結局…別れることはできなかった。自分の意志の弱さに呆れる。こんなこと、美紀ちゃんに言ったら嫌われてしまう…龍之介に乗せられたタクシーがアパートに到着し、ドライバーにお礼を言って降りる。…料金は龍之介が先に支払ってくれた。半分以上お釣りとして返してもらえるはずなのに、笑顔だけを向けるドライバーは世渡り上手だと思う。チップということは…わかってる。でも、たくさん払わせて…龍之介に申し訳ない。「あ…れ?今帰りなんだね?」部屋に向かう途中で坂上と鉢合わせた。…なんというか、罪悪感。「はい。…えへへ…」「夜遊びだな?若い子はいいね!」すれ違い様に頭をポンっと撫で、坂上は続けた。「久しぶりにご飯でも行こうよ!…あ、変な気はないから安心して」襟元に輝く弁護士バッチを見せ、軽やかな笑顔を見せた。「そうですね。あの定食屋さんにでもまた…」安くて美味しかったのに…あれから足を運べなかったのは、坂上に出くわしたら気まずいと思っていたからだ。…そうだ。美紀ちゃんや昭仁さんに紹介しよう。弁護士さんの知り合いがいたら、きっと心強いだろう。出勤する坂上を見送り、桜は自分の部屋のドアを開けた。殺風景な部屋に足を踏み入れ…ここを出た一昨日の夜を思う。龍之介に、1度だけ抱かれて…お金を返して、すべてを終わりにするはずだった。けれど…龍之介の気持ちは思いのほか強くて、拒否しきれなかった。「毎日連絡をする、だって…」上着を脱がせたクマのぬいぐるみ、龍之介は、ネックレスも無くなって…よくいるただのぬいぐるみとしてそこにいる。遅くなっても返信は必ずするって…週末は一緒にいようって…そんなことできるの?「あ、そうだった…」肩に掛けてもらった上着がふわりと香った。紙袋に入れて持っていった上着ではなく、龍之介はホテルの部屋を出る時、自分の上着を羽織らせてくれたのだ。「この格好で…坂上さんと話しちゃった」龍之介との逢瀬のあとだとバレたのではないかと勝手に頬が赤くなる。「…ご飯食べて、仕事に行こう」自分に言い聞かせ、羽織っていた上着をクマの龍之介に着せた。「おはよう!桜ちゃんっ」元気に挨拶をしてくれる美紀に返事を返しながら…その目が見れない。けれど、嘘をついたり誤魔化したりしたくはなかった。商品の搬入が始まるわずかな間に、美紀を店の片隅に誘う。「あの
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