「ちょっと! 武田さんっ!!」 頭の痛くなる声が降ってきた。加藤佳子(かとうよしこ)――お局の声だ。 彼女は独身貴族を貫いている、漫画で言うと赤渕眼鏡のザ・お局、という絵図が大変当てはまる女性だ。年齢3X年。この情報は非公開の模様。 多分、自分は『超・イケてるアラサー』だと思っている。いや、これ絶対だ。 とりあえずキンキンと癇に障る声がフロアに響き渡り、ただでさえ痛い頭がさらに痛みを増した。「はい、なんでしょうか…」げんなりして返事をした。「この書類、どうなっているの! さっき頼んだ手直しは済んでいるの!?」「はい。すでに共有にかけておりますが…」「どこに共有がかかっているの!? 日付昨日のままなんだけど!」「そんなはずは……」 私は自分のパソコンでさきほど共有をかけた修正データを確認した。日付も変わっているし、新しいデータになっている。「あの…新しいデータで共有がかかっているみたいです。もういちどご確認いただいてもよろしいでしょうか?」「なによ私が間違っているとでも言うの!?」 こういう人、ほんと言葉が通じないのよね。なんで? 日本人じゃなくて宇宙人なの?「まあまあ、加藤さん。武田さんもこう言っているのだから、確認されてみたはいかがですか?」 たまたまマーケティング課に来てくれた葛野(くずの)さんが助け船をだしてくれた。 葛野さんは営業一課で成績がよい方だ。オールバックに甘いマスクを装備した女ったらしで有名人だから、私はぜんぜん好きじゃない。「あら…データ、変わっているみたいね」 葛野さんが言ったとたん、素直にデータを確認し、変更されたことを認めるお局(怒)。 「加藤さん、よく確認しなきゃ。せっかく武田さんが手伝いに来てくれたのに、これじゃ悪いよ」「そうね。葛野さんの言うとおりだわ」 で、謝らない、と(怒)。「加藤さん。私、マーケティング部が大変人手不足ということで本日、臨時で手伝いに入ったのです。右も左もわからないのに、そんな言い方、あんまりです」 あまりにひどい対応だったので、ついお局に盾突いてしまった。 でも、ヘルプに入って早々この対応はないよ! ひどすぎる!!「たしかに、武田さんの言うことも一理あるな。加藤さん、しっかり教育してくれよ。君にかかっているんだから」
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