Share

43.決意と裏切り

Author: 桜立風
last update publish date: 2026-03-31 14:28:10

アパートの部屋に戻ってしばらくして…桜の携帯が鳴り響いた。

「ねぇっ!どうして出て行っちゃったのよっ!」

「…美紀ちゃん、ごめんね。でも絶対にまた会いに行くから、それまで待ってて」

「…もしもし、桜ちゃん?」

携帯の向こうで、昭仁に代わったのがわかった。

「昭仁さん、直接お礼も言えずに、すみませんでした。でも、父は本当に危険なので、もしまた姿を現して迷惑をかけたら…迷わず警察を呼んでください」

昭仁は美紀より冷静に、わかった…と返事をしてくれた。

昨夜打ち明けた生い立ちと、手紙に込めた思いを理解してくれたのだと思う。

「美紀ちゃんを、お願いします。ひ、1人にさせないようにしてほしい…父に、顔を見られたから…」

「美紀ちゃんは俺が守るから大丈夫。それより桜ちゃん…落ち着いたら、いつでも戻っておいで。待ってるから」

「はい。ありがとうございます…」

着信を切り、すぐに部屋を出られるよう準備を始めた。

全部を持って出るのは不可能だろう。

まずはクマの龍之介から上着を脱がせ、ボストンバッグに入れる。他に、入るだけの着替えと、そろえたわずかな化粧品…それだけでもういっぱいになってしまった。クマ
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter
Comments (1)
goodnovel comment avatar
tama neko
やっぱりそうだったのね。。。 坂上、最初からキモいと思ってたのよ。 蔵も龍も手に入らない麗香が嫉妬して桜を売ったんじゃないかな?  組同士の事を考えた結婚なんて嘘じゃない? 龍さんに早く知らせたいッ...️...️...️...
VIEW ALL COMMENTS

Latest chapter

  • 極道と、咲き乱れる桜の恋   95.斉藤の思惑

    「斉藤さん、メンズスーツのフランドを起ち上げるらしいんだわ」「メンズスーツ……」「名前が|Matusiro.Homme《マツシロ.オム》だと。ちょいダサいけどな。あの人頑固だから聞かねぇんだ」そんな話は初耳だった。確かに、カタギになった龍之介は、これからどんな仕事をしていくつもりなのか、気になってはいたけれど、まさか紳士服ブランドなんて……「起ち上げに協力するということは、デザインして型紙起こして……生地を裁断してミシンをかけるって、そういうことですか?」「あっはは……っ!そっか、桜の頭のでは、そんな風に想像するのか!」桜の頭を撫でながらひとしきり笑ったあと、龍之介はなんとか笑いをおさめて説明を続ける。「デザインはちゃんとデザイナーがやるんじゃねぇの?……服を作るのもその道のプロがやってさ、俺はなんていうんだ……その出来上がった服を着て、写真を取られたり歩き回るだけでいいっていうんだよな」「龍、龍之介さん……それ、モデルってこと?」「あぁ、そのモデルだ。モデルといえば女だろ?……男のモデルなんか見たい奴、いるのかねぇ?」……いると思います。この、整いすぎて冷たそうにすら見える顔で、鍛え上げられた筋肉を隠した体でスーツなんか着たら……「あ、あの、ファンがいっぱいできちゃいそうで、私……」ヤキモチ爆発します、とは言いにくい。そこで足元で遊ぶ龍桜の横にしゃがんで、目の前を通るアリの行進を眺めた。「大丈夫だ。ファンができたとしても、そのへんの対応は斉藤さんがやってくれるだろ」龍桜と桜の頭に手を置いて、見上げる桜と目を合わせる。龍之介さんをモデルになんて、斉藤さん、先に話してくれたら良かったのに……「そんな話したら、桜ちゃん心配しすぎて倒れちゃうと思ったから……いきなり本人に言ってごめんね?」義母の家で一泊した翌日の夕方、蔵之介を送り、自宅へ帰ってきた。カフェは結構な忙しさで、美紀も手伝いに来てくれている。桜は留守を預かってくれたお礼を伝えながら、斉藤にこそっと龍之介のモデルの件を聞いたことを話した。「人気者になっちゃったら、どうするんですか?もぅ……」「任侠者から人気者へ。西門龍之介、華麗な転身……なんちゃって?」「斉藤さん、龍之介さんを売り出すつもり?さすが、松白屋専務!」美紀も話に入ってきて、2人で龍之介をモデルする構

