子だったら、高城ホールディングスの跡を継ぐ可能性だってある訳だし……。高城家にとって、この子は貴重な子供だってことだ。「そうか。ならいいんだがね」「父さん。透子のことは俺がちゃんと見てるから、心配しなくても大丈夫だって」そんな会話を聞いた藍が口を開くと、藍の父親は「しっかり守ってやるんだぞ、藍。お前は父親になるんだからな」と釘を刺していた。「分かってるよ。心配するなって」そんな親子の会話を聞いていると、なんだか家族になれるのか不安になる気がする……。「透子さん。何かあったら、いつでも遠慮なく言ってね?力になるから」「はい。ありがとうございます」  妊娠中のわたしは、こうして出産までみんなに支えられていくんだな……と、この日わたしはつくづく実感した。「透子さん、今日は来てくれてありがとう」「こちらこそ、今日はごちそう様でした。ありがとうございました」「また来てね。透子さん」「はい。ぜひ」食事を終えたわたしたちは、自宅へと帰宅するために家を出た。「透子、色々と悪かったな」「え?なんで謝るのよ……?」藍が謝るなんて、珍しい……。「親父のことだよ。さっきのこと、気に障ったならすまない」「ううん。……別に平気だよ」そんなこといちいち気にしてても、仕方ないしね。「そうか。透子は強いんだな」「……強くなんてないよ」強い訳、ないでしょ……。本当はとても心細いし、とても不安なのに。それでも頑張りたいと思うのは、わたしが母親だからだ。この子を産みたいっていう、その気持ちだけがわたしを突き動かしているんだと思う。「透子、不安になる気持ちも分かる。だけど大丈夫だ。 俺が透子のこと、必ず支えるし、必ず守るから」藍のその言葉は、わたしを信じることにする。 この子の父親は、藍だから。 「……うん。支えてよ、ちゃんと」「当たり前だ。透子は、何があってもこの先も俺の妻なんだから」藍はわたしの手をぎゅっと握りしめる。「そう
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31話

「おはよう、透子」「藍、おはよう」 あれから、藍と結婚して三ヶ月が経った。「藍、今日もフルーツ食べる?」「ああ。もちろんだ」相変わらず藍は、わたしたちを溺愛している。 毎日のようにわたしたちに愛を囁く藍は、いつだって嬉しそうに笑っているんだ。「透子、今日はハチミツ多めにしてくれるか?」「え? まあいいけど。 でも、朝からそんなに甘くしていいの?」藍にフルーツを切りながら問いかけると、藍は「ああ。今日は甘いのが食べたい気分なんだ」と答えた。「分かった。じゃあちょっと多めにしとくね」「おう。よろしく頼む。 俺、顔洗ってくる」「うん。分かった」わたしはフルーツを切った後、器に盛り付けてヨーグルトとハチミツを多めにかけてテーブルに並べた。 「藍、シリアルも食べる?」「ああ、食べる」「分かった」 シリアルの箱を開けてお皿にザラザラと盛り付けると、そこに豆乳をかけてテーブルに置いた。「藍、朝ご飯出来たよ」「おう。ありがとう、透子」「ハチミツ、たっぷりかけておいたから」藍は「いただきます」と手を合わせてから、フルーツを食べ始めた。「ん、美味い。甘くていい感じだな」嬉しそうにフルーツを頬張っていた藍は「これなら元気が出そうだ」と言っていた。「甘すぎない?」「ああ。ちょうどいいよ」「……そう、良かった」藍とこうして食事をすることは、毎日の日課だ。 毎日一緒に朝ごはんを食べることが、わたしたち夫婦の毎朝の日課になっている。「このバナナ美味いな」「美味しい?良かった」藍はフルーツが大好きだ。朝ご飯もそうだし、夕食の後にもたまにフルーツを食べている。「え、もう食べたの?早い……」気が付けば、藍はハチミツたっぷりのフルーツとシリアルを食べ終えていた。「ごちそうさま」「あ、食器、そこに置いといて」「分かった」キッチンに食器を片付けた藍は、仕事に行く準備を始めた。「透子、ネクタイ結んでくれないか?」「え、なんでよ? 自分でやればいいじゃない」今日は珍しく、藍からネクタイを結んでほしいとお願いされた。いつもなら自分で結んでいるのに、なぜなのか……。「今日は透子に、やってほしい気分なんだよ」「……はあ。仕方ないな」 言われるがまま、藍のネクタイを結んだ。 だけどこうやってネクタイを結ぶのも、ちょっとだけ緊張し
