All Chapters of 名探偵シュウと秘密の校舎(中学生編): Chapter 11 - Chapter 20

31 Chapters

第11話「再会の呼びかけ」

朝の陽光が教室の窓を優しく叩き、埃の粒子がきらきらと舞っていた。シュウは机に肘をつき、紙袋の中の人形をじっと見つめていた。赤く塗られた目が、まるでこちらを睨んでいるように感じる。スピーカーは電池が抜かれ、ただのプラスチックの塊に戻っていたが、それでも不気味さは消えていない。カナエが隣の席に座り、声を潜めて言った。カナエ「これ……本当に高槻さんが置いたものじゃないよね?」シュウはゆっくりと首を振った。シュウ「病院の記録を確認した。昨夜から今朝にかけて、高槻零は意識不明のまま。ICUで監視下にある。外部との接触は不可能だ」タクミが後ろから身を乗り出して、メモをもう一度読み上げた。タクミ「『星見キッズ、全員集合の時間だ』……ふざけんなよ。ケンタとリナは、もう完全に部活モードに入ってるのに」カナエの指が、スマホの画面を何度もスクロールする。カナエ「私、昨日の夜にケンタにLINEしたの。『ちょっと話したい』って。でも既読がつかない。リナはストーリー上げてるけど、返事はゼロ」シュウは深く息を吐いた。胸の奥で、何かが重く沈む感覚があった。シュウ「無理に集めなくてもいい。でも……このメッセージは、無視できない」三人は黙り込んだ。教室の喧騒が、遠くの波のように聞こえる。放課後。校舎の裏、かつて星見キッズがよく集まっていた古いベンチに、三人は腰を下ろした。桜の木はもう葉が茂り、影が濃く落ちている。タクミが缶コーヒーを開け、一口飲んでから言った。タクミ「正直、俺も怖えよ。装置壊して、高槻倒して、それで終わりだと思ってたのに……また人形かよ」カナエは膝を抱え、声を小さくした。カナエ「私、テニス部の合宿が来週から始まるの。監督に『体調管理しっかりしろ』って言われてて……でも、こんなこと起きてるのに、練習なんか集中できない」シュウは人形をベンチの上に置いた。赤い目が、三人を交互に見つめているように錯覚する。
last updateLast Updated : 2026-03-16
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第12話「五人の影と一つの光」

旧校舎の屋上は、夜風が強く吹き抜けていた。月は雲に隠れ、街灯の淡い光だけが五人の輪郭をぼんやりと浮かび上がらせている。シュウは中央に立ち、人形を足元に置いた。赤い目が、月明かりのない闇の中で不気味に光る。シュウ「まず、状況を整理しよう」ケンタがサッカーボールを足で軽く転がしながら、口を開いた。ケンタ「俺、昨日まで『もう事件とか関わりたくねえ』って思ってた。でも……人形の写真見た瞬間、胸がざわついたんだ。夢に出てくるくらい、怖かった」リナはスケッチブックを胸に抱きしめ、声を震わせた。リナ「私も……あの赤い目、毎日見てる気がする。絵を描いても、描いても、消しても、朝になるとまた同じ顔が浮かんでくるの」カナエは膝を抱えて座り込み、髪を指でいじりながら言った。カナエ「テニス部の合宿、明日からなのに……監督に『集中しろ』って怒られた。でも、こんなの放っておけないよ」タクミはフェンスに背を預け、腕を組んだ。タクミ「結局、俺たち五人とも……逃げられなかったってことだな」シュウはゆっくりと頷いた。シュウ「高槻零は倒れた。でも、彼が始めた『ゲーム』は、まだ終わっていない。装置は壊したけど、記憶の断片がどこかに残ってる。もしくは……新しい管理人が、引き継いでいる」ケンタがボールを強く踏みつけた。ゴムが軋む音が響く。ケンタ「新しい管理人って……誰だよ。俺たちの中にいるってことか?」リナの目が大きく見開かれた。リナ「まさか……そんな」シュウは首を振った。シュウ「違う。外部の誰かだ。でも、俺たちをよく知っている。星見キッズの名前を知ってるし、五人が集まることを予測してる」カナエが立ち上がった。声が少し大きくなった。カナエ「じゃあ、どうするの? また人形を探す? メモを探す? それとも……待つだけ?」シュウは人形を拾い上げ、背中の蓋を開けた。今回はスピーカーだけでな
last updateLast Updated : 2026-03-17
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第13話「薄れゆく輪郭」

