海斗はそのまま凛の寝室へ向かった。できることならリビングにもダイニングにも、開放的な書斎にも置いておきたいところだが、さすがに凛が許さないだろう。この家には康平もいるのだから。黒い袋の一件があってから、食事中の凛はずっと俯いたままだった。海斗を見ようともしなければ、ろくに口も開かない。ダイニングは妙に静かだった。対する海斗はずっと口元にうっすら笑みを浮かべ、しかも、ときどき凛の顔を眺めていた。意識は別のところへ向いていたため、料理の味など、二人ともほとんど覚えていない。食べ終えるなり、凛は海斗に告げた。「じゃあ、また明日。帰り、気をつけてね」海斗の口元から笑みは消えなかったが、泊まりたいとも言わず、素直に立ち上がった。ただし、その手には例の黒い袋を下げながら……凛は、生まれて初めて黒という色がこれほど目立つと思った。つい何度も見てしまう。海斗も袋へ目を落とした。「ああ、こっちは使えない。サイズが小さいから」「もう、早く帰って!」凛は耐えきれず、海斗の背中を押した。海斗は急ぐ様子もなく、黒い袋をぶらぶら揺らしながら玄関へ向かう。そして外へ出た瞬間――袋だけ凛に奪われた。「凛?」振り返ろうとしたときには、もう扉が閉まっていた。海斗は怒るどころか、むしろ満足していた。凛がこうして自分に遠慮なく感情をぶつけるようになったことが、かなり嬉しい。凛はそのあとベランダへ出た。ほどなくして海斗の車のライトが点く。五度、短く点滅した――また明日。「……また明日」凛も小さく呟き、車が見えなくなるまで見送った。寝室へ戻った凛は、まずシャワーを浴びた。頭から温かいお湯を浴びると、目を開けているのも億劫になる。いつもの場所に手を伸ばし、手探りでボディソープを探していると――指先に小さな箱が触れた。何だろうと目を開けると、それはあの青い箱。凛は即座に元の場所へ戻した。どうにかシャワーを終え、今度は歯を磨こうとすると、歯磨き粉がほとんど残っていなかった。新しいものは確か鏡脇の収納棚に入れてあったはずだと思い、扉を開ける。すると、そこにはピンク色の箱がひっそり置かれていた。バタン。凛は無言で棚を閉めた。今日は古い歯磨き粉を最後まで絞ろう。顔を洗ったはずなのに、なぜかどんどん熱くなっていく。さすがに我慢できなくな
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