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復讐クエスト3 / LV1 勇者リオナ 01

 「ちょっと! 武田さんっ!!」  頭の痛くなる声が降ってきた。加藤佳子(かとうよしこ)――お局の声だ。  彼女は独身貴族を貫いている、漫画で言うと赤渕眼鏡のザ・お局、という絵図が大変当てはまる女性だ。年齢3X年。この情報は非公開の模様。  多分、自分は『超・イケてるアラサー』だと思っている。いや、これ絶対だ。 とりあえずキンキンと癇に障る声がフロアに響き渡り、ただでさえ痛い頭がさらに痛みを増した。「はい、なんでしょうか…」げんなりして返事をした。「この書類、どうなっているの! さっき頼んだ手直しは済んでいるの!?」「はい。すでに共有にかけておりますが…」「どこに共有がかかっているの!? 日付昨日のままなんだけど!」「そんなはずは……」 私は自分のパソコンでさきほど共有をかけた修正データを確認した。日付も変わっているし、新しいデータになっている。「あの…新しいデータで共有がかかっているみたいです。もういちどご確認いただいてもよろしいでしょうか?」「なによ私が間違っているとでも言うの!?」 こういう人、ほんと言葉が通じないのよね。なんで?  日本人じゃなくて宇宙人なの?「まあまあ、加藤さん。武田さんもこう言っているのだから、確認されてみたはいかがですか?」 たまたまマーケティング課に来てくれた葛野(くずの)さんが助け船をだしてくれた。  葛野さんは営業一課で成績がよい方だ。オールバックに甘いマスクを装備した女ったらしで有名人だから、私はぜんぜん好きじゃない。「あら…データ、変わっているみたいね」 葛野さんが言ったとたん、素直にデータを確認し、変更されたことを認めるお局(怒)。  「加藤さん、よく確認しなきゃ。せっかく武田さんが手伝いに来てくれたのに、これじゃ悪いよ」「そうね。葛野さんの言うとおりだわ」 で、謝らない、と(怒)。「加藤さん。私、マーケティング部が大変人手不足ということで本日、臨時で手伝いに入ったのです。右も左もわからないのに、そんな言い方、あんまりです」 あまりにひどい対応だったので、ついお局に盾突いてしまった。  でも、ヘルプに入って早々この対応はないよ!  ひどすぎる!!「たしかに、武田さんの言うことも一理あるな。加藤さん、しっかり教育してくれよ。君にかかっているんだから」 
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復讐クエスト3 / LV1 勇者リオナ 02

 とりあえず葛野さんが牽制してくれたから波風はもう立たないだろうと思っていたら、そんな考えは大間違いだった。加藤さんは私が葛野さんに庇ってもらったことについてぼそぼそと呪詛のようになにか呟いて、般若みたいな形相で睨んでいたのだ。 「データが消えているわ!」  さきほどのやり取りがあってから1時間ほど経ったあたりで、またお局が騒ぎ出した。共有をかけたデータが消えているというのだ。なんで?「武田さん、さっきのデータ、もう一度送ってちょうだい」 そっちでバックアップも取ってないの、とげんなりしたが顔には出さず、もう一度共有をかけようとしたが…「データがありません!」 共有フォルダに確かに保存して入れておいたデータが丸ごと消えている。なんで?「大事なマーケティングデータを消してしまったの!?」 フロアに響き渡る大声でお局が喋る。「最低ねあなた! 初日からこんなミスをするなんて! 信じられないわ!!」 よくデータを探しもしないでやり玉に挙げてくる。「ないなら以前のデータを改変してさっさと提出しなさいっ!!」 言い返せず私は再度共有フォルダを開いた。しかし、以前のデータもなくなっている。なんで?「前のデータも…ありません」「ちょっとぉぉぉ、『前のデータも…ありません』じゃあ困るんだけどぉ!」「でも…私は触っていません」「あなたが最後にデータを保存したんでしょ? ないなんておかしいじゃないの! 