  • 極道と、咲き乱れる桜の恋   94.西門家の団らん

    「いいところだろ。海風が気持ちいい……」「あぁ。高台で、人に見下されたくない親父には最適な墓だな」助手席を降りて空を仰ぐ龍之介の言葉に、運転席を降りた蔵之介が感想を言う。2週間の入院の後、さらに自宅で1週間休んでから、組長……龍之介と蔵之介の父親の墓参りにやってきた。「早いうちにお墓を買っておいて良かったわ」「ハァイ…!」お義母さまに抱かれた龍桜も一緒だ。龍之介が墓前に報告した。「桜が産んでくれた俺の息子、龍桜だ。親父に言った通り、これから俺は……嫁と子供のために生きていく」桜の肩を抱く龍之介。見よう見まねで手を合わせる龍桜に、そこにいる皆が目を細めた。「まさか我ら一族に、こんな平和な時間が訪れるとはね」「そうだな。……組長の最後は壮絶ではあったが、あの行動があってこその、今かもしれない」西龍会を守るために。家族を、そして組員たちを守るためにすべてを背負い、1人で逝った組長。お義母さまがそっと涙を拭った。「怪我はしても命まで取られなかったのは、組長に守られたからだ」龍桜を囲むようにして、全員で手を合わせる。組長への感謝、そしてこれから先のの、静かで平穏な日々を祈って……墓参りを終えた一行は、母が1人で暮らす家へと場所を移動した。今日はこのまま泊まる予定。桜のカフェは、斉藤が桜に代わって営業をしてくれることになっている。「別に……斉藤ちゃんに頼まなくてもさ。1日くらい休んでもお客さん離れねぇだろ?」「離れませんけど、あのカフェはもう、私だけの居場所じゃないんですよ?……斉藤さんがお手伝いを申し出てくれたときは、お言葉に甘えるんです」「あぁそうですか。……甘えるのは言葉だけにしろよな」「……何か言いました?」「何でもありましぇん……」桜が斉藤を頼りにする素振りを見ると、とたんに面白くなさそうにする龍之介。「斉藤さん、料理できんの?」そんな龍之介に呆れた顔をしてみせて、蔵之介が聞いた。「どうなんでしょう?でもあまりキッチンに入ってこないので、苦手なのかもしれませんね!」「今後は入れない方がいいと思いますよ?キッチンなんて狭いんだから……」「はい、だから今日はランチはお休みして、ケーキと飲み物だけで営業してもらってるんです……けど」龍之介が話に入ってきて口をとがらせ、その顔を見て、また蔵之介が呆れた。「龍之

  • 極道と、咲き乱れる桜の恋   93龍之介の話 Side.斉藤

    「志田川の若い者たちに、俺を良く思わないのが多くいたらしい」組長の葬式の最中のこと……突然乱入してきた数人の若い男にいきなり切りつけられたという龍之介。「麗香のこともそうだが、手を組んで3年で俺たち兄弟がいなくなって西龍会解散とは……納得いかなかったんだろうな」「そういうことか。……で、母さんは?」「祖父さんが晩年を過ごした地方の家に、骨になった組長と一緒に行った。……向こうなら、母さんの姉妹もいるから、心配ないだろ」蔵之介との話が終わったあたりで……桜が龍之介に向き合う。「……その怪我、本当はまだ治療中なんじゃないですか?もしかして、点滴を勝手に外して病室を出てきたんじゃ……」心配そうに龍之介を見上げる桜の目は、憂いを帯びて、ひどく色っぽい。……そんな表情は、彼がいる時しかしないことに、いち早く気づく自分に呆れてしまう。「まぁ、看護師には散々止められたがな、必ず戻ってくるって約束して出てきたから大丈夫だ」龍之介も桜を見下ろし、これまた彼女にしか向けない柔らかい表情をして見せる。相思相愛とは……彼らのためにある言葉のようだ。「志田川の奴らにやられたことは、咎めねぇつもりだ。足を洗う俺に対する組員たちからの別れの挨拶ってことで、この痛みは受け入れる」「俺のときはなんもなかったのに……」不服そうな蔵之介に、龍之介は笑顔を返した。「当然だ。たった1人の弟に、こんな痛い目見せてたまるかよ」「蔵之介さんの分もまとめて切られたってことですか……カッコよすぎでしょ?」「いや、蔵之介が組を抜ける決断をしたから、俺も抜ける事が出来たんですよ」兄弟の話に入る斉藤に、龍之介は少し眩しそうな目を向けた。「蔵之介に後のことは任せたいと思ったことはあったが……志田川とまとまってからは、あいつには若頭も組を継ぐことも、任せられねぇって思った。だから、蔵之介が組を抜ける決意を固めなきゃ、俺も今頃ここにはいねぇってことです」話を聞く限り、龍之介さんは組長の死という形で西龍会に幕を引き、志田川組へ礼儀を通し、報いをうけたことになる。確かにもう、自由の身だ。そして確信する。桜への、自分の想いは叶わなかったと。けれどここであっけなく退散したくはない……「状況は、わかりましたよね?皆さん」しんみりしたムードをわざと壊してやった。話は、先を見越して弟を組