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32話

「ほら。ん」と目を閉じてわたしからのキスを待とうとする藍。わたしはそんな藍に「はい。出来たよ、ネクタイ」とだけ言って藍から離れた。「おい。行ってらっしゃいのキスは?」藍から聞かれたわたしは「行ってらっしゃーい」とだけ伝えると、洗濯物を回すためバスルームへと向かった。「ちょっ……藍? んんっ……!?」なのに藍はわたしの腕を掴んで離さないようにして、そのまま唇を強引に奪ってきた。「な、な、なにするのよっ……!」藍のヤツ、また強引にキスしてきたし……!「なにって、行ってきますのキス。したんだけど?」なんて藍はニヤニヤ笑いながらわたしを見ていた。「もう……。行ってらっしゃい」「行ってきます。愛してるよ、透子」 嬉しそうな表情で、藍は仕事に出かけて行った。「……はあ」なんかこう、藍には最近困ることが多い気がする……。不意打ちでキスしてきたりするし、なんかこう、不意打ちってダメだよね……。はあ……毎日毎日、わたしは藍に驚かされてばかりだな。「愛してるよ……か」毎日こうやって愛してると言ってくれるのは、今までの人で藍だけだ。こんなに「愛してる」と言われた記憶は、今まで辿ってもない。藍だけだ、こんなにたくさん愛を伝えてくれるのは……。愛してるって言われると、少なからず嬉しい気持ちがある。藍はわたしの夫。その事実は、この先いつまで経っても変わらない。藍はずっと、この先だってわたしを愛してると言い続けるだろうな……。左手の薬指のその結婚指輪を眺めながら、わたしはこの先の未来を思い浮かべていた。「藍とわたしは、まるで正反対……」それでもこうして一緒にいるのは、家族になるためだ。ちゃんとした家族なりたいから、わたしたちは一緒にいる。「……あなたのことちゃんと考えてくれてるよ。あなたのパパは」そう、藍はこの子のパパだ。藍は父親になるために、今から一生懸命頑張ってくれている。「……わたしも、頑張らないとね」この子をちゃんと産むために、しっかり頑張らないと……。いずれこの子は、藍の跡取りとして高城ホールディングスを継ぐことになるかもしれないから。男の子なのか女の子は、まだ分からないけど。 男の子ならきっと、大人になれば跡取りになるだろう。「あ、そろそろ、検診に行く時間だ。急がないと」わたしは洗濯物を回した後、着替えをして財布
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33話

「……可愛いですね、赤ちゃん」こんなに小さくても、ちゃんと生きてることが分かる。……不思議だ。こんなに小さくても、赤ちゃんがちゃんと育っているということを思うだけで嬉しいのは、わたしが母親だからだろうな……。「可愛いでしょ?そう思えるようになってきたってことは、あなたも母親だっていう自覚が出てきたってことよ」「……はい。赤ちゃんって、偉大ですね」赤ちゃんがこうして生きているだけで、不思議とホッとする。「高城さん、体重は少しずつキープ出来てるみたいだから、そのままキープ出来るといいわね」「分かりました」「もし少しでも体調に異変があったら、連絡してね」「はい」いずれにしろ、食べすぎないように気をつけないようにしないと……。もう少しコントロールしないと、ダメだね。「来月また赤ちゃんの様子を見ますので、来てください」「分かりました」「お大事に」「ありがとうございました」検診を終えたわたしは、そのまま会計を済ませて病院を出た。エコー写真を見てやっぱり思うんだ、本当に嬉しいって。