間違えて消しちゃったんでしょ! それしか考えられないわッ!!」「触っていません!」 言い合いになった。  どうしてこの人よく調べもしないで、今日マーケティング部にヘルプで来たばかりの私をここまで攻撃するの!? ありえない!! 結果、データは見つからず、さらに葛野さんと仲がいいからと難癖つけられ、お局にこっぴどく叱られた。もうやだ…。  どうしようかと思っていたら、フロアを歩いている宇治川先輩に声をかけてもらった。「武田さん、この前はありがとうね」「あ、宇治川さん…」 宇治川先輩は少し前、お子さんのお迎えがあるのに残業が入ってしまったので、私が彼の仕事を引き受け、企画書の修正をしたことについてお礼を言ってくれた。そんなの大したことないのに、律儀な人だ。 「どうかした?」 落ち込んだ私の顔を見て尋ねてくれた。「あ…少し、お話を聞い
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復讐クエスト3 / LV1 勇者リオナ 03

  「えっと…僕で手伝えることはある?」宇治川先輩が優しく聞いてくれた。「武田さんがお仕事頑張れるようになにか……」「無理なんです」「どうして無理なんて……」「葛野さんが私を贔屓にしているからって…朝から加藤さんと言い合いになってしまって、そのあと、大事なデータをデリートしたとやり玉に挙げてきたんです…それが私のせいにされてしまって」「は!!??」 宇治川先輩が目を見開いて驚いた。「んーと…葛野さんと仲がいいっていっても、あの人が勝手に武田さんに言い寄ってきているだけだよね? 僕、注意したことあったよね?」「はい。そうなんです。でも、加藤さんは信じてくれなくて…どうやら、葛野さんとお付き合いをされているようで……」 叱られている最中、なんか意味深なことを言っていた。  葛野さんと付き合っているのはこの私、武田さんなんか相手にされないから身の程をわきまえろ的なことを言われた。  だから加藤さんが私に攻撃的なのは、葛野さんのせいなのだと思った。  あの男が私に言い寄ってきているだけなのに、とんだ誤解だ。そのことを訴えても聞き入れてもらなかったし。「ええっ!!?? 葛野さんと加藤さんがつきあ――もがっ」 思わず宇治川先輩の口を塞いで大声をあげてしまった。「しー、宇治川さんっ、声が大きいですっ!!」「驚いて大声出しちゃってごめんね。一旦整理しよう」 宇治川先輩がパスタを頬張りながらうーん、と考えた。  目の前にいる眼鏡をかけた真面目な先輩が、まるで探偵のように思えた。「――つまり、葛野さんとの仲を疑われて、加藤さんにやっかまれて、ありもしないデータ消去を武田さんのせいにされたってことだよね?」「はい。おっしゃるとおりです」 断言しちゃったけど、そうとしか考えられないもん!「なにそれ…アホらし。でも、巻き込まれた方はとんだ迷惑だよね」「そうなんです……。女性の方がマーケティング課で続かないのって、絶対加藤さんが原因ですよ。仕事で厳しいのならともかく、勝手な憶測で仲を疑って…ほんとに酷いです…」「僕が掛け合ってみてもいい?」「そんなことできるのですか?」「加藤さんを攻めるんじゃなくて、葛野さんの方を狙うんだ」 宇治川先輩がこの件は僕に任せて、と言ってくれたのでお願いした。別れ際、ランチ代を払おうとしたら「この前のお
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復讐クエスト3 / LV1 勇者リオナ 04

