晴南は、当初はきっぱりと断っていた。これは咲夜がオーダーしたドレスであり、サイズが合わないのはもちろん、本人がまだ一度も袖を通していない品だったからだ。彼は洸の頼みをやんわりと退け、「写真館へ行けば別のドレスを試着できるし、撮影だってできる」と宥めた。洸は口では理解したように振る舞ったものの、その直後、部屋に閉じこもり自傷行為に及んだ。情緒を安定させるため、晴南はやむなく、ドレスを試着したいという彼女の願いを受け入れることになったのである。だが、すべて計算のうちだと思っていた彼にも、ただ一つの誤算があった。咲夜がプランナーからの連絡を受け、すぐさまここへ駆けつけてくるなど、夢にも思っていなかったのだ。適当な口実を作り、咲夜をその場から連れ出そうとした矢先、洸がドレス姿のまま部屋から飛び出してきた。あまりにも鮮やかなかたちで「嘘」が暴かれ、晴南はなす術もなく立ち尽くすしかなかった。咲夜は、目の前の男を嘲るような眼差しで見据えた。「ええ、確かに説明してもらう必要があるわね」「それは……」晴南は激しい葛藤に呑み込まれ、どう弁解すべきか必死に言葉を探す。そのとき、洸が焦ったように口を開いた。「咲夜さん、晴南さんを責めないで。ドレスがあまりに綺麗だったから、私、一生着る機会なんてないと思って……それで晴南に無理を言って試着させてもらったの。私が悪いの。責めるなら私を責めて。本当に素敵なドレスで、どうしても我慢できなかったのよ」一見すると責任を引き受けているようなその「説明」は、しかし実際には、一言一句が咲夜への露骨な挑発だった。晴南は洸に背を向けていたため、彼女の口元に浮かんだ勝ち誇った笑みに気づくはずもない。洸は顎をわずかに上げ、咲夜を射抜くような挑発的な視線を向ける。これまでと同じように、咲夜が理性を失って激昂し、晴南と激しく衝突することを期待していたのだ。二人の関係が壊れれば壊れるほど、自分の入り込む余地が生まれる。だが、洸の期待はあっけなく裏切られた。かつての咲夜であれば、執着ゆえに声を荒らげていたかもしれない。しかし今の彼女にとって、目の前の男はもはやどうでもいい存在だった。争う気力すら湧いてこない。咲夜は淡々と二人を見つめ、口元を皮肉げに歪める。そして洸に向かって言った
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