「良かったね。元気に育ってるって」なんてお腹の中の赤ちゃんに話しかけてみると、前よりもちょっとだけ愛情が沸いた。✱ ✱ ✱「透子、ただいま」「おかえり、藍」その日の夜、仕事を終えて帰ってきた藍は、わたしをすぐに抱きしめてくる。「……藍?どうしたの?」「ん?なんか抱きしめたくなった」わたしを抱きしめると、藍は嬉しそうにそう言っていた。「……今日、検診行ってきたの」「そうか。 今日だったのか、検診」「うん」藍の夕飯を用意しながら、わたしは返事をした。「どうだった?」「別に普通、だったよ」 「そうか。良かった」藍はちょっとだけ、嬉しそうに笑っていた。「……元気だったよ、赤ちゃん」わたしは藍にお茶を入れたマグカップを目の前に置くと、藍にエコー写真を見せた。「これ、エコー写真か?」「うん」一応妊娠、五ヶ月目に入ったらしい。それでもまだ、小さいこの命を大切に思ってる。 愛おしく感じた、わたしたちの大切な命が。「小さいな、赤ちゃん」「……うん。すごく小さいよね」「だけど、可愛いな」そう言って微笑む藍の表情は、父親だという喜びで、満ち溢れていた。「うん。……可愛いね」この子はまだこんなに小さいのに、ちゃんと生きようとしている
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34話

「え?……なんだよ、急に」藍の表情が少しだけ曇ったのを、わたしは見逃さなかった。「……わたし、知ってるんだよ。高城社長がわたしのこと、毛嫌いしてたってこと」わたしは元々関東の田舎の出身の人間だ。京都に来たのも若女将として働くためだけだ。関東の田舎の出身のわたしは、京都弁なんて話すことも出来ない。だから今までも、お客様に対しても標準語で話すことも多かった。少しだけ京都弁も話せるけど、わたしには合わない。「関東の田舎の出身のくせに、京都で若女将をやってるなんて、信じられないって……バカにしてたことも、知ってる」「……知ってたのか」「知ってたよ。……結論から言えば、わたしは高城家の嫁としては、元々相応しくないってことも分かってるよ」高城家を継ぐ者としては、本当ならどっかの令嬢と結婚した方が藍のためにもいいのかもと、まだ思ってる。「わたしは確かに、藍には相応しい嫁ではないと思う。 そもそも、相応しい訳はないし」けどわたしは、それでも藍と結婚して夫婦になることを決めた。 藍と夫婦になるために、そして藍と家族になるために……。それが最善の選択だと思ったからだ。「……透子」「だけどわたし、負けないから。この子を守るためにも、わたしは強くならないといけないの。……もし高城社長に今後なにを言われたとしても、わたしは絶対負けないから。 わたしにもプライドがあるの。母親としての責任がある」 母親になるの、わたしは。こんなところで弱音なんて吐いてる場合じゃない。強くならないといけない、母親になるために。「透子は強いよ、もう強くなってる」「……え?」「透子は充分強くなってる。 俺なんかよりもずっと」藍の言うことに、何も言い返すことも出来なかった。「透子は頑張ってる。 君は一生懸命母親になろうと、毎日努力してることを俺はよく知っている」藍にそんなことを言われると思わなかったわたしは、予想外のことでビックリした。「透子は偉いよ。 俺は透子のその頑張りを知ってるからこそ、透子らしくいてほしい」「……え?」わたし、らしく……?「透子には透子の良さがある。……透子の優しさに、俺はいつも励まされているし、感謝してるんだよ」「藍……」藍はそんなわたしに「透子、これだけは言っておきたい。 親父に認めてもらおうなんて、思わなくていい。 透子ば俺の
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35話

