「おはようございます」柔らかな朝の光が差し込む食堂ホールに、心春と和真の声が重なった。先ほど温泉に入ったばかりの和真と心春は、まだ浴衣姿だった。二人とも朝風呂上がりで頬がほんのり赤く染まり、昨夜までの張り詰めた空気は感じられない。特に心春の表情は明るく、昨日まで泣き腫らしていた姿が嘘のようだった。その様子を見た綾乃は、ほっと胸をなで下ろす。綾乃は自分の椅子を少し横へずらし、自分の横へ心春と和真を座らせた。「ほら、ここに座りなさい」そう優しく促され、心春と和真は並んで腰を下ろす。二人の距離は自然と近く、寄り添うような雰囲気だった。綾乃はそんな二人の顔を見比べると、何の遠慮もなく尋ねた。「二人とも、仲直りはしたの?」あまりにも率直な質問だった。それを聞き、熱いスープを飲んでいた叶翔が思わず吹き出した。「母さん……」口元を押さえながら咳き込み、慌ててテーブルへ顔を向ける。――そんなことを朝一番で聞くか?そう思いながらも言葉にならない。吹き出して飛び散ったスープを、櫻羅が慌てる様子もなくナプキンで丁寧に拭いてくれている。「大丈夫?」「ご、ごめん……」叶翔は櫻羅に任せきりで、自分はまだ咳き込んでいた。その様子に瑛士は苦笑し、玲司も小さく肩を揺らしている。叶翔の失態に心春は一瞬だけ顔を歪めたものの、すぐに綾乃の方へ向き直り、嬉しそうに話し始めた。「昨夜、ちょっと酔って寝ちゃったんだけど、目が覚めたら櫻羅ちゃんじゃなくて和真がいたの」その言葉には、昨夜の出来事を思い出した嬉しさが滲んでいる。話しながら、心春は自然と和真の手へ自分の手を重ねた。和真もその手を優しく包み込み、何も言わず微笑む。その様子は、昨夜二人がしっかりと向き合い、互いの気持ちを確かめ合えたことを物語っていた。横目でその姿を見た叶翔は、渋い顔をして心春を睨んだ。妹が幸せそうなのは嬉しい。だが、兄としては複雑だった。しかし心春は、そんな叶翔のことなど見向きもしなかった。和真と繋いだ手を離そうともせず、穏やかな笑顔を浮かべている。その時だった。瑛士がタイミングよく立ち上がり、バイキングコーナーからトーストとコーヒーを二つずつ持って戻ってきた。「心春、和真さん、これ」そう言いながら、二人の前へ丁寧に置いてくれる。「ありがとう」心春が笑顔で礼を
Last Updated : 2026-08-01 Read more