朝の教室は、いつもより少し静かだった。シュウは窓際の席で、昨夜の倉庫での出来事をノートに書き留めていた。ページの端に、リナの幼い姿のスケッチを小さく描き加える。赤い目の人形は、すでに引き出しの奥にしまってある。タクミが隣に座り、声を低くした。タクミ「リナ、大丈夫か? 昨夜から連絡来てねえぞ」シュウはペンを止めた。シュウ「朝、LINEが来た。『今日は美術部のコンクール準備で遅くなる』って。……普通の文面だった」タクミはため息をついた。タクミ「普通すぎるのが、逆に怖えよ」ホームルームのチャイムが鳴り、担任が入ってきた。いつもの挨拶、連絡事項。だが、シュウの耳には、すべて遠く聞こえた。昼休み。校舎の裏のベンチに、五人が再び集まった。ケンタはサッカーボールを膝に置き、地面をじっと見つめている。カナエはテニスラケットを膝に抱え、リナはスケッチブックを閉じたままだった。シュウが口を開いた。シュウ「昨夜のことは……ありがとう。リナの記憶が、少し戻った」リナは小さく頷いた。リナ「うん……ありがとう。でも、私……」言葉が途切れる。リナはスケッチブックを強く握った。リナ「今日、美術部の顧問に呼ばれてさ。『お前、最近集中できてないだろ。コンクール近いんだぞ』って。……確かに、そうだと思う」カナエが膝のラケットを撫でながら、続けた。カナエ「私も……合宿のバス、明日朝発なんだ。監督に『体調管理は自己責任』って言われてて。もう、抜けられない」ケンタはボールを地面に落とし、軽く蹴った。ボールが転がって、フェンスに当たる。ケンタ「俺も……レギュラー争いが本格化してさ。監督が『お前、最近浮ついてるぞ』って。練習サボったら、即ベンチだ」タクミが苛立たしげに髪をかき上げた。タクミ「みんな……また、離れるのかよ」沈黙が落ちた。
last updateLast Updated : 2026-03-17
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第14話「二人だけの足跡」

朝の教室は、いつもより空気が重く感じられた。シュウは窓際の席で、事件ノートを広げていた。ページの最後に、昨日の五人の集合写真を挟み込んでいる。裏側に、赤いペンで書かれた文字が、まだ鮮やかだ。『五番目の記憶は、君たち自身の中にある』タクミが隣の席に座り、声を低く抑えた。タクミ「今日も、ケンタたち来ねえな」シュウはノートを閉じた。シュウ「来ないよ。もう、決めたんだ」タクミは窓の外を見た。校庭では、サッカー部の朝練が始まっている。ケンタの姿が、遠くに小さく見えた。ボールを蹴る動作はいつも通りだが、どこかぎこちない。タクミ「カナエは合宿でいないし、リナは美術室に籠もってるって聞いた。……完全に、戻っちゃったな」シュウはメガネをクイッと上げた。いつもの癖だが、今日は指が少し震えている。シュウ「それでいいんだ。俺たちが無理に引き止める権利はない」タクミは机に肘をつき、ため息を吐いた。タクミ「でもよ……昨夜の倉庫で、リナの記憶が戻った瞬間。あの涙。あれ見て、俺、思ったんだ。星見キッズは、まだ必要だって」シュウは静かに頷いた。シュウ「必要だ。でも、今は……違う形の必要さ」昼休み。二人は校舎の屋上へ上がった。新校舎の屋上は、鍵がかかっている。旧校舎の屋上へ向かう階段を上る。屋上は風が強く、制服の裾がはためく。シュウはフェンスに寄りかかり、空を見上げた。シュウ「高槻の次の手は、まだ来ない」タクミは床に座り込み、膝を抱えた。タクミ「来ねえ方がいいだろ。もう、十分だ」シュウはポケットから、昨夜のリナから受け取った人形を取り出した。赤い目は、もう塗りつぶされていない。ただの黒いガラス玉に戻っている。シュウ「これ……リナの記憶の鍵だった。でも、今はただの人形だ」タクミが人形を手に取り、じっと見た。タクミ「リ
last updateLast Updated : 2026-03-18
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第15話「消えた足音の余韻」

