和弘の反応は迅速だった。最後の一縷の望みにすがりつこうと、必死に抗う。それを見た暁の口元に、冷酷で、どこまでも無慈悲な弧が浮かんだ。葵の体が激しく揺れ、今にも椅子から滑り落ちそうになる。だが、これで終わりではなかった。「裁判長。当方は本件の鍵を握る証言者、猿渡健介(さるわたり けんすけ)氏の出廷を申請します」裁判官の許可が下りると、法廷の側門が静かに開いた。かつて「サル」と呼ばれていた少年が、暁のチームスタッフに守られながら証言台へと歩み出る。その顔には緊張が色濃く浮かんでいた。だが、対面に座る心愛の励ますような視線に気づいた瞬間、彼は深く息を吸い込んだ。そして事件当夜、俊輔と交わした通話の一部始終を、細部に至るまで克明に語り始めた。その証言は、先ほど再生された録音と、一秒の狂いもなく完全に一致していた。人証と物証。互いに補完し合う、逃れようのない完全な証拠の鎖が、今この場に提示されたのである。動かぬ証拠を突きつけられ、葵の弁護団は明らかに動揺した。和弘は咄嗟に論点をすり替え、たとえ録音が本物だとしても、それは紘に重大な嫌疑があることを示すに過ぎず、葵の関与を直接証明するものではないと弁明を始める。裁判官の厳しい視線が、ゆっくりと葵へ向けられた。「被告人、原告側が提示した証拠について、何か陳述はありますか」その瞬間、葵の目から涙があふれ出した。彼女は立ち上がり、嗚咽をこらえながら、か細い声で訴える。「裁判長……私、本当に何も知らなかったんです。紘は友人ですが、あんな恐ろしいことをするなんて思いもしませんでした。私も彼に騙されていたんです……もし、そんな企みを知っていたら、必ず止めていました……!」その演技は、かつてならば幾ばくかの同情を誘えたかもしれない。だが、今の暁にとっては、もはや取るに足らぬものだった。彼は静かにその芝居を見届け、葵が泣き止むのを待ってから、冷然と口を開く。「被告人。あなたは宇佐美紘の計画を一切知らず、関与もしていないと主張するのですね」そして、最後にして決定的な問いを投げた。「では、なぜ事後に、あなたの口座へ宇佐美紘から一億もの口止め料が振り込まれているのですか」葵は口を開きかけた。否定しようと、あるいは言い逃れを試みようとした。だが、暁の射抜
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