  • 極道と、咲き乱れる桜の恋   92.龍之介現る

    「あのバカっ!……いったい何をやってんだか」龍之介がやって来たあの夜から、まもなく3ヶ月が過ぎようとしていた。「麗香共々、連絡してもまったく捕まらないんだよねぇ……和哉の後の舎弟とはろくに話さないで屋敷を出たから、連絡先知らんし、櫻川も閉まってるんだよなぁ」「気長に、待ってみます」桜も携帯の番号はすでに変わっていて、連絡を取り合う手段がなかった。あの夜、龍之介が来てくれた時の言葉を信じるだけ。でも最近思う。もしかしたらもう、会わない方がいいのかもしれないと。「蔵之介さんは、もう屋敷には入れないんですか?極道さん辞めちゃったから?」「なに美紀ちゃん。俺に偵察に行けってか?」「あんな怖いとこに近づけるの、蔵之介さんだけでしょ?悪いけど……美紀は行かせられないよ?」美紀を引っ込め、昭仁が身を乗り出した。ちょうど来てくれた時間が同じで、美紀と昭仁と同じテーブルに案内した蔵之介が口を尖らせる。「はいはい。近く行ってみますよ。……そんで、いい加減待たせすぎって怒鳴りつけてやる!」そんな言葉に、つい目を伏せてしまう。会いたいのに、会いたくない。このまますべてを忘れてしまえたらいいのに……と、思うようになったから。そこへ、斎藤に抱かれ、龍桜が帰ってきた。「まだ遊ぶ気満々だったんだけど、やたら目をこすってグズりはじめてさ……こりゃ眠いんだなと思って帰ってきた」「それは……お手数かけました」「そんなのいいから!……あ、皆さん、いらっしゃいませ」蔵之介たちが来ていることに気づき、挨拶をしたものの、自分の店じゃなかった、と言って赤面する斎藤。……あの日から、確実に距離は近づいている。麗香さんの妊娠を聞いて、やはり龍之介を忘れなくちゃいけないと思った。泣き出す私に胸を貸し、やがて頬に手をかけ、見つめ合った……けれど、キスはできなかった。もちろん彼も、無理強いする人ではない。でもあの日から、ハッキリと好意を示し、顔を見せてくれる日は確実に増えている。龍之介と2度と会えなくなっても、彼で寂しさを埋めるようなことをしてはいけない。慣れた様子で龍桜を寝かせに行ってくれたけれど……桜は斎藤にも、決意を伝えようとしていた。「斎藤さん、優しいよね。ちゃんとした人だし、最高じゃない?」「もう……美紀ちゃん、その話は無しで!」「俺もそう思うよ?」