  「お疲れ」 社に戻ると営業一課の柾谷櫂(まさたにかい)さんが声をかけてくれた。「お疲れさま」 柾谷さんは独身+清潔があってシゴデキイケメンなのですごくモテる。たしか年齢は…29歳だったかな?  私が27歳だから、2歳上でそこまで離れていないというのもあって、親近感があるけれど、仲良くしていたら他の女子に睨まれそう。 実は彼、同じソシャゲで一緒にプレイをしている仲間である。2人の時はゲーム仲間という間柄というのもあって、敬語はナシだ。「今日、キンモンする?」 キンモンとは、キングオブモンスターの略で、その名の通り最強のモンスターを育てるソーシャルゲームのことだ。今、世界的に流行していて、オンラインで繋がった人たちとダンジョンに潜ったり狩に出たりバトルしたり、自由に遊べるゲーム。  私と彼はこのキンモンを介したオフ会で仲良くなった。だから名前もフレンド名前で呼び合っている。私は『リオリオ』彼は『バッキン』。  なぜバッキンなのかと聞いたら、バッキンガム宮殿から名付けたという渋い回答をもらった記憶アリ。  ゲームを通じて仲良くなったけれど、お互いに社のことはわかっているし、愚痴を言い合う茶飲み仲間みたいな関係の人に落ち着いた。「ううん。今日はいい」「どしたん?」「うん…ちょっと…仕事でトラブって…」 思わずため息が出た。「今日マーケティング?」「うん」「お局か」 私がなぜ落ち込んでいるのか、原因を言い当てた。バッキンは察しがいい。「なにがあった?」「急なデータ消失にあったんだ。お局は自分でバックアップも取ってないって言うし、変更前データもなくなっていておかしいの。そんなことある?」「ないね。リオリオをハメる気まんまんだな」「でも証拠がなくて…」「話、長くなりそうだな。なおさらキンモンやろう。愚痴聞くから」「…じゃあ、そうしようかな」「待ってる」 会社であまり親密に話しているとお局あたりに目を付けられても困るから、必要最低限の会話にとどめている。ゲームアプリを通じてメッセージを送ったりする仲ではあるが、お互いゲームのお誘いのみの関係だ。 データのことをどう解決しようかと思いながら戻ったら、なんとお局の方から優しく話しかけてきた。「武田さん、ちょっといいかしら」「はい、なんでしょうか…」 また説教かと思
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復讐クエスト3 / LV1 勇者リオナ 05

  「これ見てよ。君の元上司が頭を下げて君のことを頼むって言ってきたんだ。情けない姿だよね~。記念に送ってあげるよ」 葛野さんは私に宇治川先輩が土下座している写真を見せた。「こんな……っ、ひどい……」「そう、ひどいだろ? だから宇治川みたいなしょうもない男と仲良くするのはだめだよ。俺みたいな優秀な人間に……」「すみません、失礼します!」 葛野さんを押しのけて営業二課へダッシュした。加藤さんが故意に隠していたデータを出してきて、私にふざけた謝罪をしてきたのは、宇治川先輩が動いてくれたからなんだ…!  先輩を呼び出してもらい、フロアに出てもらった。私は開口一発で謝罪を申し出た。「私のために、ごめんなさい…」 土下座なんて相当な屈辱だっただろう。ほんとうに申しわけないことをしてしまった…。彼に相談したばかりに…。それなのに気にしないで、と言ってくれたが、ひたすら平謝りした。「それより加藤さんのことは要注意だね」「はい。気を付けます」「作ったデータや原本はできれば別のUSBに保存して隠しておいた方がいいよ。データに関しては社外持ち出し禁止だから、もし保管場所に困ったら預かるよ」 土下座のことなんか微塵も気にしていない様子で、先輩が言ってくれた。  なんて懐の広い人なんだろう……。「助かります! 宇治川さん、ほんとうにありがとうございます!」「大丈夫。嫌な奴には負けずに頑張ろうね」「はいっ!」「とにかく加藤さん対策には、葛野さんをうまく使おう。でも彼は、加藤さんと付き合ってないとか言ってたよ」「葛野さんは既婚者ですから、お付き合いについては否定しますよね。でも、加藤さんの方は葛野さんとお付き合いしていると鼻息荒くして言っていましたよ。ただ、その割には婚活パーティーにも行くみたいです」 私は知っている。お局が毎週金曜日の週末、就業後に絶対残業は入れず、めかしこんで婚活パーティーに行っていることを!  「えっ、どういうこと? 加藤さん、葛野さんと付き合っているんだよね? 婚活パーティーも行くの?」 バッキン情報だから間違いない。でもこれはオフレコだから情報源は明かせないので、噂で聞いたということにしておいた。「…まあ、誰と付き合おうが、独身なら婚活パーティーに行っても問題ないし、いいんじゃないかな。ちょっと…考えられないけど」