朝のホームルームが終わった直後、1年2組の教室に小さなざわめきが広がった。シュウは窓際の席で、事件ノートを閉じようとした指を止めた。隣のタクミが、スマホの画面を睨んでいる。タクミ「…おい、シュウ。これ見てみろ」画面には、学校の非公式掲示板のスレッドが開かれていた。タイトルはシンプルで、ぞっとするほど直接的。『新校舎3階、夜中に足音が聞こえるんだけど』書き込みは昨夜の深夜から始まっていた。1: 名無しさん 3日前 23:47 歩いてる音がする。ドスドスって。でも誰もいない。廊下の端から端まで、ずっと。2: 名無しさん 3日前 23:51 俺も聞いた。3階の端の空き教室の前で止まって、また戻っていく。まるで誰かが巡回してるみたい5: 名無しさん 今日 00:12 チャイム鳴った後、泣き声が混じってた。女の子の声。助けてって言ってる気がしたシュウの指が、画面をスクロールするたびに少しずつ冷たくなった。タクミ「高槻は病院だろ。装置は壊したはずなのに……」シュウは静かにスマホをタクミに返した。シュウ「装置は壊した。でも、記憶の断片は消えていない。誰かが、それを拾い上げてるのかもしれない」タクミの眉が寄った。タクミ「誰かって……高槻の仲間か?」シュウは窓の外を見た。校庭ではサッカー部の朝練が続いている。ケンタの背番号が、遠くでボールを追いかけているのが見えた。シュウ「わからない。でも、足音が『巡回』してるという書き込みが気になる。まるで……管理人が、校舎を監視してるみたいだ」放課後。二人は新校舎の3階へ向かった。夕陽がガラス壁を赤く染め、廊下に長い影を落としている。空き教室の前で立ち止まった。ドアは半開き。鍵はかかっていない。シュウはそっとドアを押し開けた。中は埃っぽく、使われていない机が乱雑に並んでいる。黒板には、誰かがチョークで書
last updateLast Updated : 2026-03-18
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第16話「誰もいない階段の囁き」

深夜の新校舎は、息を潜めているように静かだった。シュウは懐中電灯を最小限に絞り、非常階段のドアの前に立っていた。タクミが隣で息を殺し、スマホのライトを床に向けている。二人は鍵をこじ開けるための細い工具を手にしていたが、ドアは意外に簡単に開いた。錆びた蝶番が、かすかな悲鳴のような音を立てる。シュウ「……開いてる」タクミ「誰かが、俺たちを待ってるってことか」階段は下へ下へと続いていた。埃の層が厚く、一段ごとに小さな足跡が点々と残っている。子供の靴底の形。だが、足跡は不規則で、時折途切れ、時折重なっている。まるで同じ場所を何度も往復したかのように。二人は階段を降り始めた。段数は二十段を超えたあたりで、壁のコンクリートが古びたものに変わった。旧軍施設の痕跡。父の手帳に描かれていた地下通路の入り口だ。タクミが小声で言った。タクミ「ここから先、父さんの手帳に地図なかったっけ?」シュウはポケットから手帳を取り出し、ページをめくった。赤い線で描かれた通路図。だが、最後の部分は空白のまま。途中で途切れている。シュウ「ここまでしか書いてない。……先は、知らない」階段の底に着いた。そこは狭い踊り場。壁に古い鉄の扉が一つ。錆びついて開きそうにないが、隙間から冷たい空気が漏れている。シュウが扉に耳を当てた。……かすかな音。ドス……ドス……。足音。ゆっくりとした、規則正しい歩み。だが、響き方がおかしい。反響が二重に聞こえる。一つは遠く、もう一つはすぐ近く。タクミも耳を寄せた。顔が青ざめる。タクミ「二つ……聞こえる」シュウは懐中電灯を扉の隙間に差し込んだ。向こう側は暗く、何も見えない。だが、光が届いた瞬間、足音がぴたりと止まった。静寂が、耳を刺す。シュウ「……気づかれた」タクミが扉の取っ手に手をかけ、力を込めた。軋む音が響く。扉が数センチ開いた。中は広い空間だった。旧
last updateLast Updated : 2026-03-19
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第17話「星の見えない地下の約束」

