「気を使わせてしまってすみません」自分の口から出た言葉は、照れ隠しと謙遜が入り交じって少しだけ上擦っていた。彼の口から飛び出した可愛いや健気でいい子なんていう身に余る褒め言葉に、私は顔から火が出そうになるのを必死に堪えていた。 親友の顔を立てるために精一杯の良いところを探して褒めてくれているだけなのだろう。 「本心なのに〜」私の生真面目すぎる反応を面白がるように目を細めた。 「壱馬さんとはどこでお会いになったんですか?」私はこれ以上の照れ隠しに耐えきれなくなり、彼の意識を私自身から逸らすために、少し早口で新たな質問を投げかけた。壱馬さんは普段から自分のことを多く語るタイプではないから、交友関係についてあまり詳しく知らない。だからこそ、壱馬さんの過去を知る人物との会話は、たまらなく心が躍るものだった。 「同じ高校でね」高校時代からということは、彼らはもう十年以上の付き合いになるということになる。それほど長い間、壱馬さんの傍にいて彼の成長を見守り、彼のすべてを知っている人物なのだと思うと、なんだかひどく感慨深い気持ちになった。 「そんな前から…」 私の素直な感嘆の漏れる声に、彼は自慢げに頷いてみせた。高校時代にはどんな顔をして笑い、どんな風に友達と過ごしていたのだろうか。ほんの少しだけ羨ましいという感情が芽生える。 「まぁ、俺がしつこく付きまとった感じではあるけど」その言葉が彼の口から出た瞬間、ドクンと心臓がひときわ大きく跳ねた。単なる自虐的な冗談として口にした言葉なのだろうけれど、今の私が最も敏感になっているそのフレーズは、嫌でも私をつけ回すあの不気味な黒い帽子の男を連想させた。私は震えそうになる声を必死に抑え込み、努めて明るい声で会話を繋ごうとした。 「壱馬さんの、学生時代の話聞いてみたいです」制服を着ていた頃の彼は一体どんな少年だったのだろう。授業中に居眠りをしたり、放課後に友達と他愛
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