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復讐クエスト3 / LV1 勇者リオナ 06

  『そうだけど…なんか、初めて仕事が嫌になっちゃったよ。葛野さんが嫌だっていうバッキンの気持ちが超わかった』『あいつマジ最低なヤツだから。まだしつこく飯誘われてんの?』 バッキンには以前、葛野さんがしつこいって愚痴ったことがあったからそれを心配してくれている。彼も葛野さんを嫌っている。同じ営業一課で葛野さんの方が成績がいいのだけれども、セコい手(内容は教えてくれなかった)を使って営業獲得しているらしく、女性のお客様が非常に多い。既婚者なのにモテを前面に押し出しての顧客獲得・営業成功なのだろう。『うん…それをお局がやきもち焼いてるみたいで、なんかとばっちり喰らったというか…』『ありえねー』『だよね。葛野さんって既婚者なのに…付き合うとかおかしいし、私をご飯に誘ってくる神経も意味わかんない』『リオリオがまともでよかったよ』『なにそれ。まともってどういう意味? 既婚者と付き合うとかありえないし、普通でしょっ』『…だな。でも、その”まとも”じゃないヤツが葛野だよ。困ったらすぐ言えよ?』『ありがとー。あっ、レアアイテム発見!! バッキンこれ持ってる?』 ゲームしながらなので、愚痴言い合い+バトルやお宝探しでちょくちょくゲーム会話も混ざってくるのがいつもの私たちスタイル。『使わないから、リオリオ取っていいよ』『ほんと? やった~』 遠慮なくアイテムゲットぉ! 今のお宝は強いモンスターの育成に欠かせないアイテムで、なかなか拾えないものだから嬉しい!『バッキンありがとう~』『よし、本格バトル行くか!』『うん、行こう!』 30分ほどのバトルをこなし、つよつよモンスターを倒して自キャラをレベルアップ。最後に雑談してバッキンとの通話を終了させた。  はー。楽しかった! もう嫌なことはさっさと忘れて、来週からの異動先でのお仕事、頑張ろう。   ※ あれから暫く日時が経った。お局の動向には胃を痛めながらも、なんとか仕事をこなして時々バッキンと一緒にキンモンやって、ストレス解消をしながら毎日をこなした。 そんな時だった。宇治川先輩に飲みに誘われたのは。 会社から近くにある、路地裏の大衆居酒屋『大吉』に連れて行ってもらった。店内は昭和な雰囲気をぷんぷんさせた、隣同士の机の距離が結構狭い場所だった。カウンターには誰もいなかったので、私たちはそ
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復讐クエスト3 / LV1 勇者リオナ 07

  「あ、あのっ……先輩、離婚されるのですか!?」 しまった。つい、口癖の『先輩呼び』してしまった。……ま、いいか。  それより離婚の話!「そうなんだ。だからまず、そのとっかかりとして君にお願いがあるんだ」「お願い?」「この音声を利用して、葛野を糾弾して欲しい。とりあえずこれを聴いてくれる?」 彼はスマートフォンを操作し、音声を流した。音声は葛野さんと宇治川先輩が私のためにやり取りをしてくれたものだった。 『……というわけで、加藤さんが武田さんを困らせているので、なんとかしてください』『俺に言われてもなぁ』『付き合っていますよね? 加藤さんと』『付き合う? 冗談はよしてくれ』『加藤さんがあなたと仲良くしている女性社員ばかりに嫌がらせをしているという噂でもちきりですよ。武田さんが泣いて困っていましたから、ここはひとつ、葛野さんの話術でなんとか加藤さんの説得をお願いします』『コーハイ思いでなによりですねぇ。宇治川君は。