暗闇が二人の周りを完全に飲み込んだ瞬間、ランプの消えた余韻だけが残った。シュウは目を閉じた。視界がなくても、感覚が鋭くなる。冷たいコンクリートの床、埃の匂い、遠くから響く微かな水滴の音。そして――。かすかな息遣い。誰かが、ここにいる。タクミが小声で言った。タクミ「シュウ……まだいる」シュウは頷き、ゆっくりと懐中電灯のスイッチをもう一度押した。光は出ない。電池は生きているはずなのに。代わりに、部屋の隅から、弱い青白い光が漏れ始めた。天井のひび割れから、まるで星の欠片が落ちてきたように。シュウは光の元へ近づいた。壁に埋め込まれた小さなガラス板。厚さ数ミリほどの、透明なパネル。パネルの奥に、星空が映っている。だが、それは本物の空ではない。投影された映像だ。ゆっくりと星が回り、流れ星が一本、横切る。パネルの下に、細い金属のプレートが貼られている。刻まれた文字。『ここは、星見の空の鏡。父が最後に残したもの』シュウの指が、プレートに触れた。冷たい。だが、触れた瞬間、映像が揺れた。星空が歪み、映像が切り替わる。雨の夜。七年前の父の部屋。幼いシュウが、父の手帳を抱えて泣いている。父の声が、映像の外から聞こえてくる。父の声「シュウ、泣くな。約束だ」幼いシュウが顔を上げ、父の幻影に向かって叫ぶ。幼いシュウ「お父さん、行かないで!」父の声は優しく、だがどこか遠い。父の声「俺は行かない。ずっと、ここにいる。星を見ろ。星見の空は、俺を見てる。お前も、見てる」映像がフェードアウトし、再び本物の星空に戻る。だが、今度は一つ、星が違う色をしている。赤く、ゆっくりと点滅している。シュウ「……あれは」タクミが近づき、息を飲んだ。タクミ「赤い星……?」シュウはパネルに額を押しつけた。ガラス越しに、赤い星が近づいてくる
last updateLast Updated : 2026-03-19
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第18話「鏡の向こうの赤い瞳」

黒い扉の向こうは、予想以上に広い空間だった。足を踏み入れた瞬間、冷たい空気が肌を刺し、シュウの息が白く染まった。地下なのに、気温が急に下がっている。壁は鏡のように磨かれた金属で、ところどころにひびが入り、歪んだ反射を生んでいる。無数の鏡が、無数のシュウとタクミを映し出していた。タクミが声を潜めた。タクミ「…鏡ばっかだな。ここ、何の部屋だ?」シュウはゆっくりと前へ進んだ。懐中電灯の光が、鏡の表面を滑るたび、光の筋が無数に分裂し、部屋全体を不気味に照らす。シュウ「記憶の鏡……父さんが言ってたのは、これのことか」中央に、円形の台座。台座の上に、古いタイプの鏡が立てかけられている。高さはシュウの背丈ほど。枠は黒く塗られ、縁に細かい星の模様が刻まれている。鏡の表面は、普通の鏡とは違う。映っているのは、二人の姿ではない。鏡の中には、星空が広がっていた。現実のものより鮮やかで、星々がゆっくりと回転している。だが、その星空の中心に、一つの赤い星が浮かんでいる。脈打つように、点滅を繰り返す。シュウは鏡に近づき、手を伸ばした。指先がガラスに触れる。冷たい。だが、触れた瞬間、鏡の表面が波打った。波紋が広がり、星空が揺れる。そして、赤い星が、ゆっくりと近づいてきた。鏡の奥から、声が響いた。声「……よく来たね、シュウ」声は父のものだった。だが、少し違う。エコーが重なり、どこか機械的な響きがある。タクミが後ずさった。タクミ「おい……これ、録音じゃねえよな」シュウは鏡から目を離さなかった。シュウ「お父さん……?」鏡の中の星空が、さらに歪んだ。赤い星が膨張し、中心に父の顔が浮かび上がる。七年前の父。白衣を着た、穏やかな表情。父の幻影「シュウ……泣いてないか?」シュウの喉が詰まった。シュウ「泣いてない……約束、守ったよ」父の幻影は、静かに微笑んだ。
last updateLast Updated : 2026-03-20
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第19話「砕けた鏡の残響」

