◇ その日の夜──。 もみじは、祖父母に用意してもらった布団の上に座り、目の前の低いテーブルにパソコンを置いてコンテスト用のデザインを作成していた。 デザインに集中しすぎて目が疲れて来た頃。 ようやく区切りが良い所までデザインが進み、もみじは一旦疲れた目を休ませようと目を閉じて頭上を見上げた。 「こんな風に集中出来たのはいつぶりかしら……」 そう言えば、祖父母の家にやって来てから1度もスマホを確認していない。 電車に乗る時にマナーモードにしたまま、鞄にしまいっぱなしになっていたのだ。 「誠司くらいしか連絡は来ないだろうけど……一応確認しておこうかしら」 もみじはそう呟くと、もそもそと布団の上を移動し、鞄の中からスマホを取り出した。 電源をつけてみようとしたが、うんともすんとも言わない。 充電が切れてしまったようだった。 「ああ、もう……面倒だし、明日の朝に充電すれば良いか……」 誠司には書き置きを残してあるのだ。 そのため、もみじが祖父母の家に行っている事は知っているはず。 「あの様子じゃあ、誠司はきっとこの家には来ないわ」 一緒に行こうと言っていたけど、もみじと誠司は喧嘩をしたばかりだ。 しかも誠司は、怒ってもみじを社長室に置いて出て行ってしまったのだから、結婚式の話も。週末に祖父母の家に行こうと行っていた事もきっと全て忘れているだろう。 「ここだったら、誠司と胡桃の姿を見ないで済むわ。嫌な事を考えないで済むし、思い出さないで済む」 もみじは布団に横になると、天井を見上げたまま続ける。 「ここで過ごす2日間の間に、コンテスト用のデザインを完成させないと……。資料は……お母さんが持っていたものを借りればいいか……。明日、お母さんの仕事部屋に行ってみよう」 もみじが体勢を変えると、棚の上に置かれているトロフィーや盾が目に入る。 数々のトロフィーや盾に刻まれている名前は、もみじの母、舞奈の名前だった。 その名前の上には、国内外で開催されている沢山のデザインコンテスト名が記載されていた。 もみじの母親は、世界的にも有名なデザイナーだったのだ。 ◇ 「──ふざけた事をっ!」 場所は変わり、もみじと誠司の家。 誠司は仕事が終わり、帰宅した先でもみじが残した書き置きを見た瞬間昼間の怒りがぶり返し、誠司の手の中でもみじが
Última actualización : 2026-03-10 Leer más