加藤さんに口利きしてもいいけどさ、それ、俺になんのメリットがあるの?』『メリット……ですか。あ、まあ…女性社員の好感度は上がると思いますが…それではいけませんか?』『宇治川君は女性社員に…特に武田さんにモテたいから首をつっこんでくるんだ?』 この言葉を聞いて驚いた。どうしてこんな話になるの!?『いえ、決してそういうわけでは……』『昔注意されたしねぇ?』『武田さんが困っていたように見えたので…あの、出過ぎた真似をしてしまい、申しわけございませんでした。不愉快に思われていたなら謝ります』 こんな嫌なこと言われていたんだ。宇治川先輩にほんとに申しわけないことしちゃったな……。『ちんけな謝罪だねぇ。そんなんで心の傷が癒えるとでも思ってる? もっとさぁ、ほら、わかりやすーい誠意を示して欲しいなぁ』 なんてひどい……!! 『あの時は出過ぎた真似をして、ほんとうに申しわけございませんでした』 バシャバシャとスマートフォンでシャッターを切る音が聞こえた。  この前、葛野さんに見せられた宇治川先輩の土下座シーンだわっ……!  なんて屈辱!! 宇治川先輩にこんなことさせて…ぜったい許せない!!『ぎゃっははは! そこまでする~?』 下品な笑い声が収録されていた。ますます許せない!!!! なんて男なの!
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復讐クエスト3 / LV1 勇者リオナ 08

『約束です。武田さんが困っているので、加藤さんに口添えをお願いします』『いいよいいよ~。今日のところはお前の土下座が見られたし、言っておいてやるよぉ~』『ありがとうございます』『ここまでされたんだから、約束は守ってやるよ。それにしても武田さんのことそんなにお気に入りなんてな…ははっ』『いえ。彼女はただの後輩です。困っているので助けたい、それだけです。それに僕は妻と娘を愛していますから』『ふ~~ん。あっそぅ。奥さんによろしく言っておいてくれよなぁ~』 音声はここまでだった。  奥さんによろしくって…もしかしてこいつ(こいつって言っちゃったw)…宇治川先輩の奥様と……?「不愉快な音声、聴かせてごめんね」「いえっ! それよりも私の方こそ…こんな…ごめんなさい。宇治川先輩に嫌な思いをさせてしまって、ほんとうに申しわけございません!」「そんなの武田さんのせいじゃないよ。だから気にしないで。もし、悪いと思うなら僕に協力して欲しいんだ」「なんでもやります!」 今こそ恩を返す時!!「実は近々、僕の取引先の男性をちょっとした罠にはめようと思ってて。話すと長くなるからかいつまんで話すと、僕が取引先の五代さんの奥さんと知り合いになって、今、彼女と一緒に互いの伴侶へ復讐をするために頑張っているんだ。僕の妻は葛野と不倫してる。それを教えてくれたのが奥さん――紀美さんって言うんだけど、彼女は夫からひどいモラハラに遭っていて、助けたいんだ」「やっぱりそうなんですね。奥様によろしくとか、ありえない男ですね!」「だろ? だからふたりまとめてやっつけようと思ってさ。そこで、武田さんの協力が必要不可欠なんだ」「私はどうすればいいですか? なんでもお手伝いさせてください!」「えっと…武田さんにこの音声を託すから、然るべき時が来た時、この音声を使って葛野を退治してくれないか?」「わかりました! ご指示いただければそのとおりやらせていただきます!」 ――リオナは葛野(モンスター)討伐のための音声を手に入れた! 「こんな画像を葛野からもらったんですが、使えますか?」  この前勝手に私のメッセージアプリに葛野が宇治川先輩の土下座写真を送ってきたのだ。なにかに使えるかもしれないと思って、残しておいてよかった!「武田さん、いいもの持ってるね! ありがとう。こ
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復讐クエスト3 / LV2 勇者リオナ 01