そう言ってわたしの涙を、親指で優しく拭ってくれる藍。そしてわたしの髪の毛を優しく撫でながら、藍は「透子に泣き顔なんて、似合わないよ」と言ってくれた。そんな藍の微笑む姿に、わたしは「ありがとう……藍」と返事をした。「透子は俺の妻になるのに相応しい人だよ。 俺の妻になれるのは、透子しかいないんだよ」「……いい妻になれないかもしれないよ、わたし」そう言葉を返すと、藍は「いい妻になんてならなくていい。……言っただろ?透子は透子のまま、いてくれればいいって」と言葉を返してきた。「俺が透子のことを幸せにする。透子が毎日幸せで死にそうになるくらい、幸せにしてやるって言っただろ?」藍の力強さのあるその愛の言葉に、わたしは少し救われた気がした。「……バカ。幸せで死んだら、もう幸せにしてもらえないじゃないの」「あ、それもそうか」「そうだよ……。ここで死んだら、藍にもう抱き締めてもらえないじゃん……っ」なんて、いつものわたしらしくないことを言っている。なぜだろう……。完全に藍のペースにハマってしまっている。 おかしいな、こんなはずじゃなかったのに。「何だよ、透子。今日はやたら素直じゃん」そう言ってちょっとだけ、藍はニヤニヤしていた。「……うるさい。く、口が滑っただけよ」なんて言ってみても、藍には全く通じないのだけど……。「へぇ……? 口が滑ったって割には、嬉しそうにしてるけど?」なんて言いながら、藍はわたしの顔を覗き込んでくる。「そ、そんなこと……ないっ」そんなことないと、思いたい……。「何なら透子のこと、俺は今すぐにでも抱きたいと思ってるけどね」「……え? え、なっ……!」だ、抱きたいって……! そ、そんなこと言われると、恥ずかしくなるんだけど……!「でも透子は今妊娠中だから、まだガマンしとく。 けど透子が赤ちゃんを産んだら、俺はすぐにでも透子を抱くつもりだけどね」「な、何言ってんの?もう……!」そうは言ってみたものの、藍のその真剣な眼差しには勝てそうにない。「夫婦の愛を確かめるのは、やっぱり夜の営みしかないだろ?」「は、はあ……?!」夜の営みがなくたって、充分愛は確かめ合えると思いたいけど……。「……そんなこと、ないわよ」「でも透子の身体にもしっかり俺の愛を刻み込んでやらないと、透子も寂しいだろ? それに、俺も透子に愛を
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36話

「おはよう、透子」「お、おはよう……」昨日藍に告白?をしてから、藍の溺愛がさらに高まっていた気がした。「わっ! ちょっと、くっつかないでよ……!」朝から朝ご飯を作るわたしを、後ろから抱きしめてくる藍。そんな藍を拒否しようとするけど、なぜか逃げられない。「いいだろ?くっつきたいんだよ、俺が」「……もう、邪魔なんだけど」拒否するけど、聞いてもくれないようだ。「今日もハチミツ多めにして、透子」そう言われたわたしは「はいはい。分かった」と答えて、フルーツを切った。「あ、いちご多めがいい。後オレンジも」「もう、分かったってば」朝からいつもこうやって何が多めとかを言ってくるのが藍だ。 ただ、毎日フルーツを食べているおかげで、わたしも肌の調子はとてもいい。化粧水の入りもいいし、化粧のりもいいのはありがたいことだ。「ありがとう、透子。愛してるよ」「もう、分かったって言ってるでしょ。うるさいな」毎日のように愛してると言ってくる藍。 だけどそれもまた、愛は伝わってくるのが分かるから。「冷たいな、透子は。俺のこと好きなんだろ?」「うるさいな。それとこれとは話が別なのよ」それでもちょっと、嬉しいと感じる自分もいる。きっと藍への気持ちに気付いたからだと思う。「透子、豆乳飲む?」「あ、うん」「じゃあ俺、豆乳出してやるよ」藍は冷蔵庫から豆乳を出すと、お揃いのマグカップを取り出して豆乳を注いだ。「ありがとう、藍」藍にお礼をすると、藍は「お礼ならキスでお願いしたいかな」と言った。「はあ……?キスって……。イヤよ」拒否すると、藍は残念そうな表情で「残念」と口にした。「ほら、朝ご飯食べるよ」「おう」【いただきます】と手を合わせて、朝ごはんを食べ始める。「ねえ、藍」「ん?」「今日、夕方から雨降るみたいだから、折りたたみ傘持ってた方がいいよ」わたしは朝ご飯を食べながらそう言うと、藍は「分かった」と答えた。「藍、偏頭痛あるんでしょ? 今日大丈夫なの?」藍は昔から偏頭痛があるみたいで、天気が悪くなったりすると、頭が痛くなるらしい。この前もいきなり頭が痛いと言って、少し辛そうにしていたし。 あの時は、ちょっとだけ心配になった。「心配してくれてありがとうな。でも頭痛薬飲めば治るから、大丈夫だ」「そう。 でもあまり、無理しないでね」と
