◇ 「髙野辺社長」 「──田島秘書か」 もみじと別れた後。 髙野辺が車でぼうっとしていると、外から窓を叩かれた。 誰だ、と思った髙野辺が窓の外を見ると、そこには田島が何とも言えない表情で立っていた。 ドアを開けた髙野辺は、田島に問う。 「どうした、何か憂慮する事案でもあるのか?」 田島が購入したコーヒーは、既に冷めてしまっている。 だが、髙野辺はそれを気にせずに田島から受け取ると、運転席から後方の後部座席に移動した。 髙野辺と入れ替わるように運転席に乗り込んだ田島は、タブレットを取り出して操作し、それを髙野辺に差し出した。 「……このような事が。……かなり広まって来ております。その内、奥様の目にも止まるやもしれません」 「──?」 差し出されたタブレットを受け取った髙野辺は、画面に映る男女の姿に目を見開いた。 どこからどう見ても隠し撮りだろうその写真。 場所は、飛行機の中だと分かった。 それに、ピントがボケてぶれてしまってはいるが、その男女が絡み合い、キスをしている様子ははっきりと分かる。 「……まさか、これは」 「……画像は数枚、拡散されております」 「本当か?」 田島の言葉に、髙野辺は画面を操作する。 横にスワイプすると、新しい写真が画面に表示された。 次に表示された写真は、ピンぼけもしておらず、男女の顔がはっきりと映ってしまっていた。 「──新島さんの夫と、妹だな」 「ええ。はっきりと映っています」 「……不倫の決定的な証拠じゃないか。URLは?」 「既に社長のメールアドレスにお送りしております」 「分かった」 田島の言葉を受け、髙野辺は自分の社用スマホを取り出すと、画面を付けた。 メールを開き、URLから写真を表示すると画像を一括保存した。 「奥様がこの事に気が付いたら、傷付いてしまうはずです。最初は拡散速度は緩やかでしたが、今はもうかなりの速度で広がっています」 「そのようだな」 「奥様は、大丈夫でしょうか」 「多分、新島さんは大丈夫だろう。……離婚するための証拠が1つ増えた、と喜ぶんじゃないか」 「えっ、離婚ですか!?」 髙野辺の言葉に、田島はぎょっとして後ろを振り向く。 「えっ、えっ、奥様は離婚を……?」 「ああ。さっきそう聞いた。それより、前を向いて運転に集中してくれよ?」
Read more