 宇治川先輩がコトを起こす日となった。私は間違えないようになんどもシミュレーションをし、正義の味方のように颯爽と宇治川先輩を援護射撃できるようにするんだ! 今日はかねてから進めていた食品プロジェクトの発表の模様。関係者各位を集め、葛野は一課のお偉いさんとして同席、加藤さんもマーケティング課の代表としてこの場に着席している。もちろん、ファイブスター(うちの社)の社長もいるし! 私はこっそり葛野を見た。今に見てなさい!  あんたはこの私、武田理央奈がやっつけてやるんだから!!  宇治川先輩をひどい目に遭わせた罪は重い。 「それでは皆様。お時間となりましたので会議を始めさせていただきます」  五代建真というクズモンスターが爽やかに喋りだした。この男が例の悪いヤツね。女性の敵!(シャーっと威嚇するような感じの気分)  五代建真のアシスタントを務めている先輩がノートパソコンを操作をする。「まずはこちらをご覧ください」 その言葉を合図に先輩がプロジェクターにスイッチを入れる。ぱっと画面が映り、『五代建真の不倫クエスト』の文字が大画面に映し出された。  えっ、なに……不倫クエスト?  どういうこと?  プレゼン資料じゃなくて、これからとんでもない動画が流れる予感がした。 どんな動画なんだろうと思っていたら、ラップ調で曲が流れ出した。複数女性の写真が映っている。短いイントロ後、ボーカロイド(ボーカル+アンドロイドの略)のラップの歌が流れだす。 『俺は五代建真~♪』 『不倫させりゃ天下一品~♪』 『女はとっかえひっかえ♪』 『クエストみたいに 攻略するぜ~♪』 『妻はポイ捨て 古い愛人は即ポイ♪(ポイ)』 『そんで 新たに 女をget♪(get)』 『愛する女に 声明発表しちゃうぜ~ yeah♪』   すぐに画面が切り替わり、裸の爽やか男がアップで映った。  大事なところは一応モザイクがかかっている。そして土下座からの――
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復讐クエスト3 / LV2 勇者リオナ 02

  「宇治川」 しんとなってしまった会議室に低い社長の声が響いた。「君が『売れる食品社(※五代建真が勤める食品会社名)』の素晴らしいプレゼンを見せるから同席したというのに、いったいどういうことかね? さっきの動画はなんだ、あれは」「僕にもわかりません! 彼は徹夜で企画を仕上げるので、ぜひファイブスターのみなさんに見て欲しいとお願いされました。とてもよくできた企画なので、社長にも見ていただきたくお声がけしたというのに…こんなことになってしまい、申しわけございません」 犯人を知っている私は笑いそうになった。  どこまでも悪い男ですね、宇治川先輩……!「いや…宇治川のせいではないことはわかっているが…」 はっ。今、みんながいて、宇治川先輩のこの流れを断ち切る流れ…ここじゃないの!  そうだわ。今こそモンスターを倒す時!  私の中でソシャゲのボス討伐のカッコいい曲が脳内で流れた。 ――戦闘開始!! 「あの! 社長に聞いていただきたい音声がありますっ!!」 挙手して大きな声で訴えた。これです、と 社長の方に向けたスマートフォンを高らかに掲げた。 ――リオナは葛野(モンスター)討伐のための音声を使った! 「私のために、宇治川さんがひどい目に遭った画像も一緒に見てください!」 小さな画面に映っていたのは、宇治川先輩が葛野に向かって土下座するシーン。そして音声が流れる。 『葛野さん、少しよろしいでしょうか――……というわけで、加藤さんが武田さんを困らせているので、なんとかしてください』『俺に言われてもなぁ』『付き合っていますよね? 加藤さんと』『付き合う? 冗談はよしてくれ』「ちょ、ちょっと待ってくれっ!! なんで君がそんな音声をっ、で、でででらためなっ」 葛野さんが慌てて止めようと武田さんに向かっていくが、すっと間に割って入った男性に止められていた。あっ♡
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