絵里が気に入ったものに加えて、海鮮まで用意されていた。「絵里が好きなら、俺が作る。で、一緒に食う」裕也の眼差しがやわらぐ。甘やかすような、やさしい目だった。絵里の胸が、どくんと鳴った。「これ……全部、あなたが作ったの?一人で?」「『手料理』って言っただろ。人に任せてどうすんだよ」裕也は椅子を引き、彼女の肩にそっと手を添えて座らせる。「ほら、『料理ができる男のほうが、カッコイイ』ってよく言うだろ?」唇の端を持ち上げて笑うと、彼は軽やかに踵を返した。「タレ出してくる。すぐ食えるよ」キッチンへ消えたかと思えば、ほどなくして何種類もの調味料を抱えて戻ってくる。テーブルの上に、順番に並べていく所作が手慣れていた。つけダレ皿を手に、裕也が目を上げる。「どれがいい?」絵里はその穏やかな眼差しを受け止めた。「……ラー油ベースのたれ、お願い」「了解」裕也は迷いなく、素早く調合して彼女の前に置いた。「はい、どうぞ」「ありがとう」絵里は顔を上げ、彼の横顔をじっと見る。裕也は伏し目ながらにタレを作っている。濃い眉の下、照明が作る影が彫りの深い顔立ちをいっそう際立たせた。普段は近寄りがたいほど格のある男なのに、こうして何度も、自分のために台所に立つ。胸の奥が、こじ開けられるみたいだった。熱が、身体の内側を一気に満たしていく。はっと我に返り、裕也の手にある真っ赤なつけダレを見て、絵里は眉をひそめた。「辛いの苦手でしょ。なんでわざわざそんなに辛そうなタレにしたの?」裕也は口元をゆるめ、どこか得意げに笑う。「大丈夫、秘密兵器があるから」そう言って立ち上がり、冷蔵庫へ向かった。戻ってきた彼の腕には牛乳とヨーグルト。準備の本気度が、ひと目でわかる。裕也は席に戻ると、お鍋から煮えた具材をすくい、ひとつひとつ選り分けて彼女の器へ入れていった。「一緒に飯を食うなら、お前と同じ味を味わいたい。別々の味じゃ、なんか物足りないだろ」絵里の喉がきゅっと詰まる。「……無理して合わせなくていいのに」辛いものが食べられない人が無理をしたら、きついよ。前に一度、裕也は汗だくになって、唇まで赤く腫れた。それでも、不思議なくらい、みっともなさなんて欠片もなかった。その裕也が、ふいに顔を
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