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37話

藍は自慢げに「だって俺、ようやく透子と両想いになった訳だし?」と言ってきた。「……な、何を言ってんの、もうっ」「俺ば事実゙を述べただけだ」からかってるのか、そうじゃないのか分からないんだけど……。「透子、帰ったらまた抱きしめてやるからな」「はあ?いいって、別に……」「俺が抱きしめたいんだよ」そう言われると、なんか断れない……。ていうか、断りにくいよね……。夫である以上、断るのもなんか違う気がする。「ほら、もう行く時間でしょ?」「ああ。じゃあ行ってくる」「うん。行ってらっしゃい」藍が仕事に出掛けるのを見送ったわたしは、食器の片付けをした。そして藍が忘れ物をしていることに気付いた。「もう、藍ってば……忘れ物してるじゃん」 わたしと両想になったからって浮かれてるのね。 届けてあげないとダメだよね……。しょうがない、届けてあげるか。わたしはスマホと一応お財布、そしてカードキーを持ち急いでエレベーターで一階まで降りた。「どこだろう……?」そんなに遠くまでは、行ってないはずだと思うけど……。藍のことを探して歩いていると、遠くで藍を見つけた。「え……?」だけど、藍はそこに一人じゃなかった。 なぜか隣には、仲良さそうな女性がいたのだ。わたしは遠くから、その様子を眺めていることしか出来なかった。 会話なんて聞こえないけど、何かを話していることだけは分かる。「……藍?」 誰?その人……。そう思っていると「藍っ……待ってよ……!」と声が聞こえた。女の人は声を荒げたようだ。 女の人は、スタスタと歩き出す藍の腕を掴んでそれを阻止していた。「……離してくれ」藍は女の人の腕を振り払い、歩きだしてしまった。 もちろん、わたしになんて気付いてるはずもない。「藍!待ってよ! 行かないで……!」「俺に付き纏うのはやめろ!」え?藍が珍しく感情的になってる……?「……なに、あれ」誰よ、あの女……。明らかに藍のことを名前で呼んでいた。 だけど友達って感じでもなさそうだった。もしかして……。藍の元カノ? それしか考えられない……。藍の態度、なんかちょっとおかしかったし。「ムカつく……。なんなの」そんなものを見てしまって気分の悪くなったわたしは、気分転換に散歩することにした。忘れ物を渡そうとしただけに、なんであんな場面を見ることに
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38話

「やめろ!何するんだ……!」藍は明らかに動揺しているようにも見えた。大きな声で怒鳴りつけていることだけは、見て分かった。 「……っ、なんなの……。なんなのよ」あの女、なんなの……。あの女、藍のなに?「なんでキスなんか、するのよ……」藍も藍だ。油断してるから、そんなことをされるのだ。……バカなのよ、藍は。「……帰ろう」そんな二人の姿を見ているうちに、ショックがどんどん大きくなっていったわたしは、散歩するのをやめて大人しく家に帰った。家に帰るとわたしは、ベッドに横になりながら、ため息ばかり付いた。「アンタのパパ……なに考えるのか、分からないよ」その現場を目撃した日の夜、藍は何事もなかったかのように家に帰って来た。「ただいま、透子」「……おかえり」だけど藍の顔を見ると、朝のあの場面のことが頭からずっと離れなくなった。 