柚葉は手を出してそれを受け取ると、ゴミ箱の中に凛の衣類が入っているのを見つけた。「これ何?」「ゴミだよ」「捨てちゃうなんてもったいない。家の入り口に敷いたり、バスルームのドアに置いて足ふきマットにしたりして使えるんじゃない?汚れたら捨てればいいだけだし」柚葉の目が怪しく光る。実のところ、本当に服がもったいないと思っているのではなく、遠回しに凛を貶しているのだった。智也はゴミ箱を見下ろして言った。「もういい。面倒なだけだ」それ以上柚葉は何も言わず、ワイシャツを手に取ると智也に支えてもらって部屋へ戻り、ドアを閉めた。谷口家の中で智也を誘惑するようなことは控えた方がいいだろう。でなければ、自分は軽薄な女だと思われ、この家の人間から甘く見られる。……凛はベッドで、自分の服が捨てられたという智也からのメッセージを眺めていた。もともと谷口家に戻るつもりはなかったから、ちょうどいい。そして、胡桃から送られてきた写真をもう一度見る。スマホの画面の明かりが、凛の感情のない表情を照らし出した。ただ一緒に座ってキスをしたことが何だというのか?自分と智也のベッドには、生々しい愛の跡が残っていたし、ベッドの下にはレースの下着だって落ちていたんだから。凛は智也とのトーク画面をもう一度開いて、少しずつ遡ってみた。ここ二週間は連絡が驚くほど少ない。それ以前は、今日の食事はなんなのか、どんな服を用意したのかということばかりが並んでいるのに。それに対して、智也はいつも「ありがとう」の一言だけだった。ログの中でその一言が一番多い。しかし、今見返すとそれが一番悲しく思えた。画面の眩しさに目が痛くなり、凛はスマホを切って眠りにつく。それでも昨夜と同じように、何度も寝返りを打つも眠れず、翌朝は決まった時間に目が覚めたのだった。キッチンに向かうと、朝食を作りに来ていた家政婦と鉢合わせた。杏は静かな環境を好むので、家政婦は常駐ではなく、時間制でこの家に来ている。「谷口さん、おはようございます。何か召し上がりたいものは、ございますか?お作りしますよ」「ありがとうございます、でも大丈夫です。自分で作りますから」そう言うと、凛はパンを作ることにした。昔、施設にいた頃、パンは最高のご馳走だった。なぜなら、高級な料理など口にする
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