会議が終わりにさしかかった時、莉亜は適当な言い訳をして先に会議室を出ていった。彼女が地下駐車場に来てみると、やはり朔也の車が入り口付近に止まっていた。朔也は到着した時に盛大な出迎えは断わっていたし、帰る時も同じく潤の見送りは拒否するだろう。莉亜は静かにそこで待っていた。さっきの会議室で起きたことを思い出し、頭の中に突然玲衣の話が蘇った。「朔也さんと結婚していればよかったのに」その話を思い出したことに驚き、すぐにそんな下手な考えは消してしまった。この時、外から誰かの足音が聞こえてきた。朔也と夏樹がやって来たのだ。莉亜は車の後方にいたので、夏樹は彼女に気づかず油断して話し始めた。「弟さんは一体どういうつもりなのでしょうね?まさか財務部の部長を自分の隣に座らせて、社長夫人である莉亜様を適当な場所に座らせるなんて。まさかあの女性、彼と何かあるのでは」莉亜はその話を聞いてしまい、出て行けなくなってその場に立ち尽くしてしまった。挨拶すらするのも気まずくなってしまった。その時ちょうど朔也が車の傍にやって来ていた。夏樹は莉亜に気づくとかなり驚き、思わずしどろもどろになってしまった。「しゃ、社長夫人、どうしてこのような場所に?」莉亜は気づかれてしまったので二人の前に出てきた。一方朔也は彼女が現れることを予期していたかのように、全然驚いた様子を見せなかった。莉亜は軽く咳払いをした。「朔也さん、あの、私……」彼女が言い終わるのを待たずに、朔也はマイバッハの後部座席のドアを開けて横目で彼女を見ると、あっさりとこう言った。「どうぞ」莉亜は言おうと思って準備していた言葉が全て喉元に引っかかって出てこなかった。彼女は一瞬戸惑い、唇をぎゅっと結び、後部座席に乗り込んだ。車内には微かにお香の良い香りがして、莉亜はそれでかなり心が落ち着いた。朔也と莉亜にはたった拳ほどの距離しかなかった。急な展開に彼女はかなり緊張してしまっている。莉亜が少し顔を傾けると、視界に朔也が袖のボタンを外している様子が映った。何ものにも囚われない自由さと優雅さを兼ね備えている男だ。次の瞬間、彼の目線と交わった。「俺に何か用だった?」莉亜は我に返り、カバンを持つ手に力を込めた。彼女は朔也とは数年に三回しか会ってないし、直接お願
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