颯馬は帰国してからの短い期間で、この家の力関係を正確に見極めていた。祖母が正人を毛嫌いし、あからさまに遠ざけていることは誰の目にも明らかだった。正人には家長としての実権はないものの、裏で絶えず小賢しい画策を続けており、決して侮れない性根の悪さを持っている。だからこそ、あえて正人に恩を売って「良き理解者」を演じてみせる。今のうちにこの厄介な伯父を取り込んでおけば、いざという時の駒になる。それと同時に、祖母の前で「いざこざをスマートに収められる優秀な孫」をアピールすることもできる。一石二鸟のこの立ち回りを、颯馬が逃すはずもなかった。「あ、ああ、颯馬の言う通りだ。過ぎたことはもう忘れるとしよう。今は母さんに喜んでもらうのが一番だ」颯馬が差し出した絶好の助け舟に、正人は慌てて飛びついた。憎まれ口を叩く妻の尻拭いをしつつ、その場を上手く取り繕ってくれた青年に内心安堵する。見事なまでに母親の懐に入り込み、機嫌を操る颯馬の器用さを目の当たりにして、正人は少しだけ歯痒くも感じていた。自分にもあれくらいの立ち回りや要領の良さがあれば、少しは母親からの評価も違っていたかもしれないのに、と。「さあ、もう席に着いて食事にしなさい。少しはおとなしくして、これ以上私を怒らせたり気を揉ませたりしないでちょうだいね」志津は溜息まじりに言った。「もし不満があるなら、これからは無理に顔を出さなくていい。私を不愉快にさせるんじゃないよ」容体が安定したとはいえ、入院を経て志津の体力は確実に落ちていた。これ以上ストレスを溜め込めば本当に身を滅ぼすと、彼女自身が一番よく分かっている。そもそも、彼女が病院に担ぎ込まれる原因はいつだってこの強欲な親族たちのせいだ。どうして金のことしか頭になく、母親の身を心から案じることもできない息子を産んでしまったのか……志津は心の奥底で静かに嘆息した。「おばあちゃん、退院したばかりなんだから、先生も薄味のものを食べるようにって言ってたよ。おばあちゃんが濃い味付けが好きなのは知ってるけど、これからはお体のために少し我慢してね」食事が始まると、颯馬はすっかり『よくできた優しい孫』の顔になり、かいがいしく志津の世話を焼いていた。その気の回りようは、まるで律や紫音たちが出る幕はすでにないと言わんばかりだ。志津の和らいだ表情を見てい
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