◇ 「し、失礼……しました……」 まさに、放心状態──。 社長室から出てきた田島は、呆然としつつ、静かに社長室の扉を閉めた。 「田島さん。こちらへどうぞ。雇用契約の手続きと契約書のご説明をいたします」 「──へっ!?あ、わ、分かりました……!ありがとうございます!」 社長室から出てきた田島に、待っていたとばかりに髙野辺の秘書、蒔田が話しかける。 田島はびくりと肩を震わせて振り向いたが、振り向いた先にいたのが自分を案内してくれた蒔田だと分かると、すぐに安心して頷いた。 (こ、これから俺は本当にこの会社で働くのか──?し、しかもこんな敏腕秘書と思われる、この人と一緒に?社長の秘書として……?嘘だろう──) 田島は、何がどうなっているのか。 頭が混乱しきっていた。 だが、誠司の会社で謂れのない罪を被され、首になり。 職を失った田島にとって、髙野辺は救世主のように思えた。 しかも、デザイン会社で働く人間にとって、髙野辺が社長を務めているこのTK株式会社は、雲の上のような存在だ。 誰もが、こんな素晴らしいデザイン会社で働きたい、と思うような会社。 (まさか、俺がこんな素晴らしい会社で働けるなんて……!一時は絶望していたけど、本当に夢みたいだ……) 田島はそっと社長室を振り返る。 (新島社長に、あの奥様は勿体ないお人だ。俺は、あの方に感謝してもしきれない……) 田島は、自分が路頭に迷わなくなったのが誰のお陰なのか正しく理解していた。 そして、刑事罰を受けないように手配すると言ってくれた髙野辺にも、一生かかっても返せない恩がある。 (死ぬまでこの会社のために、俺は尽くそう……!髙野辺社長のお役に立つんだ……!) 田島は、心の中で誓うと拳を握り改めて気合いを入れた。 ◇ 社長室。 田島が出て行った後、髙野辺は自分のデスクに戻り、さきほど端に寄せてしまった本社のデザインコンテストの資料を手元に寄せた。 「今回の優勝者には、うちの専属デザイナーになってもらいたいんだが……そんな素晴らしいデザイナーが果たしているか……」 ぽつり、と呟きつつ髙野辺は資料を捲り、1つ1つデザインを確認していく。 そして、ある応募者のデザインを目にした瞬間、髙野辺の目が驚愕に見開かれ、勢い良くその場に立ち上がった。 髙野辺が立ち上がった事で、椅子が倒
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