「今日は私の我儘に付き合ってくれて、ありがとうございます」莉沙さんの言葉に、胸が少し温かくなる。自分から誘ったことに対して我儘と表現するその姿勢に、彼女の気遣いが感じられた。私は両手を膝の上で重ね、少し背筋を伸ばした。緊張はまだ残っているけれど、こうして感謝を伝えてくれることで、場の空気が柔らかくなる。「そんな。私もこうやって外に出てゆっくり話すなんて久しぶりなので、嬉しいです」実家にいた頃は環境がそうさせていた。家族の目や生活のリズムに縛られて、自由に自分の時間を持つことが難しかった。樹と付き合っていた時さえ、デートなんてほとんど出来なかった。そして、壱馬さんの家に来てからも…。壱馬さんは働いているのに、自分だけが休んでいることが許されないように感じてしまう。彼の家に身を寄せている以上、少しでも役に立ちたい、負担を減らしたいという思いが常に胸にあった。「それなら良かったです。かずくんは元気ですか?」壱馬さんの名前が出た瞬間、胸がきゅっと締め付けられる。彼のことを聞かれるのは当然なのに、どこかで心がざわめく。「あ、はい」言葉を探そうとした結果、短い返事になってしまった。もっと自然に話せばいいのに、緊張で声が硬くなる。「昔は週一で会いに行ってたな〜」その言葉に胸が痛む。彼女と壱馬の過去の時間が、鮮やかに浮かび上がる。私は笑顔を保とうとするが、罪悪感が広がる。「そう…なんですね」声は小さく、少し間が空いた。無理に笑みを添えながら、相手を否定しないように気をつけた。「家で映画見たりして」その言葉を聞いた瞬間、胸の奥に小さなざわめきが広がった。壱馬さんの家で見たロマンス映画がふと頭に浮かぶ。あの時、壱馬さんがこんなDVD持ってたかなって言っていたから、もしかするとそれは莉沙さんのものだったのかもしれない。彼女が壱馬さんの家に通っていた頃に置いていったのか、
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