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42.悲しい決別

Author: 桜立風
last update publish date: 2026-03-30 11:58:50

「…え、部屋が開いていたって」

美紀に正直に借りたお金が無くなってしまったことを伝え、再び謝罪した桜。美紀はそれよりも、玄関のドアが夜中に開いていたことの方を問題にした。

今朝は商品の搬入が多く、話ができないまま昼の休憩になってしまった。

2人にお昼を食べるよう昭仁が言ってくれて、店番を代わってくれた。

「空き巣…かもしれない。私、出かける時、ちゃんと鍵を閉めたか怪しくて…」

「…だとしたらそんな部屋に帰るのは危険だよ?…それに、警察に通報しないと」

「そう、だよね。でも…警察ってあんまり好きじゃなくて…」

子供の頃…父親に叩かれて放り出され、何度か交番に行ったことがあった。

小さな田舎町のこと…私がどこの家の娘かわかっている警察官は、ろくに話も聞かず、すぐに父親のもとに私を返した。

「…つらかったね…」

美紀は思い出話をする桜の手を握り、なくなったお金のことを責めたりはしなかった。

だからこそ…より強く恐れた。もしも、お金がなくなったこと、そして鍵が開いていたことに…父親が関与していたら…

「…そうですねぇ、この純米大吟醸は飲みやすくて人気がありますよ」

昼休憩を終え、2人で店に戻
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