鏡が完全に砕け散った瞬間、部屋は深い沈黙に包まれた。 無数のガラスの破片が床に散らばり、それぞれが弱い青白い光を放っている。破片の一つ一つに、記憶の断片が映っていた。幼いシュウが父に抱きついている姿、タクミと初めて出会った日の笑顔、カナエがテニスラケットを初めて握った瞬間、ケンタがボールを蹴り上げた瞬間、リナが泣きながらスケッチブックを抱えていた姿――すべてが、バラバラに散らばりながらも、微かに息づいている。 シュウは膝をつき、震える手で一番大きな破片を拾い上げた。 破片の表面に、父の顔が映っている。静かに微笑み、こちらを見つめている。 父の幻影「……シュウ」 声は、もう録音ではない。ガラス越しに、直接響いてくるような、生々しい響きがあった。 シュウ「お父さん……本当に、ここにいたんだ」 父の幻影は、ゆっくりと頷いた。 父の幻影「俺はもう、体を持たない。ただの記憶の残滓だ。でも、お前がここに来てくれたおかげで、少しだけ……繋がりを保てている」 タクミが後ろから近づき、シュウの肩に手を置いた。声が掠れている。 タクミ「高槻の声……さっき聞こえたよな。あいつ、まだ生きてるのか?」 父の幻影の表情が、わずかに曇った。 父の幻影「高槻は、鏡の中に自分の意識を分散させた。俺の記憶をコピーし、利用して……この地下全体を自分の『脳』にしようとしていた。お前たちが装置を壊した時、ほとんどの部分は失われたが、一番深い部分――この鏡のコアだけは、残っていた」 シュウは破片を強く握った。ガラスの端が手のひらに食い込み、薄い血がにじむ。 シュウ「じゃあ……この破片を全部集めれば、高槻の意識も消せる?」 父の幻影は静かに首を振った。 父の幻影「集めれば、俺も消える。お前が一番大切にしていた記憶
last updateLast Updated : 2026-03-20
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第20話「星見中学の最初の血」

朝の校門は、いつもと変わらない喧騒に満ちていた。 生徒たちが笑い声を上げて校庭を横切り、部活の朝練に向かう者、遅刻ギリギリで走る者。シュウはいつものように窓際の席で事件ノートを開き、昨夜の地下の記憶を淡々と書き留めていた。ポケットの中の赤い星の破片が、時折温かく脈打つように感じる。 タクミが教室に入ってきて、息を切らしながら席に崩れ落ちた。 タクミ「シュウ……やばいぞ」 シュウはペンを止めた。タクミの顔が青ざめている。 シュウ「どうした」 タクミはスマホを差し出した。画面には、学校の非公式掲示板ではなく、公式の緊急連絡が表示されている。担任からの一斉メール。 『本日、朝の登校時に生徒の死亡が確認されました。警察が現場検証中です。登校した生徒は教室で待機し、指示に従ってください。詳細は後ほど連絡します』 シュウの指が、スマホの画面を強く押した。 シュウ「……誰だ」 タクミは声を震わせた。 タクミ「1年3組の……佐藤先生のクラスの男子。名前は……高橋悠斗。バスケ部の2年生と一緒に朝練に来てたらしいけど……体育館の倉庫で、首を絞められて死んでたって」 教室の空気が、一瞬で凍りついた。 周りの生徒たちが、ざわつき始める。誰かが泣き出し、誰かがスマホを握りしめて固まる。 シュウは立ち上がった。ノートを閉じ、ポケットにしまった。 シュウ「行く」 タクミ「待てよ! 警察が来てるんだぞ。俺たちが行っても……」 シュウの目が、鋭く光った。 シュウ「高橋悠斗……バスケ部じゃない。昨日、俺に話しかけてきた子だ。『シュウくん、なんか変な人形見たことある?』って」 タクミの顔色が変わった。
last updateLast Updated : 2026-03-21
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