もみじ自信、今の自分が冷静ではない事には気が付いていた。 まさに、売り言葉に買い言葉──。 もっと冷静に、誠司の不倫の証拠を得て、こちら側に何の落ち度も有責も発生しないようにして離婚に応じたかった。 だけど──。 「そんな酷い事を言われて、私はもう無理だわ」 「……は、」 「これにサインして、誠司。そんなに胡桃がいいなら、私と離婚してから胡桃と再婚して」 「──は」 もみじははっきりと言い放ち、誠司の眼前にとある紙を突き付ける。 それは、もみじが持っていた【離婚届】──。 どうしてもみじがこんな物を。 しかも、どうして俺がこれを突きつけられなきゃならない──。 誠司は、目の前の書類に書かれている【離婚】の文字に目を見開き、そしてもみじの顔を見た。 意思の強いもみじの瞳。 真っ直ぐこちらを射抜くように見つめるもみじ。 かつては、もみじの視線を独り占めできる事に誠司は幸福を感じていた。 もみじの強い意志の籠った瞳が、誠司は大好きだったのだ。 だが、いつからかもみじのその目が生意気だと感じるようになった。 仕事も何も分からない癖に、口を出す事が増えたもみじ。 こちらはもみじのために働いているっていうのに、休めだの、仕事量を調整しろだの、体調を鑑みろだの。 そんな事をしていたら幸せな結婚生活は送れない。 毎日倒れそうなほど働くのも、全てはもみじとの結婚生活を満足に送りたいからだった。 それなのに、もみじはそんな誠司の気持ちを理解せず休めとばかり言ってくる。 それが、とても腹立たしく感じたのだ。 全てもみじのためにしてやったのに──。 誠司は拳を握りしめ、もみじが掲げていた離婚届を奪い取ると破り捨てた。 「何が離婚だ!どうして俺がお前なんかに離婚を切り出されなきゃならない!離婚を切り出すのだとしたら俺だろう!」 「ちょっ、なんて事をするの!」 「ふざけるな!胡桃は俺たちに関係ないだろう!胡桃を巻き込むな!」 もみじを振り払うように、誠司は腕を振り上げた。 先程、もみじの部屋に入ってからもみじの香りがいっぱいに広がっているこの部屋にいるのがどこか落ち着かなかった。 早くこの部屋から出てしまいたい──。 そんな気持ちで逸り、誠司はもみじを良く見ていなかったのだ。 だから、振り上げた自分の腕──手が、もみじの顔の
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