美桜の視点「おめでとうございます」医師の高橋礼香(たかはし れいか)が、慈しむような柔らかな微笑みを浮かべて告げた。「妊娠していますよ」私は何度も瞬きを繰り返した。それでも、視界の端で微笑む彼女の表情は変わらない。礼香に導かれるままモニターへ視線を移すと、そこにはシンクロして脈打つ、二つの小さな小さな光が映し出されていた。「双子ですね。二つの命を授かっています」――双子?妊娠したという事実すら、まだ現実感を伴わずに霧の向こうにあるというのに。あんなに気をつけていた。浅木真司(あさぎ しんじ)に命じられるまま、毎日欠かさず飲んでいたあの薬は、まさにこの事態を拒むためのものだったはずだ。私たちには、契約書があった――妊娠を明確に禁じた、血も通わぬあの契約書。それが二人の、唯一の繋がりだったはずなのに。「でも……ちゃんと、薬は飲んでいたんです」か細い、囁くような声しか出なかった。指先が微かに震える。私は診察台の縁を強く握りしめ、必死に自分を繋ぎ止めようとした。礼香が、わずかに眉をひそめる。「……本当に、飲み忘れはありませんでしたか?」答えに詰まった。記憶の断片が、頼りなく揺れる。何かに気を取られていた日があっただろうか。「えっと、その……」声が震え、私は力なく首を振った。「自信が、ありません」礼香の瞳に、真剣な色が混じる。「避妊をしていても、絶対ということはありません。ですが……」そこで一度言葉を切り、彼女は心配そうに私を見つめた。「この子は……望んでいなかったのですか?」「いえ」独り言のように、唇が動いた。「ただ……私に、新しい命を宿す資格なんて、ないと思っていましたから」礼香は、私のお腹についた冷たいゲルを丁寧に拭き取ってくれた。「今大切なのは、あなたと赤ちゃんたちの健康です。ですが美桜さん、一つだけ伝えておかなければならないことが」礼香の表情が、さらに険しさを増した。「あなたの子宮の状態では、人一倍の注意が必要です。栄養と休息、それから頻繁な検診。どれが欠けてもいけません」私は、機械的に頷くことしかできなかった。震える手が、まだ平らなままのお腹へと伸びる。二つの命。この瞬間も、私の中で確かに鼓動を刻んでいる、小さな存在。真司の子供。私たちの、子供……礼香に礼を告げ、私
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