「では、私はあちらに控えておりますので。どうぞご自由にお話ください」 「ああ。ありがとう」 看守はそう告げると、伏見から笑顔を向けられてぽうっと見蕩れる。 だが、はっとしたように表情を引き締め、室内の隅にある待機場所へと向かった。 その場に残された音羽が戸惑っていると、伏見は近くのテーブルと椅子に向かって歩いて行き、一脚の椅子を引き出した。 「──どうぞ、座ってください」 「あ、ありがとうございます」 男──伏見が話す度に低く艶やかな声が音羽の耳を撫ぜる。 その感覚にぞわぞわとしつつ、音羽は伏見が用意してくれた椅子に腰を下ろした。 「あ、あの……?」 そして、ちらりと伏見を見上げる音羽。 未だにどうして自分が呼ばれたのか、理解出来なかった。 そんな音羽に笑みを深め、くつりと喉奥で笑った伏見は優雅に足を組み、口を開いた。 「この刑務所に来た時に……たまたまあなたが目に入った。そんなに警戒しないで欲しい」 「しっ、失礼しました……。その、伏見さんは……どうしてこの刑務所の支援を……?」 音羽は、当たり障りの無い言葉を投げかける。 音羽の質問に、伏見は斜め上の虚空を見上げつつ「そうだな……」と呟いた。 「この先、何度も足を運ぶ事になるだろうからな……。自分の職場が、十分に支援が行き届いていなかったら支援もしたくなるものだ」 「……そ、そうなのですか……?それに、職場って……」 音羽には、伏見の考えは良く分からない。 職場の経営状況などを、普通気にするだろうか? 音羽が首を捻っているのを伏見は面白そうに眺めつつ、質問に答えた。 「来月からこの刑務所でカウンセラーとして働く予定だ。受刑者の心のケアを担当させていただく。……君も良かったら利用してくれ」 「カ、カウンセラーの先生だったんですか……!?」 「ああ。何か変か?」 「い、いえ……その、カウンセラーの先生は……温和なお爺さんや、女性を想像していたので……」 伏見のように若く、そして容姿の整った男性がカウンセラーとしてここに働きに来るなんて、と音羽は驚いてしまう。 音羽の驚きは想像していたのだろう。 伏見はくつり、と笑うと「変だろうか?」と首を傾げた。 「い、いえ……!失礼しました、少し驚いてしまっただけです……!」 「そうか、気にしなくていい。驚かれるのは慣
Last Updated : 2026-02-11 Read more