  • 極道と、咲き乱れる桜の恋   91.崩れ去る屋敷

    「今なんて言ったんだい……龍之介さんよ、」「自分の立場を佐竹に譲って、俺は組織を抜けます。麗香とも別れて」「……はっ!そんなこと、西龍会が許すはずがねぇだろ?」志田川会、と書かれた横型の掛け軸の下で、俺は志田川の組長と向き合って話をしていた。「認めさせます。どんな犠牲を払っても」「冗談じゃないよ……いつの間にか蔵之介も見えなくなってるじゃない。和哉も殺られてその上若頭までいなくなったら、西龍会に残るのは下っ端ばかりだ」「佐竹のことは、組長も目をかけているんじゃないですか?ならばあいつにこれからのことを……」「これからあんたと揉めさせようと思ってたんだよ。そのうえで、やっと勝ち取った若頭の地位じゃなきゃ、意味はねぇよ!」脅しても泣きを入れても、微動だにしない俺に、志田川の組長はだんだん苛立ちを募らせていく。「けじめはつけますんで……お言葉、待ってます」言葉、というのは、西龍会では組織を抜けるために積む金の金額を意味する。昔は指を詰める、など手荒なことをしていたが、現組長の代になって、西龍会でそういったことは行われなくなったと聞く。そもそも、命を落として組織を抜ける者はいても、別の道を行く選択をする者はいなかった。それが……組長の息子自らがそんなことになるとは、皮肉なものだと思う。「……待てやっ!」話は終わったとして、立ち上がる龍之介に慌てて声をかける組長。事務所を出ていかれたら、抜けることを認めても同じ……俺を呼び止めた声には、何の拘束力もないように聞こえたが。「……あんた、惚れてる女がいるそうじゃないの」眉間にシワを寄せ、厳しい視線を向ける俺に手応えを感じたらしい。「麗香とは別れてもいい。そんで!……その女と一緒になれば、なにもここを去る必要はないでしょうが……!」「そのつもりはありません」桜のことは、麗香や組の連中から聞いているのだろうが、多くを語るつもりはない。「麗香には話をつけてありますし、それなりの配慮はするつもりです。……そもそも俺と麗香の結婚で組織は手を組み、楓卿組、龍城組を傘下に入れて、関東最大の組織に成長したはずですよ。……俺は役割をまっとうした」「そうはいっても、中が空洞じゃ……いつバラされるかわかったもんじゃねぇっ!だからあんたの力が……」「お言葉ですが……俺は単なる若頭。現組長お2人の、鉄砲玉に

  • 極道と、咲き乱れる桜の恋   90.龍之介の真実

    「……それは、本当ですか?」「あぁ。言うつもりはなかった。だが、ここへ来たときの彼の様子を見て、心配になって」龍之介を龍桜に会わせる事ができた軌跡を思い、幸せに浸っていた数日後、斎藤がやってきて、つらい話を聞くことになった桜。「龍之介さんの車は目立つんだよね。……どうしてかな?高級車だけど、ただの黒い車なのにね?」神妙な様子の桜に、斎藤は少しだけおどけてみせる。そんな気づかいを感じながら……悪い話を予感している桜はうまく笑えない。「2人でいるところを、見ちゃってね」それは、少し前のことだという。「仕事で訪れた場所だったんだけど、車を降りたら目の前に黒塗りの車が停まって、麗香さんと龍之介さんが降りてきた。……すぐ目の前に産婦人科病院があって、2人でそこに入っていったんだ」「それは、麗香さんが……」そうだ……どうしてそんな可能性を想像しなかったんだろう。あれから3年……2つの組を存続させるための政略結婚。子供を望む声が上がるのは自然なこと。それだけじゃない。女性と同じ部屋で眠って……何年も何もないなんて、考えられないことだと聞いたことがある。ふと、自分にしか機能しないと聞いたあの日を思い出した。私は、龍之介さんのあの言葉を信じたかったんだ。現実的ではないのに……もうとっくに治っているかもしれないのに。自分が、ひどく滑稽に思えた。「麗香さん、とても嬉しそうな笑顔だった。それとなくお腹に手を当てて。まだ全然大きなお腹ではなかったけど、もしかしたら定期検診に龍之介さんが付き添ったのかな、って思ったよ」目の前がゆらりと波打って見える……波打ち際に立っているかのように、足を取られる感覚にぐらついた。「……大丈夫?桜ちゃん、変な話をして悪かったね。でも、見過ごせなかった」桜に手を貸し、椅子に座らせる斎藤。「もう店じまいの時間だよね?」斎藤は手慣れた様子で看板をしまい、店先の明かりを消し、ドアの鍵をかけてくれた。いつもなら、人さまにそんなことさせないのに……けれどこの時は、自分でやる、と言えないほどショックを受けていた。ありがとうの言葉も出ないほどに。「美紀ちゃんは、泊まって行くのかな?」「……はい。今、龍桜をお風呂に入れてくれてるので」斎藤はホッとしたように息を吐き出し、桜の様子を伺う。そして決心したように、話を戻した。「

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status