過去のすべてが、走馬灯のように莉奈の目の前をよぎった。かつての莉奈は、直哉の制止も聞かず、どうしようもないほど承也を愛し、意地でも彼と結婚しようとした。三年の結婚生活が莉奈に教えたのは、欲張れば必ず代償を払うことになるということだった。莉奈が払った代償は、真心が返ってこなかったこと。三年もの間、いいように弄ばれたこと。そして、仇が受けるべき罰を受けないままでいることだった。かつて愛していた分だけ、今は承也を憎んでいた。莉奈の視線が、クルーザーの外に広がる海面へ落ちた。このクルーザーはオープンタイプで、操縦席から船縁までの距離はそれほどなかった。後頭部では、男の手がどこかぎこちなく莉奈をなだめていた。かつて莉奈は、どれほど承也に抱きしめてほしかったことか。慰めてほしかったことか。守ってほしかったことか。けれど今は、そんなものを少しも欲しいとは思わなかった。「ひどい扱いはしていない」男のかすれた声が、莉奈の耳元に落ちた。莉奈は眉を寄せた。熱を持った目の縁が、さらに赤くなった。ふいに莉奈は冷たく笑った。そして承也が予想もしなかった瞬間、自由になった両手で承也の胸を力いっぱい押した。莉奈の両脚は承也に挟まれたままだった。承也が押されてクルーザーの外へ倒れかけた時、莉奈の身体もそのまま引きずられていった。それでも莉奈には、どうでもよかった。ふたりがそのまま海へ落ちるかと思われた瞬間、広い手が莉奈の肩を支えるように押した。その力で莉奈の身体はクルーザーの上へ戻り、承也は反動で、広い背中から深い青の海面へ重く落ちた。莉奈はクルーザーの床に尻もちをつき、承也が海に落ちるのを見た。大きく跳ね上がった白い水しぶきが、莉奈の視界を遮った。完全に見えなくなる直前、承也の脚がぴくりと引きつったように見えた。水しぶきが海へ戻っていった。波が何度もクルーザーを叩いた。あたりには波の音と、海鳥の鳴き声だけが聞こえていた。まるで、何も起こらなかったかのようだった。莉奈は床に座ったまま、陽光が自分の服に落ちるのを感じていた。さっき跳ねた海水で、服は濡れていた。この場所は寒くなかった。服が濡れても、身体が冷えきるほどではなかった。それなのに左胸のあたりだけは、ほかの場所よりひどく濡れているような気がした。冷た
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