「寂しかったよ、透子」「………」いつものように抱きしめられても、なんにも嬉しくなかった。「お、今日はハンバーグか。美味そうじゃん」藍はテーブルに並べられたハンバーグを見て、嬉しそうに笑っていた。「手、洗ってくるな」 藍は洗面所へと歩いていく。「お待たせ。食べようか」「……うん」 二人で夕飯を食べ始めると、藍は「うん、美味いな」とハンバーグを食べていた。けどわたしは、あまりお箸が進まなかった。「透子?どうした?」「……え?」「なんかあったのか?……もしかして、つわりひどいのか?」夕飯のハンバーグを食べながら、藍はわたしに問いかけてきた。 心配そうな顔をしている。「……別に」藍とあの女が一緒にいる場面を目撃してから、なんか胸の奥がモヤモヤする。 心の奥にポッカリと穴が開いたみたいに……。「……ごちそうさま」食欲すら失ったわたしは、夕飯をあまり食べれずに席を立った。「透子、もう食べないのか?」「……いらない」「おい、透子……?」 わたしはそのまま寝室に入り扉を締め、ベッドに潜り込んだ。  「藍……」やっぱりなにも言ってくれないんだ、朝のこと……。あんな場面、見なきゃ良かった……。藍の後なんて、付けなければ良かった……なんて、後悔ばかりが押し寄せてくる。「透子、どうした? 大丈夫か?」寝室のドアをノックした藍は、そうドア越しに問いかけてきた。「透子、やっぱり体調悪いのか?」
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39話

いつもそうやって心配してるみたいな雰囲気出してるけど、たまには一人になりたい時だってあるのに……。心配しすぎてムカつく……。「透子……。お前、なんで泣いてるんだよ」そう言われて初めて気付いた。わたしが泣いてるということにーーー。「泣いてないから……。あっち行ってってば……」泣いているという事実を隠し通したいのに、流石にそれは無理があるようだ。「なにを言ってるんだ。……こうやって泣いてる妻を放っておける訳、ないだろ」藍はそう言って、わたしを布団ごと包み込むように抱きしめてきた。「藍のバカ……」「透子。妊娠してること……そんなに辛いのか?」藍は心配そうに聞いてくる。「はあ?違うから……」   妊娠してることが辛かったら、きっとわたしは今頃……堕ろしてる。「じゃあなんだ? 教えてくれ」「……あの女、誰?」わたしは勇気を出して、布団から起き上がり藍にそう問いかけた。「え、あの女……?」「とぼけないで」わたしはさらに言葉を続けた。「あの女、誰?……わたし、見たんだけど」「……まさか、お前?」藍はそこで、口を閉じた。「昨日も今日もいたでしょ?彼女、マンションの前に……」「……なんで、透子がそれを知ってるんだ?」藍の表情が少しだけ変わった。「昨日、藍が忘れ物してたから……届けてあげようと思ったの。それでマンションの外に出たら、藍があの女性といるのを見掛けた」「……そうか」「あの人に今日……キスされてたでしょ」わたしが切り込んでいくと、藍は顔を上げて「え、見てたのか……?」とだけ答えた。「……あの女、藍の元カノ?」そう問いかけると、藍は一言「……ああ」と返事をした。「元カノがいることくらい、アンタの容姿なら想像つくし、仕方ないと思うけど……。中途半端な関係のままにはしないでよね。ちゃんと別れたの?」わたしは藍に、そう強く言ってしまった。「……ごめん。透子のこと、傷付けたよな」「そういう問題じゃない。 藍はさ、父親になるんだよ?親になるの、わたしたちは。……そうやって中途半端にして藍になにかあったら、この子が悲しむことくらい、藍にだってわかるでしょ?」わたしはお腹に手を乗せて、語りかけるようにそう告げた。「……ごめん、透子。俺が悪かった」藍は頭を下げて、わたしに謝ってきた。「なんで謝るの……?」「え?」
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